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    2015.3.8 浅草・花やしき「青春・無限大・パワー!」 16時 総評 

    昼の部の本大会で、ラビット美兎&つくしの春兎がKAZUKI&ライディーン鋼組に不覚を取った。「タッグリーグ・ザ・ベスト2015」初戦ではラビットの欠場により不戦敗に。この取りこぼしを帳消しにするための試合だったが、1日2公式戦の初っ端でまさかの敗戦。この時点で、春兎のⅤ2は幻となってしまったのだ。
     その試合後、ラビットがパートナーのつくしに向けてマイクを取った。それは、春兎をいったん解消しようという驚きのものだった。
    「春兎は優勝戦線から外れてしまいました。ごめんなさい。この後の『青春・無限大・パワー!』の試合で、春兎にいったん区切りをつけたいと思います。私たちはこれまでチャンスをつかんできましたけど、いつもあと一歩のところで期待に応えることができなかった。お互いがもっともっと成長して、この2人が組んだらすごいよねって言われるくらいになったら、またふたりでタッグを組みましょう」
     それを聞いたつくしは、残念な思いを胸に秘めてラビットの決意を受け止めた。「なに暗くなってるの? 私たちがもっともっと強くなって組むのは明日かもしれないし、ずっと先かもしれない。必ずまた組めるように(この後の試合を)頑張ろうよ。最後まで春兎らしく、いっしょに闘おう!」
     そして迎えた「第四回 青春・無限大・パワー!」のメインイベント。この試合はタッグリーグ公式戦で、相手は瑛凛&加藤悠組だった。この試合で春兎は粘られながらも相手チームの分断に成功。最後はラビットのラビットスープレックスが瑛凛に炸裂した。有終の美、とは言えないけれど、この勝利はまた組む日に向けての予告編になるはずだ。
    「昨年にタッグリーグで優勝して、今年も優勝を目指して頑張ったけど、私が初戦で体調不良により欠場してしまい、結局1勝しかできませんでした。最低な結果だと思っています。ここ3年間、春兎で出てたんですけど、毎回のようにここってところでどっちかが体調を崩したりしてあと一歩のところで期待を裏切ってきてしまいました。だったらここで一区切りつけて、お互いがもっと力をつけていこうと。もっともっと成長してからまた組みたいです」(ラビット)
     それほど遠くないであろう将来、カラダそのものはそれほど大きくはなっていないかもしれないけれど、こんど組んだら最強のとき。そんな夢を抱かせてくれるのがこのチームである。今大会は決して春兎の最終回ではない。季節外れの冬眠に入ると思えばいい。彼女たちの可能性は、「青春・無限大・パワー!」シリーズで今後も個々に発揮されていくだろう。
     さて、ラビットは昼の部でフォールを取られたライディーン鋼をジュニア2冠王座の次期挑戦者に指名した。直接3カウントを奪われたこともあるが、鋼のパワーアップを感じたのが最大の理由。両者は昨年10月の川崎大会でタイトルマッチをおこなっている。お互いの立場こそ同じだが、王座戦の場が4・5後楽園にスケールアップするのだ。それに見合った闘いを王者、挑戦者とも見せなくてはならないはず。いまの鋼だったらそれが可能、というのがラビットの読みだろう。
     ただ、今大会の試合中、鋼が足を痛めるシーンがあった。気力で復活し勝利を得たが、このあたりに課題は残る。4・5後楽園までまだ時間があるだけに、鋼がどこまで自分をマックスにもっていけるか。そこが勝負のカギとなるのではなかろうか。   (新井 宏)
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    2015.3.8 浅草・花やしき 13時 総評 

     春山香代子&希月あおい組がタッグ2冠王者Leon&Ray組との直接対決を制し、無傷で「タッグリーグ・ザ・ベスト2015」決勝進出を決めた。試合後、この勢いで春山は「回答を聞かせてもらおう」と無差別級王者の中島安里紗を呼び出した。中島は「どんな覚悟をもって言ってるんですか? 浅草と後楽園のメインは違うんですよ」と逆質問。すると春山は「今回の挑戦で無差別への挑戦を最後にしたいと思ってる」と決意を述べた。これを聞いた中島は無言で握手。これがイエスを意味していたのは明らか。4・5後楽園でのJWP認定無差別級選手権試合<王者>中島安里紗vs<挑戦者>春山香代子が正式に決定した。
     ではなぜいま、中島vs春山なのか。中島が二の足を踏んだのもそのあたりに問題があったのだろう。「目立った活躍もなければ結果もない。数年前まで絶対王者でJWPを支えてきたとしても、いまを全力で輝いていない選手がいきなり挑戦だなんて、受ける気にはなれません」(中島)
     現実に2・22板橋のメインでピンフォールを奪ったとはいえ、それは一度のこと。ましてや次期挑戦者決定戦の意味合いもなかった。それでも、春山には春山の言い分がある。たんなる気まぐれで表明したのとはわけが違うのだ。
    「無差別に挑戦するのは簡単じゃないって何度もやってるからわかってますよ。実績もないから急には言えないし、ずっとチャンスをうかがってました。(板橋で)中島からフォールを取ったからいましかないって。事実、なにをいまさらって思ってる人もいるでしょう。そういう人にこそ見てもらいたいですね。文句は見てから言えと。無差別に挑戦するのはこれが最後のつもりです。挑戦するのは最後だけど、ベルトを巻くのは私ですよ。そして、絶対王者の姿を中島に見せたい。それが中島とJWPの団体のためになると思っているから」
     春山が無差別のベルトを巻いたのは、第13代と第19代の王者時代の2回ある。なかでも前者では2年間に渡り王者に君臨、絶対王者化していたのが春山だった。この時期の途中で中島はいったん引退しており、絶対王者・春山をフルで体感していない。中島からすれば防衛回数や期間を意識していないとはいえ、現在2度目の戴冠で1年4カ月ベルトを守り抜いており、6回の防衛に成功中。春山と記録(2年間保持で8回防衛。最多防衛は米山香織の10回、最多通算防衛回数では日向あずみの15回、春山の10回、中島の9回とつづく)で越えるためにも、こんどの春山戦は避けて通れない道なのかもしれない。
     中島vs春山の無差別級王座戦は、過去に一度だけある。2013年2月の大阪大会。中島の初防衛戦の相手が春山だったのだ。当時、中島はJWPの先輩レスラーから未勝利の状態で最高峰のベルトを巻いた。そのため、若き新王者にはチャレンジマッチの様相も呈していた。当時の状況を中島はこのように振り返る。
    「自分がチャンピオンにもかかわらず、私のほうがチャレンジャーに見えたと思うんですね。実際、自分の気持ちもそうでした。あのときにくらべれば自分が成長してるのは明らかだし、全然違いますよ。エースとしての自覚もいまはあるし、そこが一番の差だと思いますね」
     JWPのエースは誰か。現在はもちろん、中島がエースである。かつては春山もエースだった。春山が王者だった時代、2年間という保持期間では彼女が歴代最長なのだから、エースと言って過言ではないだろう。中島は言う。
    「前のエースが春山だった。いまのエースの中島にとって春山は越えなければならない壁。そういう声を聞くんですね。なぜいまのエースがこれを超えなくちゃいけないのか、そこの部分に“?”があって。だったらそう思ってる人にいまを示すのが手っ取り早いかなって。(春山が中島政権を)行き詰ってると言うのであれば、リング上でそれを否定したい」
     現在の無差別級王座は春山時代に劣っているのか。そこに中島は疑問を感じている。中島からすれば現在ベルトを巻いていることがすべてであり、過去と比較する必要はどこにもない。突然降ってわいた無差別級世代闘争。果たしてその決着は、どういった形で着くのだろうか…。

    2015.2.22 板橋グリーンホール 総評 

     中森華子の負傷欠場により、中島安里紗&中森組は「タッグリーグ・ザ・ベスト2015」を棄権することになってしまった。優勝候補の一角とみられていただけに残念な結果である。が、この隙に割り込んできたのが、春山香代子だった。春山はメインのタッグマッチで中島から直接ピンフォール勝ちを奪ったのだ。リーグ戦棄権の影響というわけではないだろうが、JWP認定無差別級王者が負けてしまったのは事実。試合後、春山が無差別級王座への挑戦をアピールした。舞台は4・5後楽園、ということか。

     しかしながら、これで即決定とはならない。王者の中島は自分たちの世代で無差別級王座戦線を盛り上げていきたいと考えている。ハッキリ言えば、春山はひとつ前の世代。2年間ベルトを保持していた春山とはいえ、中島からすればすでに過去の出来事なのだ。「(ベルトをかけた試合で)いまの春山がきても負ける気はしない」と思うのも当然だろう。
     答えの出なかった春山からすれば、リング上でその答えを中島から引き出すしかない。この日、春山はタッグリーグ優勝をあらためて宣言。すでに1勝をあげており、決勝進出圏内にいると言っていい。パートナー・希月あおいはいっしょにいるだけでまわりに元気とパワーを振りまく選手。これまでにないタイプとのチームで春山が“その気”になる可能性は十分にあるのだ。果たして、春山は中島にイエスと言わせることができるのか。タッグリーグの行方とは別に、もうひとつの楽しみができたのである。

     セミのジュニア2冠戦では、ラビット美兎が林結愛を破り、19歳のバースデー勝利。5度目の防衛で、JWPの若手は一通り全員倒したことになる。今後は外部にも目を向けたいというラビット。今年8月でジュニアの規定を満たすのだが、狙いはもちろんベルトを持ったままの卒業である。

     板橋大会の第3試合では、コマンド・ボリショイとLeonが一騎打ち。試合はLeonがフォール勝ちをおさめ、勝者が「マスクマンとしてもボリショイさんには負けたくない。タッグリーグ決勝戦で会いましょう」とメッセージを送った。Leonの求めた握手に応じたボリショイ。ところが、Leonが背を向けた瞬間にボリショイが投げっぱなしジャーマンを仕掛けて宣戦布告、「オマエのその真面目くさったところが嫌いなんだよ!」と言ってみせた。団体を牽引するボリショイだけにまさかの発言だが、すべてはタッグリーグ戦を盛り上げたうえで自分たちが優勝するためなのだ。現タッグ2冠王者であるLeonはRayとのボラドーラスL×Rで1勝0敗。一方の元王者チームのボリショイ&木村響子組は2勝0敗。別ブロックのため、両軍がぶつかるには決勝戦にコマを進めるしかない。

    2015.2.15 ラゾーナ川崎プラザソル 総評 

    2・15川崎大会は、アクシデントつづきの一日となってしまった。
     まずはラビット美兎。当日の朝にめまいを訴え、病院で脳の検査をおこなった。結果はさいわいにも異常なしだったが試合のダメージが残っているようで、もう少しの休養が必要との結論。よって、大事を取り今大会を欠場することになった。これにより、予定されていたタッグリーグ公式戦は不戦敗に。前年度優勝チームの“春兎”にとってはスタートダッシュを切れない痛恨の初戦となってしまったが、リーグ戦そのものを棄権とならなかったぶん、不幸中の幸いと考えたほうがいいだろう。ラビットには林結愛を挑戦者とする2・22板橋でのジュニア2冠戦も待っている。万全な状態での王座防衛、そしてリーグ戦へのカムバックが期待されるところだ。
     コマンド・ボリショイ&木村響子組の不戦勝により、前タッグ2冠王者チームは2戦2勝とトップに立った。まだ前半戦だけに優勝の行方は見えないものの、2連勝の4点はリーグ戦を優位に運ぶものになるだろう。試合ではラビットの穴をディアナのSareeeが埋めてくれた。20分闘ってのドローは急きょ参戦となったSareeeにはいい経験にもなったはず。試合後、来場はしていたラビットも加え、元のカードをおこなうことを4人が約束。リーグ戦でこそないが、ボリショイ&木村組vsラビット&つくし組は近い将来実現することになりそうだ。
     もうひとつのアクシデントは、メインイベントで起こった。春山香代子vs中森華子の一騎打ちで、8分過ぎあたりに中森が左ヒザを負傷。来場していた藪下めぐみも中森のヒザを入れようとしたが、試合続行は不可能と判断され無念のレフェリーストップとなってしまった。このまま大会も終了か…というところで、藪下とともに中森のケアをしていたKAZUKIを除くJWPの選手たちが登場。木村も「元JWPだよ」とアピールし、急きょ、5vs4のハンディキャップマッチ10分1本勝負がボーナストラックとしておこなわれることになったのだ。
     アクシデントが重なった今大会だったが、結果的には団体の団結力を見せつけるものになった。こういったハプニングはないにこしたことはないだろう。それでもプロレスはなにが起こるかわからない。そんな緊急時にこそ発揮できるのが日頃から鍛え上げられた団体力。JWPは一致団結で、このピンチを切り抜けたのだ。

    2015.1.18 板橋グリーンホール大会 総評 

    JWPのタッグリーグ戦「タッグリーグ・ザ・ベスト2015」が開幕した。今年の出場チームはAブロックが中島安里紗&中森華子組、Leon&Ray組、春山香代子&希月あおい組、藤ヶ崎矢子&林結愛組、Bブロックがボリショイ・キッド&木村響子組、ラビット美兎&つくし組、KAZUKI&ライディーン鋼組、瑛凛&加藤悠組の合計8チーム。それぞれのブロックの最高得点チームが3・22川崎大会で決勝戦をおこなうのだ。ちなみにこの大会は4・5後楽園ホール大会の直前とあって、後楽園に向けてのターニングポイントとなる可能性も高い。現タッグ王者のボラドーラスL×Rが逃げ切るのか、それともほかのチームが制覇しボラドーラスへの挑戦を表明するのか。いずれにしても、最後の最後まで行方の見えないタッグの闘いが展開されるのではなかろうか。
     そんななかにあって、チーム力は未知数ながら優勝争いに加わってきそうなのが中島&中森のバイオレンスプリンセスだ。対照的に、もっとも優勝からは遠いと思われても仕方のないのが藤ヶ崎矢子&林結愛の若手チームだろう。だとすれば、開幕戦の中島組vs藤ヶ崎組は、のっけから優勝争いとは無関係の消化試合ということになるのではないか。
     しかし実際は、こういう機会でもなければなかなか組まれることのない好カードである。得点争いで考えれば、確かに勝敗は見えている。事実、実力の差は歴然だった。とはいえ、長い目で見れば確実に、とくに若手チームにとって重要な意味を持つ試合なのである。
     どんなに強いレスラーでも、必ず通るのが新人時代。中島も中森も、つい数年前がそうだった。だからこそ、矢子も結愛もがむしゃらにいけばいい。それがそう簡単にできないのは承知の上。試合後に流した涙を無駄にしないためにも、彼女たちは続けていくことが必要だ。あのときはああだったと懐かしく思い出せるようであれば、この試合をやったかいがあるというものだ。
     中島は言う。「勝てないのは当然。問題はどんな気持ちで向かってくるか。2人とも意識し合ってるライバルだと思うし、力を合わせていかないと勝てない部分もある。いま彼女たちが持ってる武器は若さ。それをもっともっと最大限に生かしてがんばっていけばいい」
     ライバルでありながら、矢子も結愛もいまは切磋琢磨して自分を磨いていく時期。タッグリーグ戦はまだ始まったばかりだけに、たとえ決勝に残れなくてもなにかキラリと光るものを見せてほしいと思う。そうなれば、ジュニア世代のさらなる活性化につながるだろう。
     ジュニアと言えば、12月の後楽園大会でラビット美兎のジュニア2冠王座に挑戦した瑛凛がこの日、新たなる一面を見せた。瑛凛はコマンド・ボリショイ、Leonとの3WAYマッチに出場。キャリアあるベテラン勢にまじりながらもスピード感あふれる闘いを展開したのだ。ロシアンフックが特長の瑛凛だが、ボリショイやLeonといった素早い動きを得意とする選手にもまれることでさらなる成長が期待できる。ボリショイの関節技やLeonの空中殺法を盗み自分のものにすれば、おもしろい存在になるだろう。彼女にとって、ジュニアはあくまでも通過点。JWPの一員になったからには、いずれは無差別級王座を争うような選手になってほしい。実績を積み重ねていくためにも、この路線は外せない。
     今大会では中島組vs矢子組の公式戦がメインとなっていたが、中島が試合後のマイクでボーナストラックを発表、全選手参加のバトルロイヤルがおこなわれた。ダメージの大きい矢子&結愛が出られなかったのは仕方のないところだが、純血バトルで最後に残ったのは中島とLeon。これは、昨年の年間最高試合の再現にもなった。最後はキャプチュードバスターでLeonが中島からピンフォール勝ち。マイクを取ったLeonは「去年は負けた試合でベストバウトをもらったけど、今年はオマエに勝った試合でベストバウトを取ってやる!」とアピール。中島とLeonはタッグリーグでもおなじブロックに入っており、公式戦で再び当たることになる。順当にいけばこの試合で勝ったほうが決勝に進出する可能性が高いだろう。ここでまたLeonが中島に勝つようなことにでもなれば、無差別級王座をかけての一騎打ちにつながるかもしれない。タッグリーグ戦でもありながら、無差別のベルトをめぐる心理戦も展開されていく。

    2015.1.11 浅草・花やしき内華やしき座 総評 

     前年度最後の大一番と言える中島安里紗と藤本つかさのタイトルマッチ2連戦を終え、ともに団体の最高峰王座を守り抜いた2人の王者がタッグを組んだ。これはアンケートの結果から組まれたもので、対戦相手の“春兎”ラビット美兎&つくし組もファンからの希望が多いカードだった。12・21板橋では1週間後への前哨戦として「中島&つくし組vs藤本つかさ&ラビット組」(30分時間切れ引き分け)が組まれたのだが、タイトルマッチ後にはそれをさらにシャッフルしての組み合わせ。今回は決着がつき、無差別級王者の中島がジュニア2冠王者のラビットをフォールした。しかし試合後、今後に向けてさらなる動きが出てきたようだ。
     2・8浅草では本興行(1時開始)の後、若手を中心とした「第3回青春・無限大パワー!!」がおこなわれることが決定(4時開始)。その大会の中心になるのはやはり、ジュニア2冠王者のラビットということになるのだろう。試合に勝った中島はラビットに向かい「あなたたちが大会を盛り上げなくてはならない」とアピール。ダメージを負いながらも、それに応えたのがラビットだった。
    「『青春・無限大パワー!!』を成功させて、(1・18板橋で開幕の)タッグリーグも優勝して無差別のベルトも取ってやる!」
     ラビットはつくしとの春兎で昨年のタッグリーグを制したディフェンディングチャンピオン。この日はシングル王者2人に敗れたとはいえ、優勝候補と言って差し支えないだろう。そして、無差別級王座も中島から奪うと宣言。考えてみれば、ラビットが無差別級王座に言及するのは事実上これが初めてである。藤本に防衛したことでさらに盤石の王者になりつつある中島だが、ラビットが挑戦するところまで上がってくれば、想像を上回るような激闘が期待できるのではなかろうか。そのときは早い方がいい。2015年にラビットが無差別級王座に手が届くところまでやってくるのか、期待したい。
     無差別級王座挑戦に向け、ラビットに先を越されてはならないのが中森華子である。この日の中森は、これまたアンケートの結果を参考に木村響子との一騎打ちが実現した。木村が「大嫌い」な中森は、タッグで連敗。おまけに後楽園大会では華名に敗れたりと、このところ大事なところで勝ち星から見放されている。それだけに木村戦では勝利がほしかったが、結果は20分時間切れ引き分けに終わってしまった。
     とはいえ、浮上のチャンスは早急にやってくる。中森は中島とのバイオレンスプリンセスで「タッグリーグ・ザ・ベスト2015」にエントリー。無差別級王者・中島という心強いパートナーがいるだけに、こちらも優勝候補の一角と考えていい。同ブロックに現王者チームのボラドーラスL×Rがおり、このチームとの対戦が決勝進出への天王山か。
      なお、タッグリーグにパートナーを連れてくると明言していた華名だが、「スケジュールが合わず」エントリーされないことが発覚。ボリショイが「逃げたのか?」と問い詰めると「スケジュールが空いたらいつでも来るわ」と返答。リーグ戦出場こそ消えたものの、また別のところで掻き回される恐れもある。華名の存在が完全に消えたわけではないだけに、むしろ不気味である。

    2014.12.28 後楽園ホール 総評 

     中島安里紗vs藤本つかさ。同日、同会場、同一カードでおこなわれた前代未聞のタイトルマッチ2連戦は、昼のアイスリボンで藤本がICE×∞王座を防衛、夜のJWPでは中島安里紗がJWP認定無差別級王座を防衛した。王者が完全に入れ替わるという「Jがアイスで、アイスがJで」という結果にも、2試合ともフルタイムでどちらの王座も空位、という状況にもならなかった。
      中島も試合後のリング上で言っていたように、一見すれば、「なんだよ…」という声も聞こえてきそうな結果である。が、2試合を終えた中島の表情は晴れ晴れとしたものだった。中島は基本的に、「団体を背負う者」とのタイトルマッチを希望してきた。アイスリボンの藤本つかさは、表現法こそ違えど団体力を掲げ、団体全体でプロレスを盛り上げようとしている。そのすべてにおいて、中島が希望する条件と一致していたのだ。ダブルタイトルマッチにしなかったのも、ルールの違い以上に「団体の最高峰王座は挑戦者を迎えて守ることこそ王者本来のやり方」という思いが一致した。ダブルタイトルにすればどうしても守りに入り、ドローという可能性も出てきたかもしれない。引き分けに持ち込むような消極的な闘いはどちらも望まない。結果的に、かけるベルトを分けて2試合にしたのは正解だったのだ。
     それでも、結果の文面だけからは「なんだよ…」と思われてしまうかもしれない。会場で観戦すれば決してそんなことにはならないのだが、これが現実。そう思われてしまうことの悔しさを今後への原動力としなければならないだろう。タイトル戦ごとに明確なテーマを持ってリングに上がってきた中島だが、来年はそれが最も大きなテーマになる。
    「今年はどちらかというとそんなに華やかな一年ではなかったと思います。が、確実にJWPも私も力をつけてきた一年でした。それを来年以降、外に見せていくのが課題になってくる」(中島)
     「外」といえば、中島にはもうひとつの課題がある。昼の結果が示すように、ICE×∞王者にはなれなかった。ここでアイスリボンのベルトを巻いて無差別を防衛すれば、JWPサイドから見てこれ以上ない結果になっただろう。しかし実際には意外なくらいに中島はアイスリボンで藤本つかさに敗れた。「アウェーでペースがつかめなかった」と中島は振り返る。実はこのアウェー感こそ、中島が以前から抱える課題なのだと思う。思い返せばWAVEのリーグ戦や、昨年末スターダムの紫雷イオ戦でも結果が出せなかった。他団体での中島安里紗をどう見せていくのか、ベルトがなくても見ている者が彼女を王者と認識できるのか。そのあたりが中島に求められてくると思うのだ。
      どちらにしても、無差別級王者のまま年を越すのは中島にとって初めての経験だ。2015年も、JWP認定無差別級王者・中島安里紗の“挑戦”は止まらない。  (新井 宏)                      

    2014.12.21 板橋グリーンホール 総評 

     通常なら“中島安里紗&ラビット美兎組vs藤本つかさ&つくし組”となるところだろう。しかし、12・28後楽園を見据えた前哨戦は、“中島&つくし組vs藤本&ラビット組”という団体をシャッフルした組み合わせになっていた。これこそ、12・28の特殊性を象徴したカードと言っていいだろう。
    12月28日(日)に開催される後楽園ホールでのプロレスは、昼がアイスリボンで夜がJWP。ともにメインが中島vs藤本で、中島が昼にアイスリボンのICE×∞王座に挑戦すれば、夜のJWPでは藤本が無差別級王座に挑んでくる。JWPで1年間至宝を守ってきた中島がシングル2冠となるチャンスでもあれば、一気に無冠へと転落してしまう恐れもないわけではない。双方のタイトルマッチのルールには若干の違いがあることも、前代未聞の試みにさらなる拍車をかけているのだ。
    アイスリボンのベルトは30分時間切れの場合、王座は空位となる。一方のJWP認定無差別級王座はドローであれば王者の防衛。プロレス界全体からみればこちらが多数を占めるわけだが、引き分けで消化不良に終わるケースも団体を問わず過去にはあった。同日にかけるもうひとつのベルトが「ドローは王者が返上」となるだけに、どことなく不公平感をおぼえる人もいるかもしれない。
     そこで、前哨戦を終えた中島がひとつの提案をした。「藤本のほうが不利と言われているのが気に入らない。ドローなんて考えてはいないけれど、もし(夜の大会で)そうなってしまったら(JWP王座を)返上します」。この考えをコミッショナーサイドが認めたため、12・28後楽園JWPでの無差別級タイトルマッチは30分で決着がつかなければ王者の中島がベルトを返上することが認められる。“昼も夜もドローで両者無冠”という可能性まで生まれたことになるのだ。もちろん、中島からすればICE×∞奪取と無差別級王座防衛が狙い。アイスリボンのベルトを取れば次期挑戦者には奪回に乗り出すという世羅りさの心意気もすでに買っている。では、無差別級王座を防衛すれば次期挑戦者は誰になるのか。そして、万が一、中島が夜に敗れてしまうことにでもなれば、誰がJWPから奪回に乗り出すのか。考えようによっては(アイスリボンとは違い)JWPサイドは負けることを考えていないとも受け取れる。が、勝負はやってみなければわからない。昼に思わぬダメージを負い、夜に響くという危険性もあるわけだ。その点では、アイスリボンのほうが“団体”として12・28を重く受け止めているのかもしれない。一方で、JWP側からすれば“王者・中島安里紗”への信頼感が絶対、とも受け取れる。果たして、12・28メイン後にはどんな光景が広がるのか。2015年の女子プロレス界を占う意味でも、前代未聞の試みは見逃せない。
     無差別級王者への登竜門とも言えるジュニア2冠王座(JWP認定ジュニア&POP選手権)には、瑛凛の挑戦が決定した。この日おこなわれた巴戦で、林結愛、ライディーン鋼を退けた瑛凛が権利を獲得。心機一転、JWPに入団を果たした瑛凛には絶好のチャンスである。スターダム在籍時の須佐えり時代には、団体所属選手たちの猛プッシュをバネにラビット美兎、勝愛実と自己ベストマッチを展開した。それだけに、当時からどのくらい進歩したかも注目のポイントである。その進歩具合が発揮できれば、それはすなわちチャンピオンベルトにつながる。現王者のラビットは「リーグ戦で敗れた借りを返す」とこちらもモチベーションは高い。ラビットからすれば新入団選手に越されるわけにはいかないはず。「こどものころから見てきたベルトだし、私も歴代チャンピオンのなかに入りたい」とする瑛凛に対し、12・28後楽園で厳しい攻撃を仕掛けてくるのは間違いない。
     板橋大会のセミでは、コマンド・ボリショイ&木村響子のタッグ2冠王者がLeon&中森華子組と対戦した。この試合は12・28後楽園でのタッグタイトルマッチの前哨戦。Rayとのマスカラ・ボラドーラスでベルトを取りに来るLeonがどのような闘いを仕掛けるのかに注目が集まった。しかし、結果的に持っていったのは木村と中森の絡みだった。最後は木村が胴締めスリーパーで中森を捕獲、レフェリーストップとなり、木村のTKO勝ちが宣告された。とはいえ、中森はギブアップしたことはおろか、負けたことすら理解していなかった。完全に記憶がなくなっていたのだ。それはそれで覆ることのない負けなのだが、中森自身は納得がいかない。木村とのシングルを要求したのは自然の行動である。しかしながら、12・28後楽園で即実現とはならない。木村はタッグ2冠戦が控えており、中森には華名との一騎打ちが待っている。だとすれば、華名との闘いで弾みをつけ、木村との一騎打ちを決めたいところだろう。華名と木村…なにかと因縁深い2人と連続して対戦することになれば、中森への注目度が一気に高まる可能性もある。反対に、2人との連戦でともに惨敗を喫すれば、第一線から交代というリスクも抱えていると考えていい。華名とのシングルは木村戦へとつながっていくのだろうか…。

    2014.12.7 浅草・花やしき座 総評 

     今大会では中島安里紗&中森華子のバイオレンスプリンセスがコマンド・ボリショイ&木村響子のタッグ2冠王座に挑戦。中島組は王座奪取こそならなかったものの、中森と木村の遺恨はますます深まった。さらに中島にはもうひとつ大きな仕事が残されている。正確に言えば「ふたつ」とするべきか。12・28後楽園でおこなわれる前代未聞のタイトルマッチ2連戦。昼のアイスリボンで中島が藤本つかさのICE×∞王座、夜にはJWPで無差別級王者の中島が藤本の挑戦を迎え撃つのだ。王者の2人がともに相手団体の最高峰王座に挑戦するという前代未聞の試み。この歴史的とも言える連戦を前に中島に話を聞いてみた。本欄ではそのインタビューを再録する。
    「今年に入ってすぐ(1・19新木場)初めて(タッグで)対戦して、私はそのときJWPのベルトに挑戦してきてほしいとなんとなく言ったんですよ。向こうも向こうでアイスのベルトにと言ってたんですね。だけど結局はお互いにそれぞれの闘いがあって、なんとなくそのまま時が流れてしまったんですが、Leonさんや中森さんらJWPの先輩から防衛していって、やっぱり次は藤本つかさとやりたいと思ったんです。今年言ったことですからどうしても今年中にやっておきたいって」
    ――藤本選手は中島選手がかねてから言ってきた挑戦者の条件にすべて一致しますよね。
    「そうですね。やっぱり向こうも団体を背負っていて、アイスリボンは団体力ということでやってきて、それがすごく外に伝わっていたと思うんですね。そういうのがすごくいいなと思って」
    ――アイスリボンが団体力を標榜する一方で、こちらはこちらで団体を背負っていると。それは中島選手が初めてベルトを巻いたときから主張してきたことです。
    「そうですね。全然やり方は違うんだろうけど、お互いが団体のことを思っているのがすごく一緒だなと思って。そういう選手と当たることによって団体としての力もさらにつくと思うんです」
    ――過去の例からすればダブルタイトル戦になるのが常識ですが、今回は異例のタイトルマッチ2連戦になりました。昨年、スターダムでダブルタイトル戦をおこないましたが、ダブルタイトルの難しさを実感した?
    「難しいというよりも、私はなんであろうが闘うだけですから。団体の発表からすると今回はルールが違うと。アイスリボンのタイトルは時間切れドローなら返上、こっちは防衛になる。今回は統一戦ではないですが、私の思いとしてはルール云々じゃなくて、気持ちとしてJWP年末最後の後楽園大会ではJWPのベルトに誰かが挑戦してくる形にしたい。今回は藤本つかさが挑戦してくることに意味があって、向こうもそう思ってくれてるというのはすごいことだと思うんです」
    ――ひとつのタイトルはそのタイトルでやるべきだと。
    「そうです。お互いがそういう思いがあるということですね」
    ――ほかのなにかを加えるのではなく、純粋にいきたい。藤本選手のほうもアイスリボンのタイトルに対してそういう思いがあると。
    「そうですね。だからお互いが挑戦し合う」
    ――もしもアイスリボンのチャンピオンになったらどうしましょう?
    「それはうれしいですよ。アイスリボンにはJWPにないものがあるし、逆もまたそうですし。そこでまた新しい中島安里紗というものを発掘していけるのはいいことだと思うし、シングルで対戦していない選手がすごくいっぱいいるんですよ。そういう人たちとやっていくのもおもしろいし」
    ――昼はアイスリボンで挑戦者、夜はJWPで王者。試合の順番に関してはどうですか?
    「とくに問題はないです。ただ昼間に勝てば夜には2冠として入場できるので、勢いがつきそうですよね。私のほうが有利ってわけじゃないけど、得するのかなって思います」
    ――野球で言えば後攻みたいなものですかね。後攻めの夜がホームリングでサヨナラ勝ちのチャンスがあるとか。
    「そうですね(笑)」
    ――いずれにしても昼間の結果が夜にも影響を与えるのでは?
    「そうですね。どんな気持ちになるのか、でしょうね。ただJWPの無差別となれば、いまでも日向あずみさんの名前が出てくると思うんですよ。日向さんは60分ドローをやってるじゃないですか。日向さんがやったことを私ができないわけがないと思ってるので、今回は60分1本勝負じゃないですけど、30分と30分で、2試合の通算で60分やったとしても問題ないですよ」
    ――もしかして王座が入れ替わる可能性もゼロではないですよね。中島選手がアイスリボンのチャンピオンになり、藤本選手が無差別のベルトを巻くとか…。
    「私は取らせないですけどね! ただ唯一言えることは、移籍だけはないって(笑)」
    ――JWPのベルトを取って藤本選手がJWP所属になり、中島選手がアイスリボンの王者になってアイスの選手になるという…。
    「それは絶対ない、ない(笑)」
    ――12・28で無差別を守れば1年間守り通すことになります。こちらも試合形式同様、未体験ゾーンですね。
    「未体験ゾーンですね! 私は引退までチャンピオンでいたい。チャンピオンでない中島安里紗になんの意味があるんだというくらいに思ってますから。もちろん、中島安里紗に価値はあるけど、やっぱりベルトがないと、守るものがないとというか、リスクがないと闘っていけない。そう思います」
     俄然楽しみになってきた12・28後楽園。なお、今大会では左目を負傷しアイパッチをつけて闘った中島だが、今後の試合については影響は及ぼさないとのことである。お互いが万全な状態で、最高の2連戦を期待したい。             (新井 宏)

    2014.11.2 板橋グリーンホール 総評 

     前週の川崎大会でJWP認定無差別級王座を争った中島安里紗と中森華子がタッグを結成。雫有希を加えたこの試合では中森と雫の間で誤爆こそあったものの、中島&中森の連係は大きな問題なく決まっていた。最後は中森が春山から初のピンフォールを奪うおまけつき。タッグのエキスパートを破ったのをきっかけに、試合後の中森はJWP認定タッグ&デイリースポーツ王座への挑戦をアピールした。現王者の木村響子を「気に入らない!」と挑発してみせたのだ。
     これに反応したのは木村だけではない。Leonが現れ、マスカラボラドーラスもベルトを狙っていると主張。ここにボリショイ&木村の王者組、中森、ボラドーラス(Leon&Ray)の三角関係が出来上がった。
     とはいえ、中森のパートナーが不在である。タッグ王座戴冠時のパートナー、モーリーは現在も欠場中なのだ。するとそこへ上がってきたのが中島だった。中島は「私しかいないでしょ。私と(中森で)組むのがおもしろいんじゃないの?」とタッグ王座戦線に名乗りを上げた。そして中島と中森が挑戦者として正式に結託。木村はどちらの挑戦も受けるとして、12月全戦の参戦を約束した。これにより、年内に少なくとも2試合のタッグ王座戦が組まれることになる。すなわち、中島&中森とLeon&Rayで次期挑戦者を決めるのではなく、どちらも挑戦が可能。その順番も、王座奪取をめぐる駆け引きとなる。
     では、いったいどちらが先に挑戦するのか。試合後のコメントでは、中島と中森の意見が分かれた。中島が「(王者組vsボラドーラスの)後のほうが、ベルトを取って(年内を)終われる」と言えば、中森は「先に挑戦したい」と主張。中森は勢いのあるうちに取りたいはずで、一方の中島はシングルとタッグ2冠の合わせて3冠王としての年越しを見据えているのだろう。このあたりの意見の調整をどうするのか。11・16浅草までに両者の考えはまとまるのか。とりあえず結託した2人だが、平行線をたどればタッグワークにまで影響しかねない。新たな火種となる可能性も秘めているのだ。        (新井 宏)

    2014.10.26 ラゾーナ川崎プラザソル 総評 

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    中森華子を迎えJWP認定無差別級王座5度目の防衛戦に挑んだ中島安里紗。今回のテーマは「ゼロ」、すなわち「無」だった。これまでの実績などにとらわれず、なにもない状態で挑戦者よりも上だと見せる。それが中島の目的だったのだ。
    「本能で闘ってるつもりでも、JWPのチャンピオンとしてやらないといけない。その意識が常にあった」と王者は言う。それはもちろんなのだが、純粋に闘いに没頭したとき、なにを感じるのか。これまでは対先輩や対外敵など、あらゆる責任と思いが大きくのしかかる闘いばかり乗り越えてきた。Leon戦に続く所属選手との対戦ではそういったものを抜きにして闘ってみたい。それが終わったとき、なにを思うのか。もちろん、防衛しなければ話にならないが…。
    結果的に、中島は5度目の防衛に成功した。ならば、王者はこの闘いから何を感じ取ったのか。中島は言う。「自分はまだまだ。勝ったけど、まだまだ伸びていくんだと思いました。まだまだやれることはあるんだと感じたことはよかったと思います」
    そして、相手の中森に対してはこんなことも感じている。「もともとタフな選手ですし、それが前面に出ていましたね。でもお互いに歩んでいく道は違うから、私は私の道、中森は中森の道を行けばいい。その道を自信をもって歩いていくしかないと思います。いまのJWPにその2人がいることってすごいことだと思うんです。それが本当にすごいのか生かすも殺すも自分たちしだい。もっと力をつけて、また(タイトルマッチで)当たりたいですね。そのときは、もっと大きな場所で」
    この日、中島は真っ白なコスチューム。対照的に中森は黒のコスチュームで登場した。対照的ながら、2人とも“戦闘服”を新調してきたのは共通点。対照的であり強雨校もある。だからこそ今後への期待が膨らむのだ。2人の対決はこれが最後ではない。むしろ、これからが両者にとって本当の勝負のはず。「もっと大きい場所」でベルトをかけての一騎打ち。それこそ、JWPのファン、誰もが描く未来図だろう。中島と中森は、11・2板橋でタッグを組む。大会終了後には、中島&中森&雫組vsボリショイ&春山&KAZUKI組の6人タッグマッチが決定した。
    では、中島の次なるターゲットは誰なのか。闘う王者である中島は、リング上から次の挑戦者を指名した。それは、アイスリボンの藤本つかさだった。しかしながら、本人がいないばかりか、これは中島が口に出したに過ぎない。あくまでも本人の希望であり、アイスリボン側がどんな反応を示すのか現段階ではわからない。ボリショイはこれから連絡を取り団体間の話し合いにもっていきたいとのことだが、藤本はICE×∞王座を8度防衛中の絶対王者だ。次の防衛戦も決まっており、邪魔されたくないとの思いがあっても不思議ではないだろう。しかしながら、そういった存在だからこそ中島が興味を示していることは間違いないのだ。しかも「団体を背負う部分では藤本には勝てないと思う」とさえ言っている。他団体で、団体を背負う選手から学ぶことはたくさんある。同じような立場にある選手と対してなにをつかみ取れるのか。中島は高いリスクを冒してでもこの試合を実現させるつもりであり、「年内にはやりたい」と言う。果たして、ICE×∞王者の反応は…。

    2014.9.15 板橋グリーンホール 総評 

     中島安里紗が自己新となる無差別級王座Ⅴ4に成功。前回は4度目の防衛戦でベルトを落としているだけに、その壁を突破した今後は未知の領域へと入っていくことになる。が、今回の防衛戦もある意味で中島にとっては未知の領域だった。相手はまだシングルで勝ったことのないLeon。「努力は人を裏切らない」との言葉を“座右の銘”に日夜練習を怠らない、若手にとってはお手本のようなレスラーである。ただし、LeonがチャンピオンになることがJWPに何をもたらすかとなると話は別。以前、米山香織からベルトをひっぺがし米山革命に終止符を打たせレオン革命を宣言したものの、3カ月余りで王座を明け渡した。レオン革命も結局はそのときの掛け声のみに終わってしまった感は否めない。Leon自身に大きな悔いが残ったことは想像に難くないだろう。だからこそ、リベンジの機会がほしかった。しかしLeonが中島に挑戦をアピールすると、「ベルトを取ってJWPをさらにおもしろく自信があるのか、団体を引っ張っていく覚悟があるのか」と問われることに。正直、こちらからもLeonがベルトを巻くとのイメージがまったく沸かなかった。
     しかし試合は予想以上に白熱。それは同時にJWPらしいクオリティーの高さだったが、Leon戴冠をイメージさせる試合までにはならないのではないかと思ったのだ。そこでLeonは想像を上回ったのである。やはりこういうところで出てくるのは日頃の努力。付け焼刃でこういう闘いができるものではない。それが伝わったのか、場内ではLeonへの声援が大きくなっていく。Leonがベルトを取ってもいいんじゃないか。すなわち、Leon戴冠後のイメージが沸いてきたのである。
     それでも最後は中島が上回った。この日のLeonを退けたのだから、いよいよもって中島の王者像は確立してきたと思われる。所属選手同士による理想形の無差別級タイトルマッチ。欲を言えばもっと大きな会場で多くの人に見てほしい試合だったのだが、今後への予告編として価値のあるカードだったと思う。
     そうなれば、10・26川崎に決定した中森華子にも大きな期待がかかるというもの。10・13板橋での前哨戦(中島&ボリショイ組vs中森&雫組)は、これまでの両者の絡みとはまったく意味合いが異なるのではなかろうか。振り返ってみれば、中島の“復帰戦”で相手をしたのが中森だった。その後すぐに立場は逆転。中森にとっては耐え難い現実である。本来ならもっともっと中島に牙を剥いてほしかった中森。正式にタイトル戦が決まったなか、中森は“無差別級王者・中森華子”をイメージさせることができるのか。まずは10・13板橋での前哨戦が注目となる。                    (新井 宏)

    2014.8.17 後楽園ホール 総評 

    “バトルシンデレラ”阿部幸江が18年間のプロレスラー生活にピリオドを打った。ここでは、KAZUKIを交えてのバックステージでのコメントを紹介しよう。最後のオリジナルWANTED!?、だ。
    阿部「試合前はものすごい緊張感でいっぱいで、もう頭が真っ白で、昨日までに挨拶を考えてから寝たんですが、朝起きたらもう真っ白になってて、KAZUKIに朝、会ったらKAZUKIのほうがちょっと緊張している感じで顔面真っ白になってて(笑)、どうなることかと思ったんですが、無事に終わってよかったです」
    KAZUKI「多分これから実感がわいてくるんだと思います。試合中は、私がしっかりしなきゃとずっと思ってたので」
    ――ザ☆WANTED!?としての試合とKAZUKIとのシングルだったが。
    阿部「私が18年間続けてこられたのもKAZUKIがいたからなんですよね。いなかったらとっくにやめてたし、ザ☆WANTED!?があったからここまでこれたと思ってるし、私ひとりの力ではとてもとてもここまではこれなかったです。KAZUKIと最後にやるって、私の最期を看取るのはKAZUKIしかいないと思ってて、KAZUKIとやりたいと思ってる気持ちと2人で組んでやってきたのでタッグとしてもザ☆WANTED!?としてもやりたいと思ってて、最初、会社のほうに引退の希望試合をなにかと聞かれてザ☆WANTED!?でやりたいですと伝えたら両方やったらいいんじゃないと言われて、両方やらせてもらえるんでしたらということで、ザ☆WANTED!?としてもシングルとしてもやらせてもらえることになりました。最初はタッグとシングル別々にやるか、つづけてやるかとの案もあったんですが燃え尽きるためには続けてやったほうがいいのではないかとの思いがあって、つづけてやらせてもらいました」
    ――悔いなく燃え尽きた?
    阿部「ハイ。悔いが残るかなと思ったんですけど、いま現在はすごいスッキリしてて、いまのところ悔いはないです。ヘヘへ。ハイ。10カウントのときいろんな人から撤回してもいいよとか撤回を期待しますみたいな感じのことをいろんな人に言われて、他団体の選手にも言われて(笑)、みんなに言われて、KAZUKIに引退を言ったとき『後悔はないですねって!?』念を押されて、米山のことで大変な思いをしたので、そこはやっぱりきちんと終わるべきだし終わらせなければいけないし。やっぱり一生できることではないと思うので、女子プロレスっていうのは華やかなまま終わりたいので、今日、引退無事にできてよかったです」
    ――今後について。
    阿部「まったく決まってないです。いろんな人に聞かれるんですけど、まったくもってのノープランなので。ホントは寿引退をめざしてたのですが、ちょっと間に合わなかったので、これから探して(笑)ハイ、そうですね。まずは今日が終わることがすべてだったのでなにも考えてないです」
    ――引きつづき婚活?
    阿部「そうですね、婚活します」
    ――相手に求める条件は同じ
    阿部「そうですね」
    ――35歳から45歳で顔はジャニーズ系、年収は生活に困らない程度の1000万円以上。
    阿部「そうですね」
    ――候補はいた?
    阿部「アハハ。ちょっといないですよね。ハードルは下げちゃいけないと思う。探します」
    ――現役中11回骨折したが、今日骨折はしてない?
    阿部「ハイ」
    KAZUKI「途中ヤバかったですよね」
    阿部「途中、ヒザがダメかと思いました。Tommyさんが『最後だから頑張れ』って檄を入れてくれて、最後だ頑張らなきゃと思って。KAZUKIとの試合になる前にできる?と言われて、え、やらなくてもいいのって思って(笑)。でも次に伸ばすわけにはいかないので、やりました」
    ――リング上での最後のあいさつに昭和を感じたが。
    阿部「ハイ、永久に不滅です。バトルシンデレラなので、JWPでバトルシンデレラオーディションを開催するので次の時代のバトルシンデレラを探さなきゃいけないので」
    KAZUKI「平成のね。平成のバトルシンデレラを」
    阿部「私も平成だよ」
    KAZUKI「阿部さんてボリショイさんにいつも阿部ちゃんは昭和やなあって言われてるんです」
    阿部「昭和最高ですからね。(あいさつの元ネタが)わかりました? ちょっとざわついたから。永久に不滅です。これ、絶対に言いたかったんで」
    ――できることならずっとやっていたかったとのことだが、それでもリングを下りる理由は?
    阿部「ベストコンディションではどんどんなくなってきたというのが、最大の理由です(涙)。受け身を取れないのはプロレスラーではないと思っているので。ギリギリですね」
    ――リングを下りるのはいまだと。
    阿部「そうですね」
    ――阿部幸江とはどんなレスラーだった?
    阿部「弱い。すっとぼけたとこがあって。他人を頼りにここまでやってきたので(笑)、自分の力では決して生きてこられなかった(笑)。すべてまわりの方の協力と、まわりの方に感謝してもしきれないくらい、KAZUKIをはじめ、他人に頼って生きてきました、18年間」
    ――やってきてよかった?
    阿部「ハイ」
    ――これからも人を頼る生き方に変わりはない?
    阿部「フフフ。これからもKAZUKIを頼りに(笑)生きていきたいです。仕事ないんだけど、とか」
    KAZUKI「JWPのスタッフでお待ちしてます。ザ☆WANTED!?のマネジャーでもいいです」
    阿部「フフフ」
    ――実際になってみたプロレスラー生活は?
    阿部「テレビの世界でしか知らないで育ってきてプロレスラーになりたくて、でもいざオーディションを受けたら落ちまくって、4年間ずっと落ちまくって、でも努力してこなかったんですよね。みんな他人は空手とか柔道を習ってたみたいなんですけど、私はそういうアタマも一切なく、必ずなれるものだと信じてたので、夢は絶対つかむもの、かなえるものだと思って生きてきて。で、実現しちゃったもんですから(笑)、のらりくらりと生きてきてどうにかなっちゃう感じで生きてきたんで、ホントにホントに人を頼りに生きてきてよくないとはわかってるんですが。入ってみたら厳しい世界で決して華やかなだけではなくて、厳しかったですけれどもその厳しさの中に一瞬のお客さんにガンバレとか声援とかパワーをもらって、私もまたパワーを返せてっていうホントにみんなの思いでここまでこれました」

    2014.3.20 青春・無限大パワー  総評 

    JWPが団体を問わずキャリア5年未満のジュニア選手による大会をプロデュース。「青春・無限大パワー」の第1弾興行が埼玉・蕨アイスリボン道場で開催された。
     大会の主役となるのは、ジュニア2冠王者の勝愛実となるのだろう。勝は3月初めに道場での練習中に左足を負傷。足首のじん帯を損傷し、3大会(3・9Joshi4Hope、仙女3・15仙台、JWP3・16板橋)を欠場していた。しかし、若手主体の大会でジュニア王者が休むにはいかないとギリギリまで調整。全治までにはいかないものの診断よりも早い回復をみせ、なんとか今大会に間に合わせた。
     全4試合では出場選手たちが自分たちのための大会であることを意識していたのだろう。ふだん以上に躍動していた選手も多く、それを見られただけでも価値のある大会だったのではなかろうか。第1試合でLeonの胸を借りた藤ヶ崎は試合後に叱咤されたものの、デビュー以来もっともよく声が出ていたと思う。セミのラビット美兎vsSareeeは事実上のジュニア2冠王座次期挑戦者決定戦で、実際その通りになった。この試合でSareeeは引退した栗原あゆみ直伝の裏投げで初めてピンフォールを奪ってみせた。タッグリーグ優勝で勢いに乗るラビットからの勝利だけに、大きな価値がある。今大会における裏投げでの勝利はSareeeに大きな自信をもたらすだろう。そしてメインは、ジュニア2冠の元王者と現王者が揃い踏み。3月いっぱいでプロレスを卒業する夕陽と、王座挑戦をアピールしている山下りなと対戦した。どの組み合わせを取っても興味深く、勝vs夕陽はタイトルマッチで見たかった夢の顔合わせ。下野vs山下の絡みは“ストロング大女”ともいえる迫力のぶつかり合いを展開した。そして近い将来、ベルトをかけての対戦が実現すればジュニアの枠を超えた肉弾戦を期待したい勝と山下の激突。そのどれもがダイジェスト的ながらも期待に違わない好勝負となっていた。内容的には大成功の第1回大会と言っていいだろう。
     そしてエンディングでは、勝が4・20後楽園でのジュニア2冠戦をアナウンス。挑戦者には、山下でなければ夏すみれでもない、この日のセミでラビットを破ったSareeeを指名した。やはり勝も、ラビットvsSareeeを次期挑戦者決定戦として注目していたのだ。
    「どっちもライバルだし、勝ったほうとベルトをかけて闘おうと思ってました。Sareeeとは昨年5月にタイトルマッチで闘いましたが、それ以来お互いに成長しているだろうし強くなってなきゃいけない。これからの女子プロレスは私たちが引っ張っていかなきゃいけないと思ってるので、勝ったSareeeを指名しました」
     指名されたSareeeはもちろん「やってやるよ!」と即答した。名指しされたことには驚いたが、挑戦の機会をうかがっていたこともある。王者のほうから希望してくれたのだから断る理由はない。
    「前回から負けたままになってて、これじゃダメだとずっと思っていました。だから指名されたことはすごくうれしく思います。でも、試合では指名したことを後悔させてやります。来月にはデビューから3年で、(JWP4・20)後楽園は4年目を迎えて最初の大きな試合になると思います。もうそろそろタイトルを獲らないといけないとも思ってますし、もう負けるわけにはいかないです」
     「後悔させてやる」と言い切ったのには理由がある。最近のSareeeはフィニッシュをジャーマンスープレックスでとることが多かった。そして今回、初めて裏投げで勝利をあげた。フィニッシュホールドが二つになったのだ。「それが昨年との大きな違いです」とSareee。王者の勝もダイビングエルボーからオレンジブロッサムなどフィニッシュに使う技が広がっている。昨年5月の板橋でメインを張った勝vsSareeeがどんな進化を見せるのか。4・20後楽園は大注目であると同時に、この試合から「青春・無限大パワー」がさらなる広がりを見せていくかもしれない。「青春・無限大パワー」の可能性に期待したい。                             (新井 宏)

    2014.1.26 ラゾーナ川崎 総評 

    1・5板橋での開幕戦に続き、タッグリーグ・ザ・ベストでまたもや波乱が起こった。1・19新木場で好発進したコマンド・ボリショイ&“X”木村響子組が、リーグ戦初戦のKAZUKI&ライディーン鋼にまさかの敗北を喫したのである。
     試合はリング上で鋼がダウン。その間にKAZUKIがボリショイと木村を場外にくぎ付けにし、リングアウト勝ちをかっさらった。これが作戦なのかどうかはわからないが、とにかく勝ち点2がKAZUKI組に入った。反対に、ボリショイ組は2点どまり。ボリショイ組の残る公式戦は3・2浅草での中島安里紗&華名組のみである。華名と木村の激突に注目が集まる試合だが、中島と木村の遭遇や、もちろん優勝争い最後の大一番となる可能性もある。そのまえにKAZUKI組が一気に決勝進出を決めている可能性もあるが、いずれにしてもボリショイ組には痛い一敗で、KAZUKI組には大きな一勝だったことは間違いない。
     それにしても気になるのが中島&華名組である。この日に関しては華名が出場していないのでなんとも言えないのだが、そもそもこのチームは今後もタッグチームとしてやっていけるのか、板橋の試合を見た限りでは空中分解の危険性が非常に高いと言わざるを得ない。まさかこれも計算の内とはならないだろう。リーグ戦は公式戦が3つだけだから、ひとつの負けが優勝争いを大きく左右する。それだけに、黒星覚悟の試合は今回のリーグ戦にはあり得ないはずだ。
     それでも中島は強気を貫き通している。あくまでも優勝する気満々。そのためにも華名とのコンビを立て直さなければならないだろうが、具体的な策があるとも思えない。3・2浅草でのボリショイ&木村組戦が決勝進出を決める試合となるのか、それとも中島組が脱落したうえでの遺恨試合のみとなってしまうのか。それを見極めるためにも、2・9浅草での中島組vsKAZUKI組は非常に意味あるカードになった。
    そのうえ、ここでもKAZUKI組が絡んでいるのだ。毎大会が波乱の連続…もしかしたら、KAZUKI&鋼がリーグ戦のカギを握っているのかもしれない。   (新井 宏)

    2014.1.19 新木場1stRING 総評 

     タッグリーグが始まっても、コマンド・ボリショイのパートナー“X”は発表されないままだった。その正体は、ボリショイの初戦がおこなわれる1・19新木場での入場時に明らかになるという。すでに中島安里紗&華名組がラビット美兎&つくし組に足元をすくわれる波乱の幕開けとなった「タッグ・リーグ・ザ・ベスト2014」。ボリショイのパートナーが誰になるのか。その正体によって、さらなる混乱が生まれる可能性も秘めているのだ。
     ファンによる予想では、だいたい5人くらいに絞られていた。ダイナマイト・関西、尾崎魔弓、里村明衣子、乱丸、木村響子といった名前が挙がったのだ。まえもってボリショイ風マスクを被った選手の写真が公開されるもそれだけではカラダの大きさもわからず、目が隠れているだけによりいっそう予想が難しかったようである。
     そして迎えた新木場大会。Xはマスクを被ったまま入場した。マスク以外のコスチュームで、大方の観客は正体を察しただろう。入場してきたXはコーナーに上がりアピール。そのときマスクを取ろうとして取らないというにくい演出。これにしびれを切らしたのが対戦相手のラビット&つくしだ。とくにつくしは執拗にマスクに手をかけ、正体を暴いてやろうと躍起になった。
     するとXは自らマスクをとり正体を明かす。覆面の下から出てきたその顔は、木村響子だった。
     木村は昨年7月の10周年記念試合にボリショイを指名、レスリングドリーマーズ新木場のリングでシングルマッチをおこなっている。これが縁でタッグを結成することになったのだが、今回はボリショイからの指名だった。ではなぜ、ボリショイはあえてJWPを飛び出した木村をパートナーに選んだのか。
    「ふだんの言動から中島は私以外の選手を選ぶだろうなと感じていたんですね。じゃあ自分は誰と組もうとなったときに、直感でおもしろいと思ったのが木村でした」
     もちろん、ボリショイは優勝とその先にあるタッグ2冠王座戴冠を視野に入れて木村を選んだ。前回のシングルマッチで気持ちは通じあった。それだけに、中島&華名組とはタッグを組む意識のレベルが違うとボリショイは言う。3・2浅草で、中島&華名組とボリショイ&木村組がおこなわれる。リーグ戦の最終日なだけに、決勝進出を左右する大一番なのはもちろん、中島と木村、華名と木村の激突といった大きな見どころもある。華名とボリショイの絡みも、中島が華名をJWPのリングに呼び込んでからは一度も実現していない。どの組み合わせを取っても危険な香りのするタッグマッチである。果たして、試合として成立するのだろうか…。
     特に心配なのが中島&華名組だ。開幕戦では最初からタッグとして機能せず、今後への不安をのぞかせた。次の公式戦は2・9浅草でのKAZUKI&ライディーン鋼戦。ここでまた黒星となれば、優勝争いからは脱落する。反対に、ここで勝てば3・2でのボリショイ組戦で勝ったほうが決勝進出というシチュエーションも可能だろう。
     3・2浅草をどのような状況で迎えるのか、まずは2・9における中島&華名組の出方に注目したい。

    2013.7.20 板橋グリーンホール 総評 

     「ボリショイ・ディケイド3」としておこなわれたコマンド・ボリショイvsLeonの試合には、CMLL―REINAインターナショナル王座のベルトもかけられた。これは王者Leonからの要求によるもので、メインでもまったくおかしくないカードである。第1試合に組まれたのは、ボリショイが新木場のレスリングドリーマーズに移動、木村響子の10周年記念試合に出場するための措置だった。ボリショイからすれば、ボリショイ・ディケイドのダブルヘッダー的感覚だろうか。
    「呼んでくれた木村に失礼のないように万全の状態で臨む」としていたボリショイ。Leonもボリショイとの一騎打ちに価値を見いだし、大切にしているベルトをかけてきた。Leonとのタイトル戦も木村との記念マッチも、ボリショイには大きな意味のあるカードである。
     Leonとの試合は、ボリショイが勝利した。この結果からボリショイはベルトを持って新木場のリングに立つことになった。木村との試合は、木村の原点に立ち返るような重厚な攻防。木村はヒールではなく、レスラーとレスラーのぶつかり合いを挑んできた。木村が10年なら、JWPもボリショイがリーダーになる選手会主導になってから10年。ふたつのディケイド(10年間)が交錯した試合は、王者になった師匠が勝利し幕を閉じた。
     7月20日は、まさにボリショイ・デー。そういえば、JWP無差別級王者になったのが13年前の8月で、もっとも最近シングルのベルトを巻いたのがアイスリボンのICE×60王座で3年前の8月だった。夏がボリショイの季節だとすれば、ベルトを巻いたボリショイにますますの期待がかかる。
     「このベルトを獲ってから気づいたんですけど、10年前の7月に2回目のメキシコに行ってたんですね。あれから10年がたって、このベルトを持ってまたメキシコに行けたらなと。Leonが価値を高めようとすごく大切にしてきたベルトです。その気持ちがベルトの重みになってると感じます。この価値を高めるために、もっと人目につくところでタイトル戦をやりたい、どんどん防衛していきたい。だから私は、このベルトを中島安里紗との無差別級戦にかけたいと思います」
     ということは、7・28名古屋での中島戦は、無差別級とCMLL-REINAインターナショナル王座のダブルタイトルマッチということになる。「安里紗も海外に興味を持ってるから」とボリショイ。どうやらこの試合には、2本のベルトがかけられることになりそうである。
     板橋大会のメインでは、タッグ2冠戦が3WAYマッチでおこなわれた。結果、ハルクラがザ☆WANTED!?を破り防衛に成功、盤石ぶりを見せつけた。
    一方で、中森華子&モーリーのハートムーブとは決着がつかなかったのも事実。試合後、倉垣のほうから「モリハナには勝ってないから後楽園(8・18)でやってやるよ!」と挑発すれば、モーリーが「負けてもなければ勝ってもいない、この悔しさを全部ぶつけて自分たちがベルトを巻く!」と呼応。このやり取りから、ハルクラvsハートムーブのタッグ2冠戦が正式に決定した。
    結果的に連続挑戦となる中森とモーリー。ハートムーブの2人は常にハルクラのベルトを狙ってきた。が、現実としてハルクラの牙城を切り崩すには至っていない。団体側としてもハートムーブばかりにタッグ王座挑戦の機会を与えるわけにはいかないだろう。これが最後のチャレンジという可能性もある。そのつもりでぶつからなければハートムーブにベルトはやってこないだろう。
    現在のハートムーブについて春山は言う。
    「モリハナはテンションが上がったり下がったりが激しすぎる。落ちてるならやる意味もないし、高いところからどんどん上げていかないと。板橋大会ではテンションが高かったので、どれだけ上げてくるか楽しみですね。もしも勢いがなかったらすぐに終わらせますけど」
     春山の言う「テンションが落ちる」とは、負けた後のガッカリした様子を表現しているのではないか。確かに、ハートムーブにはそんな傾向がある。8・18後楽園でどれだけハルクラを慌てさせることができるのか。ハルクラのハートをムーブさせられなければ、タッグ2冠には手が届かない。中森とモーリーには正念場。ここでベルトを巻くことになれば、主役の座へ一気に躍り出ることができるが…。

    2012.6.17東京キネ倶楽部 総評 

    メインのJWP認定タッグ&デイリースポーツ認定女子タッグ選手権試合は、タイから一時帰国のさくらえみ&米山香織組が中島安里紗&勝愛実組を退けて初防衛に成功した。これにより、タッグ2冠のベルトはふたたび海を渡ることになった。米山は数日後、タイに戻る。次回の帰国がいつになるのか。もしもまったくの白紙だとしたら、防衛戦がおこなわれないままタイトルそのものがフェードアウトになってしまう危険性もある。
     そう思われた矢先、米山が次期防衛戦の早期実現を掲げるマイクアピールをおこなった。「このベルトをどんどん防衛したいから、挑戦したいヤツ出てこい!」
     王座陥落のリスクを避けて少しでも長くベルトを保持していたいさくらを尻目に、米山は2度目の防衛戦となる挑戦者を募った。「防衛をしに日本に戻ってきたいから、どんどんやっていくぞ!」という米山の心意気に応えて出てきたのは、ラビット美兎&川佐ナナ組と阿部幸江&KAZUKIのザ☆WANTED!?だった。
     米山は「ラビットは勝手に付け人をやめたからなし!」と、事実ではない言いがかりで元付け人からの挑戦表明をさっそく退けた。さらにザ☆WANTED!?には「モーリーともう一人だったらいい」と、オリジナルザ☆WANTED!?での挑戦は拒否する姿勢。タイで自由な空気を吸ったのか。チャンピオンだからこその振る舞いである。
    そこでモーリーが選んだのが、リーダーのKAZUKIだった。ひょんなことからタッグ王座へのチャンスを得たモーリーだが、この日は無差別級王者、春山香代子とのシングルに臨み、結果と内容しだいではシングル王座への挑戦の可能性があったものの、敗れている。そのことに関し米山は、「なんでその試合にシングルのベルトがかけられなかったのか、わかってる?」と問いかけた。モーリーが「わかりません」と答えると、米山は「私もわかんねえよ。でも、春山さんみたいに意地悪じゃないから、(タッグの)ベルトをかけてやる!」と、さくらの意思は完全に置き去りにしたうえで、正式にモーリーの挑戦を受けることを宣言した。
    では、なぜここでモーリーなのか。さくら&米山組がKAZUKI&モーリーの挑戦を受けるのは7・15大阪。この試合で、米山がモーリーを指名した意味が分かるのだろうか。米山は7・15大阪のまえに、また日本に戻ってくるつもりだ。もちろん、さくらを伴って…。
     セミファイナルでは、中森華子&大畠美咲組が倉垣翼&Leon組に勝利。大畠が前無差別級王者の倉垣から直接勝利を奪ってみせた。春山への挑戦をなんとしても実現させたい大畠からすれば、願ってもない実績である。
     大畠は、JWP認定無差別級王座への挑戦をあらためてアピールした。しかし、あきらめきれない中森が「私だって挑戦するんだよ!」と割って入る。ここに登場したのが王者の春山だ。
    春山は「大畠の挑戦を受ける」と宣言し、初防衛戦の相手がようやく決定した。やはり決め手になったのは前王者からの勝利と、観客からの支持率上昇だった。大畠、中森ともかねてからタイトルマッチをアピールしているが、所属の中森よりも結果を出した大畠への期待感が高まっているのが現実。「私が今日なんでノンタイトルでモーリーと闘ったのか考えろ」と、春山は中森に対して質問を投げかけた。中森とモーリーには共通の問題点がある、ということなのか。
    大畠は「おばさんたちでベルトを回すより、若い私が獲っていろんなところで防衛してJWPに持ってきたほうがおもしろいんじゃないですか?」と、自分が王者になったときの利点をアピールしてみせた。春山が「なめんじゃねえ、おばさんはすげえんだよ!」とおばさんを認めるような発言をしたのは、余裕のなせる業なのか。春山香代子vs大畠美咲のJWP認定無差別級選手権試合は、7・8川崎で実現する。大畠にとっては米山に挑戦以来、2度目の無差別級タイトルマッチ。春山には最長防衛期間を達成した前王者時代との闘いがスタートする大事な初防衛戦となる。果たして、結果は!?     (新井 宏)

    2012.6.3北千住・シアター1010 総評 

     6・17キネマでのJWP認定タッグ&デイリースポーツ認定女子タッグ王座挑戦に向けて、中島安里紗&勝愛実組が順調な仕上がり具合を見せている。この日の北千住大会では2試合に登場。倉垣翼&川佐ナナ組を相手に、勝が初公開となるダイビングエルボードロップで川佐をピンフォール。幸先いい1勝をあげると、メインの8人タッグでも中島がだるま式ジャーマンでモーリーを仕留めてみせた。勝がとれば、先日の横浜大会で復帰後初勝利をおさめた中島も勝利を奪う。バランス面でも、タイトルマッチに向けていい感じなのである。
     メインで組んだボリショイは言う。「阿吽の呼吸というか、2人とも(タッグの)センスがいいんですね。お客さんにも応援されやすいチームだし、期待したいと思います」
    「さくらえみみたいなヘラヘラした人間がJWPのベルトを持ってるなんてありえない!」
    大きな期待のかかる中島&勝組は、さくらがベルトをタイにもっていってしまったことにも怒りを燃やしている。米山香織とともに異国へいってしまったことで、タイトルマッチがおこなえる保証がないからだ。次の6・17キネマを逃したら、さくらにその気がないだけに、いつタイトル戦がおこなえるかまったく読めない。それだけに、なんとしてもベルトを日本に戻したいところなのである。
    確かに、JWPのベルトを海外に紹介できるメリットはあるだろう。しかしながら、現時点でそれほど大きな“宣伝”は期待できないのではないか。正式に旗揚げし、現地での大会がしっかりとおこなえるようになってからでも、そのことについては決して遅くはない。少なくとも現時点において2本のベルトは、さくら&米山が日本のチャンピオンであると知られるためのアイテムにすぎないと言ってもいいかもしれない。
    その反面、中島&勝がタイトルを奪取すれば、タッグ2冠戦はいつでもおこなえる状態に戻るだろう。そして、それ以上に大きなメリットがある。タイトル戦線が一気に若返る可能性が高いのだ。他団体の若手が挑戦する機会も増えてくるだろう。タッグ2冠を中心に、新しい風景が女子プロ界で見られる可能性が出てくるのである。
    勝負の行方によって米山が帰ってくるわけではないけれど、タッグ2冠王座を正常な状態に戻すためにも、中島&勝組には期待がかかる。ちなみに、ボリショイはベルトを流出させてしまった責任から、現在、禁酒をしているとのこと。ボリショイのためにも、中島&勝の活躍が望まれるのだ。これはJWPの営業にもかかわる問題らしい。
    さて、北千住大会ではほかにも動きがあった。第1試合ではラビット美兎に勝ったモーリーだが、メインで中島にフォール負け。悔しがるモーリーの姿に、“無差別級王者”春山香代子が怒りをぶつけた。「そんなに悔しいなら、その気持ちを試合中に出せよ!」。この発言をきっかけに、6・17キネマでのシングルマッチ、春山vsモーリーが決定。春山は「モーリーがガンガンくればチャンピオンとして受けて立つ。そうでなければぶっ潰す」とコメント。いまのところノンタイトルながら、モーリーにとってはその次の闘いをタイトルマッチにする絶好の機会。初防衛戦の相手がなかなか決まらない状況だけに、春山を振り向かせる大チャンスなのである。ザ☆WANTED!?のメンバーとなって以来、コミカル路線を突き進むモーリーではあるが、実はシングルでもこのところいい内容を見せている。それだけに、モーリーが無差別級王座に挑戦するのも、彼女の頑張りしだいでは十分にありなのだ。6・17キネマでの春山vsモーリーは、夏に向けてのJWPを占う重要な試合になるかもしれない。
    また、6・17キネマではジュニア2冠王座戦がおこなわれることになった。JWP北千住大会の後におこなわれたガッツワールドで、ミクロがラビット美兎に勝利。この勢いでミクロが挑戦をアピールし、協議の結果、ラビットの初防衛戦が決定したのだ。ミクロといえば小さいながらも腹黒い戦法で攻めてくる策略家。やっとのことで取り戻したジュニアのベルトがふたたび流出しかねない大ピンチといっていい。王者のラビットがどのようにミクロを攻略するのか。両者小さいながらも、見逃せないビッグカードだろう。
    なお、北千住大会ではヒザの負傷で欠場していた阿部幸江が復帰を宣言。予定通りにいけば、6・17キネマでカムバック戦が実現しそうだ。予想よりも早い回復だけに、これは朗報だ。                              (新井 宏)

    2012.4.22後楽園ホール 総評 

     JWP認定タッグ&デイリースポーツ認定女子タッグの2冠王座を防衛したまま、植松寿絵は引退することになった。盟友、輝優優の古巣でもあるJWPで、フリーになってから初めて巻いたのが、JWPのタッグ王座だった。その思い出のベルトを奪回し、王者のままリングを去る。まさに理想的なチャンピオンとして、植松★輝はJWP20年の歴史にその名を刻んだと言っていい。
     試合後、勝ち逃げ宣言かと思いきや、植松は空位となるタッグ王座の新チャンピオンを決める試合の実現を要請した。名乗りを上げたのは、遺恨深きラビット美兎。植松がマイクでしゃべっている最中にリングに上がり、花束を渡したのだが、ラビットは「私に(タッグチャンピオンは)まかせてよ」と、小さいながらも上から目線の大胆発言。3年以上流出していたジュニア王座を団体に取り戻した自信からか、こんどはタッグ王者になってやろうと申し出たのである。
     植松は「チャンピオンにはパートナーが必要なんだ」とひとりで出てきた怨敵(?)の挑戦を否定するが、その気になったラビットは米山香織との師弟コンビでのチャレンジを表明。一気に2冠の可能性が出てきたわけだ。
     しかし、このときの状況が米山には微妙だった。先におこなわれたさくらえみとのシングルマッチで米山は秒殺されてしまい、すでにタイ行きが決定していたのだ。いつ出発かは決まっていないものの、きわめて近い将来が予想されるだけに、ラビットの指名は現実になりそうもない。
     ここで飛び込んできたのが、米山を引き連れたさくらだった。さくらは米山と組んでの王座決定戦出場をアピール。タッグのベルトをもって、王者として「タイに行きタイ」のだと主張。王者として行くとなれば、格が違ってくると読んでいるのだろう。実際のところ、まだまだ手探りでほとんどなにもはじまっていない状況らしいが、ベルトはないよりもあったほうがいい。
     さらにここへ割って入ったのが、団体を率いるコマンド・ボリショイだ。米山がタイに行くのはルールだから仕方がない。それは認めるとしても、タッグ2冠王座までタイにもっていかれてはたまらない。実際に海を渡るとしたら、いつ戻ってくるかわからなくなってくる。それ以上に、現状ではタイで防衛戦が組まれる可能性は極めて低い。だからこそ、ボリショイはみずからさくらの狙いを阻止しようと名乗りを上げた。タッグリーグ戦にエントリーしたラビットとのピコラビを復活させ、タッグ王座の海外流出を食い止めなくてはならない、ということだ。 
     “米山流出”を認めてしまったJWP。タッグ2冠までも流出するかどうかは、米山のモチベーションにもかかっている。少なくとも、試合直後の米山は観光旅行ではないタイ行きに対し、困惑の気持ちを隠せないでいるようだった。「米ちゃんはもともとJWPにいなくなってた存在」とさくらが言っても、観ているほうはそう簡単に割り切れるものではないだろう。
     注目のタッグ2冠王座決定戦、米桜vsピコラビは、5・4板橋グリーンホール。米山の人生につづき、タッグのベルトが大きな転機を迎えようとしている。    (新井 宏)