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    2010.8.15アゼリア大正 総評 

     JWP今年の夏女は、コマンド・ボリショイとJWP認定無差別級王者の米山香織だった。今年はタッグトーナメントでおこなわれたのだが、シングルでの開催だった昨年も米山が優勝した。ということは2年連続で、米山が夏女の座を射止めたことになる。とくに今年の場合、米山は“米山革命”を実行中。それだけに、例年の夏女とは意味合いが違うのだ。
     革命を宣言した手前、米山は敗北が許されない状況に追い込まれた。何を主張しても、負けがつづくようなら説得力がゼロになるというもの。常識的に考えれば、相当なプレッシャーに襲われるだろう。トーナメント中で革命が立ち消えになる場合だってありえるのだ。しかし米山は、まずはしっかりと結果で答えを出した。単純に試合に勝つだけでタイトルには挑戦できないという問題をJWP所属選手に突きつけた格好だが、やはり優勝と敗退では大きく異なる。
     ではなぜ、米山はこのトーナメントで優勝できたのか。そこには、ボリショイの存在を忘れてはならない。“米山革命”のポイントとして、ボリショイは大きな役割を果たしている。米山一人での革命ならば、心もとないのも本当のところだ。しかし革命宣言と同時にボリショイという“同士”を得たのは大きい。ボリショイもJWPを変えなくてはといろいろ考えていた団体のまとめ役。そこへ訪れた革命宣言という絶好の機会。米山はサポート役に名乗りを上げたボリショイがいたからこそ、タッグトーナメントに平常心で臨めたのだろう。
    「(高橋奈苗から)ベルトを獲ったときにヘンな開き直りがあって、しかもボリショイさんがサポートしてくれるっていってくれて、またひとつヘンな開き直りができたんですね。だから、安心してトーナメントを闘えました。ふだんなら先輩に引っ張ってもらうところかもしれないけど、いまは自分がチャンピオンだし、ボリショイさんをリードしていけたらいいって気持ちでもいけました」(米山)
     ある意味でリラックスしたまま成し遂げた優勝だった。そのリング上で、米山は革命の第2弾実行を予告。アイスリボンのさくらえみを次の無差別級王座挑戦者に指名したのだ。
    他団体で、他団体選手との防衛活動を中心におこなっていこうとする現・無差別級チャンピオン。ではなぜ、米山はこの時期における米桜対決を望んだのだろうか。
    「日向さんに挑戦したときも春山さんに挑戦したときも、さくらさんはすごく自分を応援してくれたじゃないですか。そのときって、さくらさんは私がベルトを巻いたら一番先に挑戦するねって言ってくれてましたよね。そしていま、自分がこうして現実にチャンピオンになったんですよ。だからやっぱり、さくらさんとやりたいなって。今年の3月に米桜対決はやりましたけど、あのときはどちらもリーグ戦の消化試合で…。だけど今回はメインで。9月19日の新宿FACE大会で実現させたいです」
     しかしながら、さくらはその4日後にアイスリボンの後楽園大会を控えている。さくらは8・7板橋で仙女・里村明衣子とのシングルマッチを要求した。そちらに集中したいとの考えだけに、実現するかは微妙な段階だ。
     たとえ拒否されたとしても、米山はあきらめないつもりでいる。なぜなら米山は自称「史上もっともスリリングなチャンピオン」。いつどこでベルトを落とすかわからないだけに、なるべく早い段階で念願のさくら戦を実現させたいと思っているからだ。とはいうものの、状況が状況だけにどうなるか。米山革命を推進するためにも、さくら戦はなんとしても実現させなければならない。そしてもちろん、防衛も…。

    (新井 宏)           

    2010.8.7 8月7日(土)八王子学園都市センター・イベントホール 総評 

    “米山革命”の第1弾が、NEOの8・1後楽園大会で実行された。JWP所属選手の挑戦は簡単には受けず、基本的には他団体で他団体の選手を相手に防衛戦を重ねていく。その最初の相手に指名されたのが、NEOのタニー・マウスだった。
    タニーは、今年いっぱいでの引退がすでに決定している選手。おそらくこれが、最後のシングル王座挑戦となるだろう。「大好きな後輩」という米山だからこそ、もうないと思われたシングルのベルトに挑んだタニー。「いままでやってきたプライドをすべてぶつける」というタニーの決意を正面から受け止めた米山。しかしながら結果的にこの試合は、他団体での防衛活動の難しさを王者が痛感した試合になったのではないか。国歌斉唱もありJWPでの無差別級王座戦がそのまま他団体のリングに移しておこなわれたのだが、自団体ならメインのカードも、他団体ではセミ前という扱い。その中にあって、言ってみれば“敵地”での防衛戦。米山の考えが浸透しているとは必ずしも言えない状況の中で争われただけに、どことなく場違いな空気さえ流れていたように感じられた。そんな雰囲気で歯車が狂ったのか、試合はいまひとつ盛り上がりに欠け、フィニッシュの米―ZOUもどことなく勢いがなかった。勢いがなければ、正直、米―ZOUとは言えないだろう。この試合の難しさを象徴するようなフィニッシュだった。
    しかしながら、“米山革命”を遂行するには早い段階で問題点が噴出したのは逆にラッキーともいえる。革命はまだはじまったばかり。ベルトを失った時点(とくに他団体)でジ・エンドとなるリスクを背負ってはいるものの、まだまだ修正がきくからだ。革命を宣言した米山だからこそ、自分自身をさらにプロデュースし、みずからがこれまでおとなしかったJWPの選手の手本として前進していかなければならないのである。
     米山の革命宣言に対し、JWP所属選手たちはどう動くのか。どうやって高橋奈苗政権時代からの懸念だったJWP所属選手同士の無差別級戦を復活させるのか。この問題について、動きを見せた選手がいた。Leonである。この日のLeonは、第2試合で羽沙羅とシングルマッチを闘った。試合前には握手をかわさなかった両者だが、試合が終わるとLeonのほうから歩み寄った。タッグ結成のアピールである。これに羽沙羅が応じたことで、Leonとの結託が決定的となったのだ。
    「意外と粘られたし、いちばん引き込まれたのは彼女の目ですね。JWPジュニアのベルトを巻いていたときから注目はしてましたけど、もっともっとできると思う。いまほかに上がってるところがあまりないと思うんで、JWP中心でやってくれればおもしろいと思うんですよ。新しい相手で刺激もありました」
     そしてもちろん、米山からの革命宣言も羽沙羅との結託に大きな影響を及ぼしている。Leonの意思により、所属外選手と組んでやっていくことの表明。Leonなりの自己プロデュースがはじまったのだ。
     実はLeonこそ、JWPの中でもっとも動いてほしい選手のひとり。「技術はあるし実力もあるんだけど…」といった評価がいったいどれくらいつづいたことか。そこからの脱却ができずにズルズルときた印象がつよい。それだけに、こんどこそチャンスをつかんでもらいたい。
    「やっぱり、米山のことは(影響が)ありましたね。いままでとは違う自分をつくっていかないといけないと思うし、自分は誰かの下に付くのではなく、誰かを付けて自分を高めていきたい。いまは(タッグトーナメントで仙女の)花月と組んでいるけど、羽沙羅ともやっていきます。羽沙羅とはすぐにというわけにはいかないかもしれないので、まずはタッグトーナメントを優勝して、そこからアピールしていきたいです」
     羽沙羅が元・仙女ということを考えれば花月とのタッグはデリケートな問題を抱えているかもしれない。が、現段階でそこまで考える必要はないだろう。むしろいまはLeonがこれからどう変わっていくか、本当にブレイクできるのかが重要点。本来のパートナーである現・無差別級王者・米山の気持ちを揺らすことができるか、注目である。

    (新井 宏)

    2010.7.24 板橋グリーンホール 総評 

     今大会で「夏女決定タッグトーナメント」が開幕。7・18後楽園での「JWP所属選手の挑戦は受けない」と宣言した“米山革命”勃発直後にタッグながらもこれまでと変わらぬ方式ともいえるトーナメントというのもおかしな話だが、それだけ“米山革命”が突発的な出来事だったということなのだろう。
     このトーナメントにはKAZUKI&植松寿絵組のタッグ2冠王がそのままエントリーされ、純血チームは米山香織&コマンド・ボリショイ組のみとなった。それ以外の6チームはすべて所属選手と外部選手の組み合わせ。優勝者チームの所属選手がそのまま無差別級王座への挑戦権を得るわけではないとしても、優勝となればなんらかの形で発言する権利は得るだろう。それを阻止するのが米山&ボリショイの“改革派”ということか。革命を訴えた米山と、同調したボリショイ。このチームが優勝すれば、ほかの選手たちはなにもいえなくなってしまう。それだけに、春山香代子をはじめとする所属選手たちには打倒改革派が目のまえにあるターゲットだ。
     この日おこなわれた1回戦。米山&ボリショイ組が春山香代子&タニー・マウス組を破り1回戦を突破した。最後はボリショイが新技で防衛記録をもつ春山から直接ピンフォールを奪ってみせた。意外な技でとったのも、ボリショイの決意の表れと受け取っていい。
    ボリショイはさらに、アイスリボンでICE×60王者となったみなみ飛香に挑戦する決意を固めた。これも米山革命に同調する意識の証明。「高橋奈苗vsさくらえみ」をめぐる論争から、ボリショイはアイスリボンのベルトにも興味をもちはじめたという。15歳の新チャンピオンにキャリア18年の大ベテランが挑むということで話題にもなる。以前のJWPならありえなかった発想。米山が無差別級王座を他団体で防衛し、ボリショイがアイスリボンの王座をJWPに持ち込めば、それこそ痛快というものだ。これまでにはなかった風景が、JWPにどんどん現出することになるのだから。
    「ICE×60がどれだけ広がるかって考えたら、すごく楽しみになってきたんですよ。挑戦することの意外性でよしとするんじゃなくて、本気で獲りにいきますよ。それに対して飛香ちゃんがどんな反応をするのか想像がつかなくて、それも楽しみ。飛香ちゃんが私とのタイトルマッチに向けて練習する姿も見てみたいし、私は1試合にかける重みを見せていこうと思ってます」(ボリショイ)
     飛香戦へのモチベーションを聞いて、所属選手たちはなにを思うだろうか。春山、倉垣、Leon、蹴射斗、阿部、KAZUKIらの反応も、時期が時期だけに注目点の一つだ。
     さて、この日おこなわれたもうひとつの1回戦では、Leon&花月組が蹴射斗&川崎亜沙美組を破り準決勝に駒を進めた。Leonの回し蹴りからとはいえ、蹴射斗から直接3カウントを奪ったのは花月の丸め込みだった。これもこれまでのJWPではあまりなかったであろう風景である。JWPのリングだからJWPの選手が勝つという考えは、もはや通用しない。それを象徴するような花月の勝利。他団体からのゲストでも輝ける。米山革命は、所属外の選手にも影響を与えようとしているのかもしれない。

    (新井 宏)

    2010.7.18 後楽園ホール 総評 

    高橋奈苗に渡ったままのJWP認定無差別級王座を団体内に取り戻すため、米山香織は「髪の毛をかける」と言い出した。春山香代子との次期挑戦者決定戦を制し、“JWP最後の砦”として至宝奪回を託されたわけだが、トーナメントを勝ち抜いた米山に対し、奈苗は「もっともっと本気になれよ!」と言い放った。米山のほうはいつでも本気のつもりで挑戦権を勝ちとった。それでも、王者には彼女の本気度が伝わらない。それは単なる挑発でではなく、具体的な奈苗対策が見えなかったためにそう言ったのだろう。「すべてをかける」では抽象的すぎる。ならばと米山が意を決したのが、髪の毛をかけるという究極の試合形式。当然、王者のほうは髪の毛をかける必要がない。米山が負けた場合にのみ、敗者が髪の毛を切る、しかも丸坊主になるという過酷なルールである。
    米山はJWPのためであると同時に、自分自身を追い込むために高いリスクを背負った。4冠王になった経験こそあるものの、最高峰の無差別級王座にはどうしても届かなかった。これまでに3度挑戦し、いずれも敗北。最初のチャレンジは挑戦することじたいに意味があった。しかし後楽園のメインでおこなわれた日向あずみ戦と春山香代子戦で同じ失敗をしてしまったことには悔いが残る。チャレンジャーがチャンピオンと同じ目線で向き合っては、どうしたって米山のほうが不利になるだろう。これまでの勢いを持続できずに雰囲気に呑まれてしまった過去の挑戦。同じ轍を踏まないためにも、米山は逆転の発想で自分への注目が集まるように仕組んだのだ。
    結局はノンタイトルとなった“19時女子プロレス”での奈苗vsさくらえみが、米山を大きく刺激したことも大きく影響している。無観客の試合をあえて会場で見つめていた米山。対奈苗をイメージしていたのと同時に、これまでは見えてこなかった風景が米山には見えたという。おそらくこのときの情景から、彼女はJWP改革を強く意識したと思われる。「いままでと同じことをしていては取り残されてしまう」。ベルトを団体内に戻すため、自分自身のため、そして団体の慣習を変えようという思いが、打倒・奈苗を現実のものとした。だからこそ、奈苗からの3カウントを奪った直後、米山は団体内からの挑戦を拒否、他団体での防衛ロードをぶち上げたのだ。
    「無差別級のベルトが戻ってきたから、また団体内で熱い闘いをしていきましょう」では、同じことの繰り返し。奈苗は奈苗の考えで、無差別級王座をJWPの外に広めようとしていた。これは嫌がらせでもなんでもなく、奈苗なりの改革論だった。多くの人に知ってもらわなければ意味がない。だからこそ、他団体での所属外同士による地方会場での防衛戦や、19時女子プロレスという新たなる試みでの防衛戦をぶち上げた。これにより、無差別級王座の露出度は明らかに高まった。そして、奈苗vsさくらのノンタイトル戦の内容から、タイトルマッチのハードルが上がることになった。これを超えるために、米山は大きなプレッシャーをかけ、内容と結果で答えを出した。さらにそれだけでは終わらない。「JWPの挑戦は受けない」と外部での防衛戦を主張し、コマンド・ボリショイがその心意気に賛同した。反発する選手たちに対し、ボリショイは「挑戦したかったら自分たちで考えろ!」と突き放した。米山のいうように「新章」に突入したJWP。ここから先、どうなるのか。JWPの全選手が自己プロデュースを義務づけられた。
     それにしても、髪の毛をかけるとは、いままでのJWPの選手からは考えられなかった発想だ。これを思いついた時点から“米山革命”はスタートしていたといえるのだろう。7・19後楽園のメインイベントは、ここ数年ではなかったほどの熱狂の渦に包まれた。個人的には、現時点における2010年の女子プロベストバウト。結果的に、“公開討論会”や“19時女子プロレス”がこの試合内容を引き出した。大事なのは、ハッピーエンドの先に何を起こすか。今後の女子プロ界は、「仕掛け」がキーワードになっていくような気がする。
    (新井 宏)

    2010.7.4 東京キネマ倶楽部 総評 

     7・18後楽園ホールで高橋奈苗からJWP認定無差別級王座を団体に取り戻すのは誰なのか。今大会では、次期挑戦者を決めるトーナメントの決勝戦がおこなわれ、春山香代子と米山香織が激突した。勝ったほうが外部流出のベルト奪回を託されることになる闘いだ。
     王者・奈苗がステージから戦況を見つめるなか、最後に勝ったのは米山だった。米山は後楽園でのメインで3度目の無差別級王座挑戦になる。いずれもタイトルマッチに行き着くまでの勢いを活かすことができずにチャンスをものにできなかったが、次はどうか。これまでの挑戦とは意味合いが違うだけに、米山がどんな意識で臨むかが、最初のポイントになりそうだ。
     さて、敗れた春山だが、奈苗にタイトルを奪われた張本人として、彼女から奪回すべきとの責任感が大きかった。と同時に、2年間に渡り8度の防衛を記録したとの自信もある。だからこそ、このトーナメントであらためてタイトル奪回は春山に託すべきというイメージを植えつけておきたかった。
    「とくに対高橋奈苗で対策は立てていなかったです」と、春山はいう。この試合は奈苗からの奪回を意識し、対策を具体的に示したほうが勝つのではないかと予想した。が、春山にとっての対策とは、いままで通りにいくことだったという。「私はいつでも真っ向勝負なんで、それを崩すつもりはありません。真っ向勝負がイチバンの対策なんです。どこかを あらためて勝つんじゃなくて、3カウントをとられたぶん、正面からおもいっきり3カウントを取り返したいですね」
     ところが、春山の真っ向勝負を崩してしまったのが、皮肉なことにステージから視線を送る奈苗の存在だった。「ここでいけよってところで、どうしても高橋を見てしまうんです。高橋がいるのを意識しすぎました。もっと米山に集中するべきだった。米山と闘ってるんだけど、高橋とも闘っていたんで…」
     奈苗のことが気になり、真っ向勝負が崩れてしまったのだろう。集中力を欠いた春山は、米山の米―ZOUで3カウントを聞いた。その直前には力強いラリアットを放っていたこともあり、まだまだいけたような気もする。集中力の欠けた一瞬が命取りとなり、米―ZOUを食らってしまったのだ。
    「私自身、チャンスは遠のいてしまったけど、自分を見つめ直してもういちどベルトをとりにいきます」(春山)
     春山は今回、JWPのベルトをめぐる騒動に巻き込まれた。王者が希望する防衛ロードから他団体、ネットを通じての防衛戦の是非をめぐり、奈苗サイドと対立した。今大会の4日前(6・30)にはアイスリボン道場でおこなわれた“公開討論会”に参加。この討論会からトーナメント決勝の米山戦に至り、春山は「プロレスに対していま以上にいろいろ考えないといけない」と痛感したのだという。「討論会には行ってよかったなと思います。自分に足りないものはなにかって気づかされたし、そこからプロレスについてもっともっと考えないといけないんだって思いました」。プロレスとは、その人の考えがハッキリと表に出てくるスポーツでもある。それが“生き様”となり、観る者の心に響くからこそ感動が生まれる。「絶対勝ちます」だけでは、選手の考え方や生き様は、なにも伝わらないのだ。

    (新井 宏)

    2010.6.27 板橋グリーンホール 総評 

     JWP所属選手のみによるトーナメントがスタートした。試合まえには、NEOの札幌大会で高橋奈苗がナナラッカから宮崎有妃を破り、JWP認定無差別級王座2度目の防衛に成功したことが告げられた。このアナウンスにより、エントリーされた選手はよりいっそう気合が入ったに違いない。このトーナメントは、奈苗への挑戦者を決めることを前提にしたもの。優勝者が7・18後楽園で、無差別級王座の団体内奪回をめざすのだ。
     それだけに、今回のトーナメントはこれまでのものとはまったく意味合いが違ってくる。確かに、次期挑戦者決定トーナメントじたいは珍しいことではない。ただし今回の場合、JWP全体の危機という状況下。王者の奈苗は団体外での自由な防衛活動を宣言した。挑戦者はJWPの選手に限らず、リングもJWPとは限らない。それだけに、JWPの無差別級王座がJWPからどんどん離れていってしまう事態が懸念されている。それをストップさせるためには、一刻も早くJWP所属選手がベルトを団体内に戻さなくてはならない。だからといって誰もが挑戦できるほど軽いタイトルではないだろう。タイトルマッチにふさわしい選手がしかるべき場所、しかるべきときに挑戦するのが筋というものなのだ。
     1回戦と準決勝の結果により、前王者の春山香代子と米山香織が7・4キネマでの決勝進出を決めた。次回大会で春山が勝てば、タイトルマッチの再戦。米山が勝てば、リーグ戦の再戦。どちらもJWPサイドからすればリベンジマッチということもできる。なにしろ対奈苗に関しては、JWPが全滅状態。最後の砦と思われたコマンド・ボリショイでさえ、奈苗潰しには失敗した。
    とはいえ、ボリショイの敗戦により、ほかの選手たちがよりいっそうの危機感を募らせ、かえっていい方向に向かえば、それでいいと思う。そうなるかどうかを占うのが、7・4キネマでの決勝戦。おそらくこの試合では、王者・奈苗が次期挑戦者が誰になるのかを直接見届けるだろう。ここで奈苗をより強く意識するのは春山なのか、米山なのか。手の内を見せないのも作戦とはいえ、奈苗対策を具体的に示したほうが挑戦権をゲットできると予想する。奈苗対策イコール、これまでには見せなかった新しい闘い方ともなるだろう。過去と同じやり方で奈苗を倒せないことはすでにわかっている。6・13新宿でのタイトルマッチへの流れで、ボリショイは痛めているヒザを狙い、そのまえにはピコラッカ、ピコバトロスといったパクリ技で王者を挑発、肉体的にも精神的にも奈苗を追い込んでみせた。結果は出なくても、春山や米山には参考になったはず。いや、参考にしなくてはならない。
    JWPのピンチを救うにふさわしいのは、前王者の春山か、それとも勢いを取り戻した米山か。7・4キネマで、その答えが導き出される。

    (新井 宏)

    2010.6.13 新宿FACE 総評 

     コマンド・ボリショイは、JWPにとって最後の砦だった。ここでボリショイが高橋奈苗に敗れれば、事実上の全滅である。それだけに、ボリショイにかかる期待は大きかった。もちろん、本人も相当の覚悟で無差別級王座奪回に臨んだ。ここで敗れてしまえば、どうなるか…。
     実際、奈苗相手にここまで研究を重ねてきたのはボリショイだけだったように思う。リーグ戦で対戦した全選手、それを勝ち抜いた奈苗を迎え撃った春山香代子。そのすべてにおいて、奈苗への対策が万全だったかといえば疑問が残る。その点において、ボリショイはキッチリと対策を立ててきた。その対策が、自然と奈苗への挑発にもつながった。ピコラッカとピコバトロス。あえて新王者の技をパクり、しかも相手の神経を逆撫でするようなネーミングで、奈苗の心理に揺さぶりをかけた。それでいて、リング上では冷静に対応。弱点でもある左ヒザを徹底的に狙い、変幻自在のサブミッションで翻弄する。こういったときのボリショイは本当に強い。
     それでも、結果的には奈苗の牙城を切り崩すには至らなかった。奈苗には奈苗の野望がある。団体を守ろうとするボリショイの思いと、奈苗のもくろみ。気持ちの面では互角とみたが、紙一重の差で奈苗に凱歌が上がることになった。
     ということは、これで本当にJWPは全滅したのか。確かに、事実上全員を倒したのだから、JWPは完全に制圧されたといって間違いではない。それでも、ボリショイの敗北により、かえって団体の結束力が増すような気がしてならないのだ。試合後のリング上では米山香織、倉垣翼をはじめとして、所属選手たちがボリショイを囲むようにして奈苗と対峙した。奈苗が宣言したように、他団体での防衛戦は必至だろう。それでも、このベルトをとり戻すのはJWPの所属選手でなければならない。ボリショイの闘いぶりを目の当たりにして、なにも感じなければウソになる。選手一人ひとりが、もっともっと奈苗を意識した闘いをしていかなければ、王座奪回はさらに困難になってくる。
     王座の価値を落とさない防衛戦をしてほしいという願いを抱きながらも、他団体での防衛戦は認めざるを得ないとボリショイはいう。JWPでのタイトル戦は、7・18後楽園が決定的。そのとき奈苗が王者として戻ってくることを信じ、JWPでは次期挑戦者決定戦を所属選手によるワンデートーナメントで決めたいという。そこにボリショイがエントリーされるのか、現時点では試合が終わったばかりで考えられないというものの、もういちど出てきてほしいとの声が多ければ、チャレンジする可能性もあるとのことだ。いずれにしても、さらに奈苗を意識してのトーナメントになるだろう。いや、そうならなければならないし、その思いがもっとも強い選手こそトーナメントを制して7・18後楽園のメインに上がるべき。自分の持つすべてをぶつけるよりも、さらなる工夫が至宝奪還のカギを握っている。
    ボリショイはタイトルマッチに臨むにあたり、無差別級王座の歴史を引き合いに出した。が、ある意味で、高橋奈苗こそJWP史上もっとも倒し甲斐のある相手ではないか。奈苗はシングル戦を希望しているNEOの宮崎有妃とのタイトルマッチをアピールした。それが実現するかはNEOしだいだが、7・18後楽園については、「JWPの選手が本気で私を倒したいと上がってくるならやってもいいと思います」とコメントしている。トーナメント1回戦から奈苗の気持ちをひきつけるような試合を、出場選手には期待したい。来るべき次期挑戦者決定トーナメントは、いままでのトーナメントとは意味が違う。
    (新井 宏)

    2010.5.16 夜 東京キネマ倶楽部 総評 

    この日は東京キネマ倶楽部における二部構成。昼の部は通常のJWPで、パッションレッドとの対抗戦とタッグ2冠をめぐる闘いが柱だった。夜の部は一転して、Leonの10周年を祝うアニバーサリー興行。米山とLeonのプロデュースにより、Leonの記念試合が中心になっていた。
     第1試合、米山の相手は闘牛・空だった。プロデューサー自身がメインではなく、あえてオープニングマッチに登場。しかも相手をXとしながら「発表するほどのものでもない」としていただけに、どうなることかと思われたが、米山戦を終えた牛のほうが動いた。牛はAtoZ時代のLeonの後輩に当たる。5月いっぱいでの引退も発表している牛だけに、これを逃したらおそらくLeonと対戦する機会はなくなるだろう。
     急きょおこなわれた牛とLeonのシングルマッチ。5分間という短い時間設定のなか、さらに短い1分台で決着はついたものの、両者にとってケジメのリングになったことは間違いない。なんといっても、この日の主役はLeonである。発表済みのカードだけではすまないことはある意味で予想の範疇だったかもしれない。
     ハプニングは、メインの3人がけのあとにも訪れる。アルシオン時代の同期である山縣優、M‘s Style時代の後輩の栗原あゆみ、そして、JWPに所属する限りどうして超えなくてはならない春山香代子。これらの闘いをしのいだ後、米山がリングに上がりさらなる延長戦をアピールしたのだ。
    結局、Leonは自己最高となる1日5試合を敢行。昼の部も含めれば、6試合を闘ったことになる。それでも、大会終了後のLeonはそれほど疲れた様子もなく、質問に答えてくれた。このスタミナこそ、Leonの持ち味。だからこそ、体力的にはいつでも無差別級王座に挑戦、あるいは奪取できる位置にいると思うのだ。
    しかしながら、それがすぐに実現できるかと問われれば即答はできないだろう。現実として、高橋奈苗への次期挑戦者はコマンド・ボリショイに決まっている。どちらが勝つにしても、その次の挑戦者にLeonが挙がるかはまったくの未知数。かつては後楽園ホールで年間ベストバウト級のタイトル戦をやってのけたLeonだが、ベルトを獲得した場合にチャンピオンらしさを誇示できるかとなると、不安も残る。こればかりはなってみないとわからないことながら、春山が日向あずみを破ったとき以上に想像しづらいと思うのだ。Leonがベルトを巻く姿を多くの人がイメージできるようになったとき、無差別級王者Leonが現実味を帯びてくるだろう。11年目を迎えたいま、Leonは大きな課題を抱えている。それがわかっているからこその、アジャ・コング&AKINO組とのタッグマッチ(6・13新宿)。この試合でJWPの王者となるべき資質を感じさせるか、一種の試金石になりそうだ。

    (新井 宏)

    2010.5.16 昼 東京キネマ倶楽部 総評 

     阿部幸江のイライラは募るばかりなのである。タッグ2冠に輝く植松寿絵&KAZUKI組を陥落させるために阿部が送り込んだ刺客は、蹴射斗&LeonのJWP純血チームだった。確かに、阿部のいうとおり「強いチーム」ではある。個々の実力はもちろん、両者ともアニバーサリーイヤーで結果を残したいとモチベーションも高い。それでも、植松のいうように挑戦者としては急造であり、メンバーとして「いたってふつう」なのも事実。運を実力に変えつつある王者チームからすれば、それほどピンチではなかったのかもしれない。
     その通り、王者組はますます連係に磨きをかける形で2度目の防衛に成功した。もはや完全に、KAZUKIの気持ちは植松に移行している。阿部からすればここでベルトを落としてもらい、6・13新宿でザ★WANTED!?復活、蹴射斗&Leon組に挑戦するつもりでいた。JWP純血タッグにベルトを持ってもらったほうが挑戦する状況を作りやすいだろう。そこまでのアイデアはよかったのだが…。
    植松はいう。「阿部ちゃんが悔しいのはわかるけど、もうマイクなんかグダグダでしょ。いつまでもKAZUKI、KAZUKIっていったってねえ。(正パートナーの)輝なんか、別に気にしてないよ。他団体ではふつうにタッグ組むからね。阿部ちゃんだけだよ、カリカリしてんの(笑)」
    植松につられるように、KAZUKIも未練タラタラの阿部に対して注文をつけた。
    「そろそろKAZUKI離れしてください」
    ある意味、阿部にとっては衝撃的な一言だろう。絶縁宣言ともとれなくはないこの言葉。よほど強い相手を連れてこなければ、植松&KAZUKI組の絆は深まり、チームワークは増していくばかり。当初、挑戦者として予想されていたべネッサ・ザ・マウンテンはカナダに帰国した。それだけに、王者組は「どうせ次もふつうの挑戦者でしょ」と余裕の構えを見せまくっている。
    「15周年(蹴射斗)、10周年(Leon)だから華は持たせますけど、ベルトは持たせませんよ」とKAZUKI。のってる女はさすがにうまいことをいう。

    (新井 宏)

    2010.5.2 板橋グリーンホール 総評 

     今大会のメインは春山&蹴射斗組vs倉垣&Leon組の純血タッグマッチ。JWPとしては試合そのもので魅せようとする、よくあるピュアな光景である。しかし、今回ばかりはかなり様子が違っていた。そこに、JWP無差別級王者の姿はない。メインはおろか、ほかのカードにもチャンピオンはいなかった。ベルトを保持するレスラーは、板橋グリーンホールのステージ上にいた。
     4・18後楽園で春山を破りベルトを巻いた奈苗は、「チャンピオン様」と書かれた“指定席”に陣取り、全試合を観戦。ステージ上から文字通りの高みの見物をしゃれ込んでいた。
    「自分からしたら、チャンピオンになったら全部出なくちゃいけないのって感じですね。自分がいなくても、それぞれがテーマをぶつけて、個人としてのヤル気や目指すものをもっと見せてほしい。この発言にムカつくヤツもいると思うけど、アタシはしばらく上から見させてもらいますよ」
     メインではとくに前王者の春山と、春山を強く意識する倉垣が奈苗に対しての敵意を剥き出しにしていた。春山は入場時からステージ上をにらみつけ、倉垣は試合中に奈苗を挑発。蹴射斗やLeonにも、挑戦の権利はあるだろう。この試合の勝者が直接、王者に向けてアピールするのではないか。それが自然の流れに思えた。
     ところが、試合後に意外な挑戦者が名乗りを上げる。JWPのリーダーともいえるコマンド・ボリショイである。ボリショイはOCCリーグ戦に出場せず、タッグトーナメントのほうに参戦していた。シングル戦線からは退いていたボリショイが、JWPの危機に立ち上がった形である。
     奈苗によると、「このベルトに外の空気を吸わせてあげたい」のだという。WAVEで桜花由美と闘うのもいいし、アイスリボンの真琴とやるのもおもしろいという。さらには「仙台にもいくんですよ」と、仙女での防衛戦まで示唆。奈苗が好きなようにタイトルマッチを組めば、JWPに戻ってくることはおろか、JWP所属選手が挑戦できない事態も考えられる。JWPジュニア王座が流出状態になっているのとは、わけが違うのだ。
     ではなぜ、ボリショイが奈苗との対戦を決意したのか。試合後のコメントはこうだ。
    「出場のオファーを断られたとき、なんて都合のいいこといってるんだろうって思ったんです。ヒザが痛いからとか、明日試合だからとか、チャンピオンとしての自覚が…。このベルトがJWPの象徴だってことをわかってないですよ。JWPの試合に出ない人間が外で防衛戦をやるとか、なにをいってるんですかね。JWPの選手がみんな頑張ってるのがわかるから、サポートじゃなくここは自分が出ていかないといけないって思いました。体力的にどうとかって問題じゃない。これはJWPの危機なんですよ。アタシが全責任を負います。いまやらなきゃダメだと思う」
     この決意にほかの選手も納得。6・13新宿FACEでのタイトルマッチ、奈苗vsボリショイが正式決定した。この試合を決定付けたのはボリショイのアピールだけではないだろう。実際、ボリショイは試合で奈苗へのアピールを狙っていた。ピコラッカと名付けられた新技は、奈苗のナナラッカと瓜二つ。もちろん、奈苗に見せつけるために繰り出したフィニッシュである。
    「いまのチャンピオンにどう印象付けるかって考えたんです。アイツがふざけたことばかりいってるから、本人の目のまえで披露してやりました。王者の権利とかいってるけど、無差別はJWPのベルトなんですよ!」
     では、ボリショイのアピールに対し奈苗はどう思っているのか。大会終了後にあらためて聞いてみた。
    「選手のみなさんは素晴らしい試合してると思いますよ。だけど、JWPは小さいというのが率直の印象。今日の試合を見て、あらためて外で防衛戦をやりたいって思いました。どんなに素晴らしいことしてても、新しい風を吹かせないと外には伝わらないし変えられない。チャンピオンになるために(リーグ戦で)全員に勝ってチャンピオンにも勝ったんだから、しっかり意見をいわせてもらいますよ。JWPのベルトがどうとか歴史がどうとか、わかりますよ。でもそのこだわりがJWPをつまらなくしてる」
     奈苗がボリショイを倒せば、団体に対してトドメを刺すことになるだろう。それだけに、6・13新宿は4・18後楽園同様、あるいはそれ以上に大事な闘いになる。奈苗は女子プロレス全体を見据えてJWPの無差別級王者にたどり着いた。一方、JWPからすれば豊田真奈美以来の他団体王者という非常事態。奈苗とボリショイ、どちらの考えが上回るのか。闘いは、すでにはじまっている。

    (新井 宏)

    2010.4.18 後楽園ホール 総評 

     所属内はもちろん、他団体からの挑戦を退け積み上げてきた8度の防衛記録。春山香代子は2年間に渡り、無差別級王者として君臨してきた。JWPの記録を塗り替えてきた王者なのだが、なぜか絶対王者的な呼ばれ方をするには至っていない。そこが春山の課題だった。それだけに、最強の挑戦者ともいえる高橋奈苗とのタイトルマッチは、2年間の集大成的意味合いがあった。この試合の内容如何では、春山に対するイメージがガラッと変わる可能性がある。
    「無差別のベルトをかけてきたなかで、いちばん負けたくない相手でした」と、春山はいう。挑戦者の高橋奈苗は、オープンクラスチャレンジリーグ戦を優勝してのタイトル挑戦。しかもJWPの選手全員を倒して勝ち上がってきた。春山はJWPにとって最後の砦。ここで敗れれば、JWPすべてを乗っ取られたも同然、ということになりかねない。
     しかしながら試合は、奈苗が勝利し春山が王座陥落という結果に終わった。結果だけとらえれば、春山の、JWPの惨敗である。とはいえ、本当にそうだろうか。試合後の春山はマイクをとり新王者と堂々渡り合った。これまでのJWPの選手ならありえなかった行動である。
    「テメエから絶対にとり戻す。プレッシャーに負けんじゃねえぞ!」
     振り返ってみれば、奈苗とのタイトルマッチが決まった瞬間から、春山はかつての春山ではなくなっていた。「威勢がいい」(奈苗)のはいつものこと。これまではその威勢のよさが、声の大きさだけだったりする。それが今回、中身もしっかり伴ったように見受けられたのだ。リーグ戦の決勝戦後に向かい合ったときと、その後の記者会見。奈苗と対等、あるいはそれ以上にマイクで渡り合った春山。彼女を含め、他団体選手との舌戦では完敗ばかりだったJWPにあって、春山がはじめて、しかもあの奈苗とやりあったのだ。
     しかも、負けたとはいえタイトルマッチ後も春山のテンションが下がることはなかった。この姿こそ、春山、JWPの選手に求められていたものである。そう考えれば、春山の王座陥落に悲観する要素はなにもない。この敗北がかえって彼女を大きくするきっかけになると思えるし、2年間の成果が表れた闘いにもなっただろう。こんど挑戦するときは、王者時代よりもさらに大きな存在となって臨んでもらいたい。
     試合後にはLeonが奈苗に突っかけ、観客からは倉垣がいくべきとの声も上がった。前王者の春山も含め、この3人が次期挑戦者候補か。春山は春山で、“前王者”を堂々と名乗るべきである。ここでなにもしなかったらいままでの繰り返しになってしまう。8度の防衛記録が破られることは当分ないのだから、胸を張って前王者をアピールすればいい。ベルトは奈苗に預けただけ、くらいの気持ちで構えるべき。今回の奈苗戦は、春山香代子がもっとも王者らしく振る舞った闘いだった。
    (新井 宏)

    2010.4.4 東京キネマ倶楽部 総評 

     OCCリーグ戦を制したのは、エネミーブロックから勝ち上がってきた高橋奈苗だった。奈苗は開幕戦で倉垣翼と時間切れで引き分けた以外は、JWP所属選手に負けなしで決勝に進出。決着をつけなければならなかった倉垣を最終的にフォールし、パーフェクトといっていい結果で春山香代子への挑戦権を勝ちとったのだ。
    この瞬間、JWPマットはパッションカラーに塗りたくられた状態だった。しかしながら、ここで抵抗したのが無差別級王者の春山香代子。リングに上がった春山は、奈苗と互角の視殺戦を展開してみせた。このときの迫力こそ、JWPに足りないものであり、JWPの所属選手にほしかったものである。
     このリーグ戦全体を通して、春山はJWPサイドがエネミーブロックに押されているような気がしてならなかった。結果や内容ではなく、気持ちの段階でエネミーに劣っていた。そんな印象をもっていたのは春山だけではないだろう。悪い意味での優等生ぶりが、そんな印象をもたれてしまった原因である。そこを打破しようと気合を入れて奈苗に立ち向かったのが、この日の試合後の春山だった。これぞ、団体トップとしての、チャンピオンとしてのつとめだと春山は考えたのだ。
    とはいえ、春山といえどほかの選手たちとおなじような印象が大きい。リーグ戦を客観的に見てきたからこそ、足りない点に気づいたのだろう。それだけに、4・18後楽園でのJWP認定無差別級タイトルマッチには大きな期待がかかる。春山はこれまで、JWPの選手はもちろん、他団体のあらゆるタイプと防衛戦をこなしてきた。チャンピオンになる前から、春山は対他団体で結果を残してきた選手でもある。それでも絶対王者としての印象といえば防衛回数の多さにもかかわらず、まだまだこれから。ここで奈苗を撃破すれば、外部からの春山への評価はガラッと変わる可能性がある。
    「リーグ戦は、歯がゆい思いで見てました。誰とはいわないけど、私が出てってやってやりたいと思うような試合もありましたね。これはみんなにとってチャンスなんだよ。それを自覚してるのかどうか、伝わってこないものもありました」
     通常の春山からすれば、考えられないような辛口発言である。それだけ危機感を感じているということか。こんどは、自分の力でチャンピオンとしての自覚を見せる番。しかも奈苗はすべてをぶつけるのに絶好の相手。4・18後楽園が、俄然見逃せなくなってきた!

    (新井 宏)

    2010.3.12 板橋グリーンホール 総評 

     JWP認定無差別級王者・春山香代子への挑戦者を決めるOCCリーグ戦もいよいよ大詰め。今大会では3つの公式戦がおこなわれた。

     米山香織vsさくらえみは、米山が米―ZOUで前タッグ2冠王者対決を制し、決勝進出に向けて首の皮一枚つなぐことに成功した。自力での決勝進出こそ無理ながら、同点によるJWPブロックでの決勝進出者決定戦の可能性は若干ながら残されている格好だ。

     蹴射斗vsパッション・ホッティーは、こちらも元パートナー対決。堀田祐美子がJWPに乗り込んできたときに「熱い試合がしたい」と堀田サイドへ真っ先についたのが蹴射斗だった。蹴射斗はそのころの恩返しとばかりにあえて場外戦を仕掛けてみせた。ところが、この試合での暴走でパッションレッド・レッド解雇との話も出ていただけに、ホッティーは冷静に対処。蹴射斗を完璧なピラミッドドライバーで下した末に、観客から「やればできる」の声を引き出した。どちらも優勝戦線から離れてしまっていたのだが、シングルマッチとして見応えのある内容だったことは間違いない。高橋奈苗戦、ホッティー戦は、4・18後楽園における井上京子とのシングルマッチにつづく道でもある。

     そして、メインでおこなわれたLeonvs輝優優の公式戦。輝はリーグ戦を3連勝で、エネミーブロックからは奈苗との2人に絞られたといっていい。一方のLeonも好調な滑り出しで2連勝を飾っていたのだが、WAVEに乗り込んでの桜花由美戦でまさかの敗北。そのショックを引きずっての闘いが不安視されていた。
    実際、桜花に負けたのは相当なショックだったようだ。「桜花には勝って当たり前だと思ってました。油断してたわけじゃないけど…。それだけに悔しいですね」とLeon。この日の相手は連勝中の輝とあって、よけいにプレッシャーがのしかかった。

     しかしながら、以前おこなわれたリーグ戦でもLeonは輝に勝っている。シングルでの勝利はその1回にもかかわらず、リーグ戦という舞台での勝利がLeonの不安をかなりかき消したようでもある。最後は輝のヨーロピアンクラッチを読んでの4の字式ジャックナイフ。この技はヨーロピアンクラッチの切り返しには最適。しかもそのまま3カウントを奪える技でもある。フィニッシュレパートリーの多いLeonだが、打倒・輝にもっとも適した技でのフィニッシュだったといえるだろう。

     この結果により、Leonは脱落の危機から優勝戦線にしっかり残ってみせた。JWPブロックでは倉垣翼、米山、Leonの3人に可能性がある。米山が全日程を終了し、3勝2敗の6点。倉垣が1試合を残し2勝0敗2引き分けの6点。そしてLeonが、1試合を残したうえで3勝2敗の6点となった。3・22大阪は、公式戦の最終日。倉垣は連勝の止まった輝、Leonはいまだ負けなしでエネミーブロックのトップをいく奈苗が相手だ。JWP軍で2人とも負ければ、倉垣vs米山vsLeonが同点で三つ巴戦にもつれ込む。倉垣かLeonのどちらか多くの得点をあげたほうが、JWPブロックの代表として、4・4キネマでの決勝戦に進出する。
     「桜花に負けたのはショックだったけど、輝に勝てて自信がまた戻ってきました。向こう(奈苗)はまだリーグ戦で負けてないみたいなので、シングルははじめてですけど自分が初黒星をつけてやりますよ。同点での進出者決定戦は考えてないですね。いまは高橋奈苗しか見えていないです。3月15日で自分はデビュー10周年になるんですよ。10周年記念として、後楽園(4・18)でタイトルマッチをやりたいんです」
     10周年というアニバーサリーが大きなモチベーションになっているLeon。過去に2度ほど無差別級王座に挑んでいるものの、結果を出せないまま。ふだんから試合内容には定評があるものの、シングルでのタイトル戦線となるとなかなか届かない現実がある。だからこそ、最大のモチベーションを武器に無差別級王座の夢を実現させたい。まずは大阪での奈苗戦だが、奈苗にとっても大一番。奈苗がLeonに勝てば9点となり、その時点で決勝進出が決まる。もし奈苗が負けて輝が倉垣に勝てば、輝が8点で進出となる。いずれにしても、大阪で公式戦に出場する選手には決勝進出がかかる大一番。いったい誰が、4・4キネマでの決勝戦に進出するか!?

                      (新井宏)

    2010.3.7 東京キネマ倶楽部 総評 

     リーグ戦では3連敗で優勝の望みが消えた蹴射斗。しかし、内容では高橋奈苗戦を筆頭に高評価を獲得している。この日は4試合目の公式戦で、相手はさくらえみ。昨年の10・4後楽園で再会のシングルマッチをおこなっているが、このときは蹴射斗のほうが敗れている。さくらは昨年の女子プロ大賞受賞者。そのさくらへのリベンジマッチ。蹴射斗は変型シュバインで3カウントを奪い、リーグ戦の連敗をストップさせるとともに、さくらへのリベンジにも成功した。そして蹴射斗は、マイクをとった。4・18後楽園に向けてのアピールだった。
    「優勝戦線から外れたのはわかってるけど、今日はどうしても勝ちたかった。4月の後楽園で15周年の試合をさせていただくことになりました。相手は、かねてから対戦を希望していた井上京子選手です」
     蹴射斗にとって京子とは、あこがれの存在であるという。青野敬子時代に何度か当たってはいるものの、蹴射斗になってからはもちろんはじめて。京子との対戦に弾みをつけるためにも、さくらにはどうしても勝たなくてはならなかった。リーグ戦で初白星をあげて、さくらに前回のリベンジを果たすのはもちろん、さくらは昨年大晦日の後楽園(NEO)で京子から3カウントを奪っているからだ。しかしながら、それを強く意識したのか聞いてみると、蹴射斗からは意外な答えが返ってきた。
    「そういう意識はなかったですね。さくらが京子さんに持っている気持ちと、私が京子さんに抱く気持ちはまったく別物だと思うので。さくらが京子さんに勝ったってことは、この試合が決まった後から知ったんですよ。運命的なものがあるのかもしれないけど、自分には別の感覚なんですよね」
     蹴射斗にとって京子戦はあくまでもプライベートな闘い。同時に、シングル志向の彼女がJWPで積み重ねたものを披露する場でもある。たとえ負けが重なっても、蹴射斗はシングルのリーグ戦を内容あるものにしようと闘ってきた。そんな気持ちで闘った奈苗戦が分岐点になった。現実に負けが先行したとはいえ、蹴射斗へのイメージは確実にアップした。
    「個人的優勝はなくなったけど、1点でも多くエネミー軍より上回りたいですよね。だから自分の優勝とは関係なくても勝っておきたい。このリーグ戦でないとあたれない選手もいたし、形には残せなかったけど、リーグ戦に出てよかったと思いますね」
     残るリーグ戦は、3・12板橋でのパッション・ホッティー戦。優勝争いの点ではどちらにも望みはなくなったものの、蹴射斗にはひじょうに意味のあるカードでもある。
    「堀田さんがJWPに来たとき、熱い闘いがしたいと一番先に組んだのが私ですから。堀田さんから自分を踏み台にしろといわれたのを忘れていません。いまはパッション・ホッティーだけど、堀田時代に吸収した熱い気持ちをぶつけていこうと思います」
     この日のさくら、3・12板橋での堀田、それにつづく4・13後楽園での京子。蹴射斗の15周年シリーズはまだまだつづく。
                  (新井 宏)

    2010.2.21 東京キネマ倶楽部 総評 

     今大会ではOCCリーグの公式戦2試合がおこなわれた。しかしながら、両試合とも優勝争いには直接関係しないような組み合わせにもなってしまっていた。リーグ戦が中盤を迎えたところで、公式戦を闘う蹴射斗、桜花由美、パッション・ホッティーが2連敗中、もうひとりの阿部が1勝2敗。阿部に関してはあと2試合を残しており、ホッティーと桜花に勝てば、倉垣とLeonの得点状況しだいでなんとか優勝戦線に踏みとどまることが可能になる。他力本願ながら、JWP入団以来最大のチャンスをものにするためにも、この日のホッティー戦では2得点が絶対条件だった。
     序盤にパッション鉢巻きを奪いとられたホッティー。これにより、阿部が俄然有利と思われた。ここから一気にたたみかければ、形勢は阿部に傾くはず。ところが、むしろここからホッティーが息を吹き返すことになろうとは。パッションのメンバー不在をいいことに(?)、鉢巻きなしのホッティーが暴走ファイトを解禁したのだ。場外で阿部をいたぶり、リング内においても余裕の攻めで相手を寄せつけない。前回の川崎大会で高橋奈苗を追い込んだ阿部の姿はそこにはなかった。奈苗や夏樹がいたとしたら、ホッティーは暴走ファイトを躊躇したのだろうか。そう考えると、今大会でこのカードが組まれたのが阿部には不運だったとしかいいようがない…。
     場内からは「堀田じゃないか!」の声も飛んだ。試合後には倉垣や春山がホッティーめがけて突進。JWP軍の前に立ちはだかっていたのは、追放したはずのホッティー、いや、堀田祐美子そのものだった。
     この結果により、阿部の決勝進出は完全に消えた。残る桜花戦に勝ったとしても4点でリーグ戦を終了することになる。倉垣が残り2戦で5点。Leonが残り3戦で無失点の4点。米山も残り2戦で4点だから、JWPサイドからの進出者はこの3人に絞られた。
     それにしてもメインはリーグ戦ではなく、さらにはJWPvsパッションレッドまで遡り、JWPvs“暴走”堀田の図式が蘇ったようだった。これでは、やっとのことでJWPから追放した努力が水泡に帰す。ホッティーの暴走は奈苗不在の今大会限定なのか、それとも…。
     奈苗がこの話を聞いたらどんなリアクションをみせるのか。なにかと話題のパッションレッドにもうひとつの火種? 3・7キネマではホッティーが倉垣と公式戦。同大会では奈苗も参戦し、米山と公式戦で激突する。優勝争いの山場であると同時に、JWPとパッションレッド、ホッティー(堀田)をめぐる対立の分岐点にもなりそうだ。 
    (新井 宏)

    2010.2.14 ラゾーナ川崎プラザソル 総評 

     パッション・レッドの高橋奈苗とパッション・ホッティー。阿部幸江にとっては因縁の相手である。今回のOCCリーグ戦では、両者にリベンジへのチャンスがある。パッション・レッドの参戦が阿部にとってのチャンスなら、春山香代子への挑戦者を決めるこのリーグ戦も、JWP入団以来最大のチャンス到来といっていい。
     実際、彼女自身もそうとらえている。「むかしから、リーグ戦とかなると不思議と縁がないんです。ケガによる欠場を繰り返したりして。調子に乗ってくるとケガして欠場っていう繰り返しで…。それがようやく昨年、無欠場で、自分的には後半、だんだん調子に乗ってきました」
     奈苗やホッティーという「ムカつく」相手の存在もかえって好影響を与えたのであろう。注目度の面でも、阿部に風が吹いているように感じられる。ここで結果を残せば、予感が実感に変わるのだが…。
     この日の阿部は、奈苗との公式戦が組まれていた。12月の後楽園では、ランバージャックマッチで敗れている。メインに組まれたのはリベンジへの期待が込められていたからに違いない。リーグ戦以上にリベンジ戦との意味合いが大きかったのではないか。
    「やっぱりこないだの借りを返さないとっていう思いはありました。ファンの人たちからもそういわれてたし。ただ、試合が近づくにつれて、リベンジよりも無差別に対する気持ちの方が高まっていったんです。春山香代子の存在感というものがだんだん上がっていきましたね」
     とはいえ、リベンジを果たせば当然、春山の無差別級王座にも近づいていく。阿部にとって、このリーグ戦は一石二鳥のおいしい舞台なのである。
     試合は、阿部の先制攻撃でスタートした。すぐに場外戦でやり返されたが、心が折れることはない。何度も何度も3カウント寸前のシーンを現出させ、阿部の勝利を予感させるところまでもっていった。それでも、奈苗にとっても負けられない一戦だった。なにしろ輝優優が3連勝でトップを独走している。奈苗は開幕戦の倉垣戦で時間切れのドロー。輝が無傷だけに、もう1敗もできない状態。だからこそ、奈苗からすれば阿部にかまっているわけにはいかない心境だった。
     そこにつけ入る隙があったかもしれないが、最終的には奈苗がラリアットで阿部を捕獲してみせた。阿部は2敗となり、崖っぷちに追い込まれた。自力での決勝戦進出はかなり厳しい状況だ。
    「残り2戦、絶対に勝ってなんとか望みをつなげたい。と同時に結果だけじゃなく、参加メンバーの中で一番印象に残る試合をしていきたいです。内容的にももっとも印象に残る闘いをしていきたい」
     リーグ戦に縁のなかった阿部だけに、まずは完走が最低条件。キャリアからしてもそういう次元でないのはわかっているが、完走したうえで大きな印象を残せば、次回のタイトルマッチ以降で再度チャンスが訪れる可能性もあるだろう。リベンジよりも無差別級のベルトへ意識が向いているのは、長期的展望がある証拠でもある。欠場を繰り返してきた彼女にとって、今年は全戦出場がさしあたっての目標か。そうすれば、自然とチャンスが次々に巡ってくるはずだ。
    (新井 宏)

    2010.1.31 北千住シアター1010 夜の部 総評 

    蹴射斗vs高橋奈苗の公式戦。この試合は華名の脱退による一連のパッションレッド問題に、奈苗が奈苗なりに出した解答だったように思う。相手が打撃中心の蹴射斗ということもあったのだろうが、奈苗は極めて打撃色の濃いシバキ合いをやってのけた。試合中には口から流血。蹴射斗の領域に入りながらも奈苗本来の闘いも貫いた。
    実際、試合まえには奈苗に紙テープが飛ぶこともなく、ヒールではないけれどそれほど歓迎ムードでもなかった。セミに登場したさくらえみへの声援とくらべれば、そのことは顕著だった。しかしながら、試合が進んでいくうちに場内は白熱。結果的には最高の盛り上がりをみせ、これほどのケイトコールは聞いたことがないのではないかと感じてしまうほどだった。そんなケイトコールを引き出したのも奈苗の技量ということになるのだろう。相手の力を存分に引き出して勝つ。この日の奈苗はメインイベンターとして理想的な勝ち方を見せつけたようだった。
    「今日、再確認しましたよ。女のシバキ合いをこれからも見せていきます。体も心も磨いて、個人としてもパッションレッドとしても上がっていく。こんなときに、しもうま和美がパッションレッドに入ってくれました。その気持ちだけでもうれしい。高橋奈苗でもほかのメンバーでも、なんでも利用してくれていいんですよ」
     前日、アイスリボンの道場マッチで、この日も参戦したしもうま和美がパッションレッド入りを直訴し、勢いで認められた。ユニットとしての若干の沈滞ムードを払拭し臨んだのが、この日の蹴射斗戦だった。その蹴射斗との闘いで、ある意味、華名に見せつけるようなバチバチの展開。吹っ切った奈苗は、リーグ戦優勝に向けてあらためて気合を入れなおした。この試合で奈苗はようやく初勝利をマーク。倉垣翼戦での“1失点”は変えられないが、残り全勝でいけば決勝戦への道が開けてくる。
     どうやら奈苗にとって、輝優優がエネミーサイドのライバルになりそうだ。輝は今大会で米山香織を秒殺で下し、無傷の3連勝をマークした。輝は倉垣とLeonの公式戦を残している。一方の奈苗は1勝0敗1分で、残りは阿部幸江、米山、Leon。同ブロックでの直接対決がないため、奈苗には輝の動向を見据えながらの闘いとなるわけだが、1失点もしない覚悟でいけばJWPサイドとの決勝戦が見えてくるだろう。
    「まずは今回のリーグ戦に優勝して無差別級王座に挑戦して勝つのが、今年前半の使命なんで。その先の女子プロ界のことも見てますから!」
     前日のしもうまの加入とこの日の勝利により、“パッションレッド”高橋奈苗はパッションレッド問題に自ら終止符を打ったといっていい。だからこそ、たとえ輝が現時点でトップに立っているとしても、奈苗こそエネミーサイドの本命だといえるのではないか。無差別級王者の春山香代子にとっても、“脅威すぎる”存在。高橋奈苗が、ノッてきた! 
    (新井 宏)


    2010.1.31 北千住シアター1010 昼の部 総評 

    ハイスピードの冠にふさわしいめまぐるしい攻防が展開された。米山香織が保持するNEO認定ハイスピード王座の次期挑戦者を決める3WAYマッチ。大ベテランのコマンド・ボリショイ、またはアイスリボンの新鋭・藤本つかさが勝ったとしても十分に納得のいく内容であり、試合形式からしてハプニング性も期待できた。が、結果的に試合を制してのは、初代王者で米山にベルトをかっさらわれた夏樹☆たいようだった。王者に向かいこれまで何度も再戦をアピールしてきた夏樹だが、これでもう文句をいわれる筋合いはない。2・14川崎でのタイトルマッチが正式に決定した。
     夏樹からすれば、新設当初からこのベルトは自分のためのタイトルという自負がある。ベルトを守りながら女子プロ界の新ジャンル、ハイスピードの輪を広げていくのが使命だと考えていた。ところが、アイスリボンでの出逢いから本来なら絡むはずのなかったJWPの米山にベルトをとられてしまう。しかも、意外なほどアッサリした負け方で…。好事魔多しとは、まさにこんなときに使う言葉なのだろう。以来、ことあるごとに夏樹は再戦をアピール。そのたびに米山からは「挑戦者決定戦でもやってから勝ち上がってこい」との挑発を受けていた。
     ハイスピードの開拓者としての自負を持つ夏樹からすれば、試合内容でのハイスピードはもちろんのこと、防衛戦をこなす回数もハイスピードで、との思惑もあった。しかしながら、米山がチャンピオンになって以来、佐藤綾子との防衛戦がおこなわれただけになっている。佐藤の挑戦に唐突感もあったこともあり、なんとなくタイトルそのものが隅に追いやられていた感じもしないではない。「防衛戦もろくにやってない状況じゃ、ハイスピードの道を切り拓くどころか輪を広げられない。自分がベルトをとり戻して、(ハイスピードの)潜在能力が隠された選手をどんどん見つけて確立させていきたいんです」
     米山に王者の座を「任せてはいられない」と、夏樹はいう。反面、米山には米山の道があり、言い分がある。「アタシはね、タッグもあわせて4冠王で忙しかったんだよ! ハイスピードだけじゃなく、タッグでもたくさんやって多忙だったんですよ。まあでも、ハイスピードの“1冠”になっちゃったんで、いまは無差別との2冠を狙っています。無差別を獲るためにも、ハイスピードが必要なんですよ」
     確かに、4冠を保持していたころの米山にはやることが山のようにあった。ハイスピードをおろそかにしていたわけではないけれど、そう見えてしまった事実は認めるしかないだろう。
     だからこそ、現在の米山は無差別級王座との2冠王をもくろんでいる。無差別級の下にあるハイスピードではなく、2本のベルトを同格とするのが彼女の狙い。どんな相手にもどんなスタイルにも対応できる。それを証明するために、ハイスピードの王者でありながら無差別級王座の次期挑戦者決定リーグ戦にエントリーしているのだ。
     2・14川崎での米山vs夏樹は、前回以上の好試合になること必至とみた。足元をすくわれた夏樹が十分に警戒してくるだろうし、米山にはリーグ戦に勢いをつけるためにも絶対に負けられない。両者の意地が加速した状態で展開されるハイスピードの最高峰。制するのは、どっちだ!?                          (新井 宏)

    2010.1.10 東京キネマ倶楽部 総評 

     春山香代子の保持するJWP認定無差別級王座の次期挑戦者を決めるリーグ戦がスタートした。これはベルトへの挑戦権を巡る闘いであると同時に、今後の方向性を探るシリーズでもある。日向あずみの引退により、JWPはいい意味で変わるチャンスでもあるのだろう。日向という団体の象徴が去ったのはもちろん、若手のピンキー真由香も引退した。物理的にも所属選手だけで興行を開催するのは難しい。それだけに、JWPは変わらなければならない岐路に立たされている。良くも悪くも他団体の選手を頼りにしなければ大会が成立しにくい状況になっているのだ。とはいえ、JWPには所属5人の危機を乗り越えた過去がある。だからこそ、今回の状況もピンチというよりも、むしろ新しいなにかがはじまるチャンスと考えた方がいい。
     そういった意味でも、JWPvsエネミーの図式となったリーグ戦は格好の材料である。同門対決はなく、エントリーされたJWPの選手はエネミー全員、エネミーの他団体選手はJWP側の全員と闘うことになっている。それぞれの得点1位同士が最終的にJWPvsエネミーでの決勝戦を争い、その勝者が春山の無差別級王座に挑戦する。
     開幕戦ではリーグ戦が5試合おこなわれ、JWPの3勝1敗1分けの記録が残った。対抗戦ではなく個人の闘いだから、この数字は無意味かもしれない。ただし、ホームの有利さがこの結果を引き出したといえなくもない。勝敗こそつかなかったものの、それを如実に表したのがメインの倉垣翼vs高橋奈苗の試合だった。
     結果的にドローとなったこの一戦。奈苗からすれば、JWPのアリ地獄にはまったような展開だった。ガンガンいけるはずなのに、なぜか踏み出せない。「もっとこいよって思って待ってしまった自分がいる」と、奈苗は倉垣との対戦を振り返る。「攻められるところはいっぱいあったのに、どうしてできなかったのか。攻め切れなかったのが(ドローでも)敗因。自分の方が絶対に強いと思ってるけど、この結果じゃ説得力ないですよね…」
     JWPの試合内容には定評がある。といってもそれは基本的に同門対決をさしている。ハイクオリティーな攻防は、日々の顔合わせから熟成されてできたものである。そこに他団体選手が入って化学反応が起こればいいのだが、必ずしもそうはいかない。決して悪い内容ではなかったが、奈苗には時間の経過とともに苛立ちが募るばかりだった。
     今回のリーグ戦、JWPからの選手は全員が春山との同門タイトルマッチを狙っているだろう。日向が引退しても同門対決にハズレなしを継続、証明したい。かたやエネミーサイドにとっては、JWP最高峰のベルトを手にし、戦場を増やす絶好のチャンス。なかでも奈苗は、あるテーマをもとにこのリーグ戦に臨んでいる。
    「自分のためのリーグ戦だと思ってますから。だって、(タイトルマッチが)同じ顔ぶれじゃおもしろくないでしょ。JWP同士はもちろん、春山vsさくらはもうやったし、ここは春山vs高橋しかないと思う。同じ枠にさくらえみが入ってるから、直接対決はないけど内容で負けたくない。パッションレッドの情熱をもっともっと燃やして火をつけて、そのうえで自分が勝ちますよ。でも、今日のは負けに等しくて、なにをいっても…。反省ばかりです。気持ちを切り替えて出直します」
     奈苗には今年、女子プロ大賞獲得の大きな目標がある。09年受賞者のさくらがこのリーグ戦にも参加しているだけにライバル意識も相当なもの。団体最高峰のベルトだけが受賞理由にならないことはわかっている。それでも、無差別のベルト獲得がこれ以上ないきっかけ作りにつながるのも間違いない。最初に挙げたJWPが変わるという意味でも、奈苗とはむしろありがたい存在か。JWPのアリ地獄にますます陥れることで、奈苗を活かすことができるはずだからだ。
    4・18後楽園で春山と向き合うのは対他団体で内容&結果を残したJWPの選手か、それともアリ地獄のようなこの団体の特色から抜け出して勝ち残るエネミーか。いずれにしても2010年、JWPは変革の年を迎えた。
    (新井 宏)

    2009.12.27 後楽園ホール 総評 

    日向あずみ&コマンド・ボリショイ組vs春山香代子&米山香織組。一見すると、どの会場でも組まれそうなJWPの純血タッグマッチである。しかし、この組み合わせを引退試合のカードとして日向の方から提案してきたとき、ボリショイにはすぐにあのころのことが思い出されたという。
    JWPは選手の離脱や経営難から所属選手5人というところまで追い込まれた過去がある。そのときに残っていたのが、ボリショイ、日向、春山、米山、渡辺えりか(引退)の5人だった。聖地・後楽園から遠ざかり、小会場での大会をおこなうのが精一杯。それでもなんとか団体を存続させようと尽力したのがこの5人だった。それまでは経験のなかったフロント業務も手分けしておこなうようになった。会見でボリショイが涙を流したのは、そんな背景があったからだ。
    ボリショイはいう。「日向は、このカードを大きな大会でずっとやりたかったんじゃないですかね」。日向のデビュー10周年をきっかけに、4年近くのブランクを経て後楽園大会を復活させたときもJWPの純血6人タッグマッチがメインだった。その後、徐々に回数を増やして今年は4回の後楽園大会を開催できるようになった。どん底時代を振り返れば、よくぞここまでカムバックしたものだと思う。その先頭に立って走ってきた日向がマットを去る。この試合は引退であると同時に、来年に向けてのヒントを日向から提示しようとして組まれたのではないか。春山と米山が選ばれたのがそう考えられる理由である。春山が日向を継ぐ無差別級王者なら、米山はNEO認定ハイスピード王者。入門時からこの2人にすべてを教えてきたのが日向だった。日向あずみにはなれないけれど、日向のあとを継ぐのがこの2人…。
    「なんか夢の中にいるみたいでした。日向さんが引退する夢を見ているような。でも、板橋でのシングルのように記憶が飛んじゃったわけじゃありません。しっかりおぼえていますよ。日向さんからもらった延髄ニーだけはなんとしても出したいと思ったし、この技をもっともっと磨いて、これからも大事に使っていきたいです。日向さんが会場にきたとき、『私よりスゴイ』といわせるくらいに磨いていかないといけないですね」(米山)
    「最後の3カウントは『(春山に)任せたよ』っていうふうに勝手に受けとりました。今後のプロレス生命を左右するような瞬間だったと思います。といってもどっちにも転ぶと思うんで、これからはいままで以上に意識してやっていかないといけない。日向さんがこのカードを選んでくれた意味をよく考えて、気持ちを入れ替えてやっていきます。自分にもJWP全体にも関わることなんで」(春山)
    日向から受け継いだ米山の延髄ニーから、日向政権を陥落させた春山のキーンハンマーがフィニッシュになった。ハイレベルな同門対決はJWPカラーのひとつ。日向あずみというエースが去ることで、JWPの2010年は大きな変革を要求されてくるだろう。物理的にも選手数の減少により、所属選手のみで興行を成立させるのは困難。イヤでもフリーや他団体の力を借りることになる。
    今大会の休憩時、スクリーン上から「JWPvsエネミー オープンクラスチャレンジリーグ」の開催が発表された。これは春山の保持する無差別級王座への次期挑戦者決定戦。エントリーされる選手の半数がエネミー、つまりはフリー、他団体枠となるのである。公式戦では同門対決は存在しない。JWPはエネミー、エネミーはJWPと闘い、それぞれの勝者が4・18後楽園で春山に挑戦するという形式だ。
    たとえ多くの外敵が入ってこようとも、JWPとしての誇りと自信を胸に闘ってほしい。こんなメッセージが聞こえてくるような日向あずみの引退試合だった。対パッションレッドで一歩退いていたのも、来年以降の戦力を考えての配慮だったといっていい。日向の引退はつくづくもったいないと思うが、現実に彼女はプロレス界から引退した。
    「セレモニーをやっても実感がまだ沸かないんですよ。(春山に)とられたのはいいんですけど、やっぱり自分たちが思っていたような試合にならなかったのが心残りというか」と日向はいう。とはいえ、100%の完全満足な試合など誰もしたことがないだろう。だからこそ、「心配で戻ってきた」なんていわせることのないように、変えるべきところは大胆に変える、守るべきことは守る姿勢が求められてくる。日向あずみの引退により、JWPはかえって見逃せない団体になったといえるのではないか。        (新井 宏)