fc2ブログ

    20thHP用
    次回大会の見どころ

    JWPロゴ

    OFFICIAL INFORMATIONS

    情報メディア
    興行日程他団体参戦情報
    対戦カード 試合結果
    レポート 選手紹介
    会場案内オフィシャルFC
    BLOG
    JWP認定タイトルの規定
    見どころ今後の引退試合スキーム検討

    2011.6.12 東京キネマ倶楽部 総評 

     JWP認定ジュニア&POP王座次期挑戦者決定戦が、JWPの選手同士でおこなわれた。勝ったのは、昨年末にデビューしたmasu‐me。待望のシングル初勝利である。
    前回シングルをおこなったときは、デビュー2戦目の勝に初勝利を謙譲してしまったmasu‐me。先を越されてしまったわけだが、はじめての勝ちが、タイトル挑戦に直結した。花月の牙城を崩すのは正直言って難しいかもしれないが、王者からすればあまり当たったことのないタイプだけに、一発逆転に期待したい。
    JWPのタイトルにもかかわらず、同王座は中島安里紗(引退)以来、約2年半も所属選手から遠ざかっている。それだけに、masu‐meにかかる期待は大きいだろう。masu‐meからしても下からの追い上げを感じている。だからこそ、王者としてベルトを巻き、同世代のトップランナーへと飛躍したいところである。タイトルマッチは、6・26大阪IMPホールで実現だ。
    また、6・26大阪では「J-1グランプリ2011」の決勝戦がおこなわれる。今大会の結果により、決勝の舞台に駒を進めたのは、阿部幸江を破ったヘイリー・ヘイトレッドと、タイトル初挑戦の中森華子を退けたLeonのふたりである。両者とも、準決勝では保持するベルトをかけて意気込みを見せた。ヘイリーはアメリカからもってきたTLW世界女子王座、Leonは米山香織との2冠戦で獲得したJWP認定無差別級王座である。
    もとはといえば、Leonがトーナメントの全試合で無差別かハイスピードのベルトをかけると宣言していた。そこでこの日、ヘイリーがタイトルマッチとしたのは、明らかにLeonを意識しての行動。それだけに、このトーナメントにかけるヘイリーの覚悟が伝わってくる。
    Leonは中森との試合後、ヘイリーを呼び出し、決勝戦を無差別級王座戦とすることを表明した。ヘイリーが受諾したのはもちろん、TLW王座もかけてのダブルタイトルマッチを希望している。大会終了時点では未定ながら、コミッショナーの許可が下りれば、2冠戦となることが発表されるだろう。
    米山政権時、ヘイリーは2本のベルトをかけて米山と3冠戦をおこなっている。このときは壮絶な両者KOで、ともに王座防衛。一方で、引き分けにより消化不良の感覚が残ったのも事実。しかし、こんどの試合は、トーナメントとあって必ず優勝者を決めなければならない。時間無制限の完全決着戦。いったんはドローになったとしても、勝者が決まるまで試合は終わらないはずだ。
    前王者の米山を引き継ぎ、革命推進を宣言したLeon。トーナメント全試合をタイトルマッチにすることで、決意の大きさを毎試合で表現している。しかしながら、外部へのアピールとなると、ほとんど影響を与えていないのも現実だ。米山政権時には、各選手が自己プロデュースに躍起になった。では、Leonの革命はいったい何を変革させるのか。その答えは、トーナメントが終わってから見えてくるものなのだろう。だからこそ、Leonは絶対に優勝し、革命遂行をあらためて宣言しなければならない。Leonはいったい何を訴えるのか。そのまえに立ちはだかるヘイリー。6・26大阪でのメイン後、見えてくるものとは…?

    (新井 宏)

    2011.5.22 北千住シアター1010ミニシアター 総評 

    「J-1グランプリ2011」の4強が出揃った。準決勝に駒を進めたのは、阿部幸江、中森華子、ヘイリー・ヘイトレッド、Leonである。メイン終了後には抽選会がおこなわれ、6月12日(日)東京キネマ倶楽部での阿部vsヘイリー、Leonvs中森が決定した。ここで勝った2人が、JWPナンバーワンの座をかけて6・26大阪IMPホールで激突することになる。では、準決勝を制して大阪に駒を進めるのは誰になるのか--。
    阿部vsヘイリーは、順当にいけば、タッグ2冠王者をシングルで連覇し勢いに乗るヘイリーに分があるだろう。米山の無差別級王者時代には自らが保持するアメリカの2冠王座をかけて3冠戦に挑んでいる。王座統一こそならなかったが、そのときの経験が彼女には大きな糧になっている。海外から来日する女子レスラーが増えてきた昨今において、ヘイリーは単発ではなく日本に住み込むことで多くを吸収してきた。最強外国人女子レスラーの称号を手にするためにも、キャリアのある阿部を破って決勝に進みたいところだろう。
     いっぽうの阿部にとっても、ここは降って沸いたチャンスである。4・3後楽園ではデビュー15周年記念試合をおこない、健在なところを見せつけた。シングルプレーヤーとしてはパッションレッドの高橋奈苗に牙を剥いて以来のチャンスではないか。いつもいま一歩のところで大きな獲物を逃してきただけに、ここはさまざまな策略でヘイリーを翻弄してもらいたい。どんな勝ち方でも勝ちは勝ち。そのくらいの開き直りが阿部に大輪の花を咲かせるのではなかろうか。
     もうひとつの準決勝は、Leonvs中森。獅子の穴同門対決となるわけだが、この試合にLeonは無差別級王座をかけるのか、それとも3連続でハイスピード戦にするのだろうか。今大会の試合後、Leonは明言こそしなかったが、中森は無差別級タイトルマッチを希望している。
     そもそも、無差別級王者になるために中森はJWPへの入団を決意した。過去の経歴を振り返れば壮大な夢に思われるかもしれない。が、正直言って、中森にはこれまでチャンスがなさすぎた。デビューからまもなく5年。意外にも、Leonとの対戦ではじめてベルトがかけられるのだという。この日の大畠との試合から、よけいにタイトルマッチ未経験という事実に驚かされた。団体さえ違えばジュニア王者になっていてもおかしくなかっただけに、次の試合ではいままでの悔しさをぶつける闘いを期待したい。Leonによれば、後日正式にどちらのタイトルマッチにするかを発表するという。中森の気持ちを汲んで無差別級王座戦にする可能性が高いと思われるが、どうなるか。
     本命はヘイリーvsLeonの決勝戦だが、阿部と中森にも勝機はあるに違いない。阿部がヘイリーを破ればトーナメント優勝と無差別級王者への道も見えてくるし、中森がLeonを突破すれば、ベルトを巻いて決勝のリングに立つことになる。6・12キネマで、ビッグサプライズは起こるのか!?

    (新井 宏)

    2011.5.8 東京キネマ倶楽部 総評 

     この日は、「J-1グランプリ2011~JWPno.1トーナメント」の1回戦3試合がおこなわれた。
    獅子の穴の大畠美咲は、矢神葵をフェアリーロックからギブアップさせ、中森華子との獅子の穴対決を決定させた。仙台女子のDASH・チサコは森居知子を破って、こちらも2回戦進出。そしてメインでは、LeonがRayを退けてハイスピード王座を防衛するとともに、2回戦へ駒を進めた。
    これにより、2回戦すべてのカードが決定。5・22北千住でおこなわれるのは、阿部幸江vs勝愛美、LeonvsDASH・チサコ、春山香代子vsヘイリー・ヘイトレッド、大畠美咲vs中森華子。この中から、一気に4強が出揃うことになる。
    そして、レオン革命を旗印に上げているLeonは、チサコとの2回戦にハイスピード王座をかけることを宣言。Leonはこのトーナメントすべてをタイトルマッチにすると決めている。現在、LeonはJWP認定無差別級王座とハイスピード王座の2冠王。このトーナメントでの敗退は、1本、場合によっては2本ともベルトを失うことを意味している。彼女にとってはまさに負けられない闘い。負ければ2冠王の肩書きはなくなる一方、勝てば2冠王であると同時に、JWP最強を意味するトーナメントの覇者にもなる。Leonには、ハイリスク、ハイリターンな日々がつづくのだ。
    Rayを破った試合後のLeonは、マイクをとって「JWPがどこの団体よりもハイレベルでハイリスクな試合をしないといけないと思ってます」と頼もしいコメント。ハイレベルは過去からJWPを表現するときによく用いられてきた言葉であるが、そこにハイリスクが加わったのだ。前王者の米山香織を引き継ぐ“革命魂”がそこにはある。負けたらすべてを失うくらいの覚悟でリングに上がる。そこには恐怖もあるだろう。しかし、Leonはその恐怖を克服してリングに上がっている。なぜなら、彼女には「努力は決して人を裏切らない」という信念があるからだ。
    その努力が報われて、いまこうして2冠王として君臨している。自信があるから、ハイリスクな試合にも臨めるようになった。以前の彼女ならいい試合はできてもハイリスクの試合にはなかなか足を踏み込めなかったような気がする。それを変えたのが、米山への挑戦だった。米山から与えられた課題をクリアーしていくことで、ひとつひとつがかたちになっていった。そこでつかんだ無差別級王座奪取への自信と、実現。そのきっかけをつくった米山は現在欠場中ながら、この日の会場には姿を見せていた。どうやら復帰は、そう遠い日のことではなさそうだ。
    米山が帰ってくるまで、Leonは2冠王でいつづけなければならない。2人が揃ってからが、本当の革命か。Leonが優勝してなにを掲げるのか。それに対して米山がどんな行動に出るのか。さらには、Leonを引きずりおろそうとする選手の登場にも期待がかかる。「J-1グランプリ2011」の行方が、今後のJWPマットを左右する。

    (新井 宏)

    2011.4.17 東京キネマ倶楽部 総評 

     旗揚げ19周年とは、20周年に向けてのはじまりである。2012年が団体創立から20年となるJWPは、この1年をかけてさまざまな特別企画を実現させるという。その第1弾としてリング上でおこなわれるのが、「J-1グランプリ2011」だ。
     これは負傷欠場中の米山香織とムーン瑞月を除くJWPの全所属選手と、特別参戦選手を加えた合計16名によるシングルのトーナメント。これはただ単にシングルマッチのトーナメントを争うのではなく、ルールの選択も駆け引きのうちになってくる。
    試合開始前にレフェリーがボールを投げ、先にタッチした選手が以下の4つの試合形式から選んで決めることができるというのだ。①通常ルール②2カウントフォールルール③オンリーギブアップルール④15分1本で引き分けた場合はキャリアの短い選手が勝ち。
     このなかからなにを選ぶか。通常ルールは真っ向勝負を狙う選手が選ぶだろう。2カウントフォールなら速攻勝負が得意な選手。オンリーギブアップルールはサブミッションスタイルの選手が選ぶはず。そして、キャリアの短いほうが有利になる試合は当然、新人選手に金星の目が出てくる形式だ。
     開幕戦となったこの日、masu‐mevs勝愛美の試合で早速、④のルールが採用された。これは勝が試合選択の権利を得て、このルールを指定、masu‐meを精神的に追い込んだ。これによって、試合はいっそう白熱。早くも追われる立場になったmasu‐meにはかえっていい刺激になったのかもしれない。結果的には勝に初白星を謙譲したものの、内容としてはmasu‐meにとってこれまでのキャリアでもっともいい試合になったと思う。彼女自身は悔しいだろうが、リベンジの機会を早い段階でものにしてほしいものだ。
     阿部幸江vsKAZUKIのザ★WANTED!?対決には、オンリーギブアップルールが採用された。これは当然KAZUKIが選んだもので、柔道着を着こんでのジャケットマッチを勝手におっぱじめた。ところがサブミッションのかけあいのなか、阿部の奥襟締めからタオルが投入されTKO決着に。KAZUKIが墓穴を掘る、意外な結末が待っていた。
     そしてこの日のもう1試合は、倉垣翼vsヘイリー・ヘイトレッドの2カウントフォールマッチ。過去のJWPでは何度もおこなわれていた形式だが、ヘイリーは2度目の体験。それでも自分からこれを選んだヘイリーは、2カウントで試合が終わるスリルとスーパーヘビーのぶつかり合いを十分に堪能させてくれた。通常のシングルマッチ以上に迫力が出せた闘いだった。
     このように1回戦では毎試合で形式が異なるわけだが、レオン革命をぶち上げたJWP認定無差別級&ハイスピード王者のLeonがすべてのトーナメント戦にベルトをかけることをぶち上げたことには驚かされた。相手によって無差別級かハイスピードを選択。場合によっては2冠戦となることもあるかもしれない。
     さっそくLeonは、5・8キネマでのRay戦にハイスピード王座をかけることを宣言。つまり、トーナメントで勝ちあがればベルト防衛。負けることになればベルトが1本、または両方ともなくなるケースも考えられるのだ。
     果たして、Leonは王者のままトーナメントを制することができるのか。JWP第2の革命家は、自らを崖っぷちに追い込むことで王者のなんたるかを見せつけようとしている。

    (新井 宏)

    2011.4.3 後楽園ホール 総評 

    「プレ20周年記念大会」と銘打った“19周年記念大会”のメインを締めたのは、Leonだった。Leonは自らが保持するハイスピード王座をかけて、無差別級王者の米山香織に挑戦した。米山は「無差別級王座と同格にしてほしくない」とハイスピードとのダブルタイトルマッチに否定的だったが、LeonはLeonで背負うものがあるようにしたいと、このベルトもかけたことになる。「すべてを出しきる試合をするためにはベルトが必要だった」。これは米山の言葉だが、思いは共通のはずだ。
     過去の対戦内容からも、このふたリが闘えば好勝負は必至だった。しかし、実際にリングに上がってみると後楽園のメイン、しかも19周年というアニバーサリーのプレッシャーからか、とくにLeonに緊張の色が伺えた。序盤でスワンダイブの体勢を崩し、ロープを駆け抜けるムーブでは足を滑らせてしまった。やはり、特別な場所であり、特別な状況、特別な思いが大きなプレッシャーとしてのしかかったのだろう。そんななか、しだいにLeonには米山への感情が変わっていくようになる。米山革命を終わらせると発言していたLeonだが、革命を終わらせてはならないと肌で感じはじめていたのだ。Leonには、覚悟を持って他団体選手との防衛戦を連続させていた米山の決意が理解できたのだろう。
     試合後、2冠王になったLeonは革命の終結を告げる米山に革命の引継ぎを申し出た。米山が無差別級王者になって以来、無差別級タイトルマッチでは物議をかもしながらも、JWP内部では明らかに意識改革が進んでいた。たとえばLeonの獅子の穴結成であったり、それぞれがこれまでにない新路線を歩みだした。新人のデビューや新戦力の導入も、過去のJWPとくらべればずいぶんとイメージが異なっている。すべては米山革命がもたらした意識改革の成果と考えていい。だからこそ、革命をここで終わらせてはならないのだ。
    「団体の意識改革を止めないで進めていく」と、Leonは発言。そのためにも、獅子の穴の活動をもっと活発化させていきたい。ときには米山の協力を仰ぐことも必要だろう。そのうえで、どんな防衛活動をおこなっていくのか。団体側の考えに納得いかなければ、反対する姿をみせることも必要だと思う。米山の要求から、自分の意思を伝える術も手に入れただろう。これは、米山も通ってきた道である。ライバルのLeonにできないはずがない。
    20周年に向けて動き出したJWP。来年のいまごろ、どんな風景が見られるのか。まずはLeonの起こす革命に期待してみよう。

    (新井 宏)

    2011.3.21 板橋グリーンホール 総評 

    「獅子の穴主催興行」が、予想以上の成功をおさめた。Leonをトップとして集結した獅子の穴がめざすのは、若手の底上げ。獅子の穴とは、若い選手がともに練習し、切磋琢磨していこうとする活動体だ。吉田万里子自主興行としてスタートした息吹の継続、そう考えるのがもっとも近いイメージだろう。Leonがかつての師匠・吉田万里子の役割を引き継いでいるかのようである。
    息吹は息吹の役割を終えたと判断したから、その活動にピリオドを打った。とはいえ、若手の底上げを図る作業はジャンルが存在する限り必要になってくる。だからこそ、老舗団体のJWPがある意味別ブランドとして獅子の穴を立ち上げたのは、女子プロレスを継続させるためにも重要なのだ。
    試合前には、リング上で“獅子の穴練習”が公開された。ここでは、Leon、中森華子、4・3後楽園でデビュー予定の勝愛美、さらには練習生3名を加えた合計6名が参加。タイトルマッチでLeonと闘う大畠美咲と、来場を希望したというがかなわなかった負傷欠場中の羽沙羅を除くメンバーがお披露目されたことにもなる。このあたりからも、ふだんのJWPとは違うコンセプトが見えてきた。
    しかしながら、カード全体が獅子の穴カラーで塗りつぶされていたわけでもない。獅子の穴はまだはじまったばかり。さらなる新メンバーや練習生のデビューにより、第2回大会以降はより充実した陣容が期待される。
    「獅子の穴を作ってよかったと思いました。タイトルマッチで闘った大畠も、ここまでやるのかってくらい粘りがすごくて立ち向かってきた。これからも若手の子が脚光を浴びてほしいので、若手と自分のためにぜひ(主催興行を)続けていきたいと思います」
    そしてメイン終了後、Leonは大阪で同時間帯に無差別級王座をかけて闘っている米山香織に向けてメッセージを送った。大畠を破ってハイスピード王座を防衛すると、このベルトを4・3後楽園での米山戦にかけるというのだ。これまでも、ハイスピードをかけることは考えていたのだという。しかし、大畠戦を終えるまでは言い出せなかった。これまでは後手に回っていたのだが、ベルトを守ってはじめて自分の決意を口にできたわけである。
    「自分だけが相手にベルトをかけろって言うのもおかしいと思っていたので、今日防衛したらハイスピードのタイトルマッチにしたいと言うつもりでした。お互いが同期でやってきて、ヨネが今日ベルトを守ったらですけど、2人ともチャンピオン。プレ20周年の後楽園でベルトをかけて勝ってこそ、自分は上にいけると思ってます」
    米山とLeonが一騎打ちで闘えば、好勝負はまず間違いない。ただし、それで話題になるかといえば、話は違ってくる。それを感じていたからこそ、米山はLeonに3つの条件を出していた。そのすべてをこの日、Leonはクリアー。だからといって即、無差別級のタイトルマッチになると決まったとも言えない。まずは大阪女子で下野佐和子に米山が防衛すること。さらには、「3つの条件をクリアーしたら考えてあげてもいいよ」と米山は言っていたのを忘れてはいけない。それだけに、いまは米山の返答を待つしかない。無差別級とハイスピードの2冠戦は実現するのか。条件をクリアーしたLeonに対する米山の答えは…。

    (新井 宏)

    2011.3.20 板橋グリーンホール 総評 

    余震への不安が残るなかで開催に踏み切られた今大会では、試合前に万が一の場合に備えての避難訓練、シミュレーションが観客参加の形で行われた。大会告知の際に「大会当日はお客様の安全を最優先し、万が一に備え避難経路を確認し安全に興行を行うことをお約束します」との発表をしていたJWP。興行としてまえもっての準備は当然のこととはいえ、観客も参加しての訓練は、あまり聞いたことがない。ファンに少しでも安心して観戦してもらいたいとの配慮が感じられた。
    まず、緊急地震速報が入った時点で試合、興行は中断。観客はリング周りに集まり、揺れが激しくなればリング下に身を隠す。そのため、リング周りのマットは取り除かれていた。リング下に入る場合は、小さなこどもや年配の方を優先してもらえるようにアナウンスし、館外に避難するケースが生じたときには通常の出入り口はもちろん、左右のドアをすべて開けることが告げられた。実際にやってみることで、観客は同ホールにおけるほかの大会でのシミュレーションもできたのではないか。
    セミファイナルで春山組がリングに向かった際、実際に緊急地震速報が入った。春山のテーマ曲が途中でストップ。伊藤リングアナから地震速報が告げられ、観客は誘導されたとおりに落ち着いてリングサイドに集まった。まえもってシミュレーションしていたこともあって混乱もなく、さいわい、板橋地区では揺れを体感しなかった。が、緊急地震速報が入った午後2時19分には福島県内で震度3の余震を記録。伊藤リングアナは大会を通じイヤホンでラジオを聴きながら進行をつとめていた。これも、緊急に備えての措置である。
    安全が確認されると興行は再開され、全5試合が無事に終了した。その後は中止になった闘聾門の大会に代わり、選手が私物を提供したり、歌を唄ったり、入場無料でのチャリティーイベントを開催。JWPも義援金を募り、日本赤十字社を通じて被災地に届けようとしている。
    プロレス会場に限らず、人の集まるところではどんな施設でも避難経路の確認は必要だと思う。デパートや劇場、ホテルなど、入ったときに確認することを日常から習慣づけしておいたほうがいい。他人への配慮はもちろん、自分のみは自分で守るとの意識も必要だ。
    さて、リング上では4・3後楽園に向けて、米山とLeonが激しい前哨戦を展開した。米山はヘイリー、Leonは獅子の穴に加入した中森を帯同して登場。中森もJWP入団のモチベーションとして無差別級王座への挑戦をめざしているだけに、気合は十分。さらにタッグ2冠への挑戦が決まっているヘイリーも絶好調である。自然と試合は白熱。Leonに至っては途中でマスクを脱ぎ捨てるほどだった。前哨戦の内容からして、4・3後楽園での好勝負は必至である。
    ただし、その試合に無差別級のベルトがかけられるとなれば話は別。米山はOSAKA女子で下野佐和子とタイトルマッチをおこない、Leonには獅子の穴主催興行でのハイスピード王座防衛戦が待っている。米山が不覚をとるようなことになれば無差別級のベルトはJWPからなくなるし、Leonが大畠に敗れれば、米山から突きつけられた条件をクリアーできなくなる。すべては3・21の結果しだい。大阪と板橋で明暗が分かれるのか、それとも一気に無差別級王座戦へと突き進むのか。米山にとってもLeonにとっても、大きな意味を持つ1日になる。 

    (新井 宏)

    2011.3.6 東京キネマ倶楽部 総評 

     4・3後楽園での一騎打ちにJWP認定無差別級王座をかけるように要求するLeon。これに対し、王者の米山は「3つの条件」をLeonに課した。米山革命の宣言以来、米山はJWP所属選手の挑戦拒否の姿勢を貫いているのだが、ここへきてLeonがこの状況を切り裂きにかかっている。米山が課した条件は以下だ。

    1. ブログを毎日更新すること。
    2. 3・21獅子の穴主催興行の超満員札止め
    3. NEO認定ハイスピード王座の防衛

     なかには冗談のような要求もある。が、米山のほうはいたって真剣。ブログを更新させることによって告知だけではなく、Leon個人の感情を引き出そうとしているのである。米山は、Leonの気持ちを見たがっている、知りたがっている。ただ勝ちたい、絶対に勝つだけでは説得力に欠けすぎる。いままで何回、何百回この言葉を聞いてきたか。それ以上の何かがなければ、王者の心を動かすことは不可能。実際、米山はアイスリボンのさくらえみによって気持ちを伝えることの重要性を知らされた。その末にたどり着いたのが、髪の毛をかけての対戦だった。伝わらなければ、なかったのといっしょ。さくらの気持ちが届いたからこそ、そのときの新宿大会は超満員札止めになった。Leonが日々の気持ちを綴ることで、王座に対する本心が見えてくるはず。そこではじめて、勝ちたい、絶対に勝つとの思いが真実味を帯びるのだろう。日々のブログで思いが伝われば、それは獅子の穴主催興行の超満員につながるはず。すなわち、2番目の条件を満たすのだ。

     そこでおこなわれる大畠美咲とのハイスピードタイトルマッチ。2つの条件をクリアーした先が、ベルトの防衛である。ここでパートナー対決、獅子の穴同門対決を制してこそ、米山の気持ちを動かすことになるのだろう。
    米山は米山革命の真っ只中で自己プロデュースの大切さを見出し、JWP全体でも所属選手それぞれがプロデュースするようになっている。Leonは獅子の穴という若手によるグループを作り、それを拡大させている。それでも、対外的なアピール度となればまだまだ物足りなさも残っている。この条件をクリアーすれば所属選手として久しぶりの無差別級王座挑戦権が手に入るのはもちろん、自身の成長にとってもプラスになるのだから、一石二鳥。米山の提案に乗らない手はないだろう。果たして、4・3後楽園でのシングルマッチに無差別級のベルトはかけられるのか。Leonの動向に注目である。(新井 宏)

    2011.2.20 東京キネマ倶楽部 総評 

     対照的な決勝戦進出だった。春山香代子と倉垣翼のハルクラが3連勝のぶっちぎりでレッドゾーンからの決勝進出を決めれば、もう一方のブルーゾーンは最後の最後までわからない展開だった。
     2連勝で迎えたLeon&大畠美咲の獅子の穴がボリショイ&矢神組にすんなり勝てば、ハルクラと同じ全勝で決勝戦に進むことができた。もちろん、獅子の穴はそのつもりでいただろう。対戦相手に決勝の望みが消えていれば、そのままいっていたのではなかろうか。
     しかし、ボリショイ組にもこの時点で優勝できる可能性が残されていた。このチームが勝てば、獅子の穴との決勝進出者決定戦になだれ込む。連戦連勝の条件付きながら、まだまだ望みがあったのだ。さらには、まえの試合でザ☆WANTED!?がmasu‐me&藤本つかさのキューティーペアを破って決勝進出に望みをつないでいる。獅子の穴の全勝突破で公式戦終了か、それとも終わりの見えない巴戦を闘わなければならないのか。勝つと負けるとでは、違いすぎるほど大きな違いだ――。
     おそらく、巴戦での延長はJWP史上初めてのことだろう。ボリショイのサブミッションが冴え渡り、Leonを完璧に捕獲した。こういった大一番で冷静に対処できる矢神も見事だった。ボリショイ組の奮闘で、獅子の穴の連勝がストップ。結局、3チームによる巴戦へと突入した。
     しかし、ここから先が獅子の穴の独壇場だった。Leonが名誉挽回とばかりにキャプチュードバスターで一気に連勝。先ほどの失態を帳消しにする勝ち方で、ハルクラとの決勝戦を決めたのだ。
     試合後のLeonは、自身の手で奪った連勝よりも、大畠のがんばりを褒め称えた。「大畠に勢いがあって練習の成果を出してくれた。スタミナもすごくあるんで、(決勝戦で)ハルクラに勝ちます!」
     ブルーゾーンの経過を見守っていたハルクラの春山も、大畠のがんばりは敵ながら認めている。過去にはタッグトーナメントでチームを結成した春山と大畠。「組んでたときよりどんどん成長してると思う。美咲のことは買ってますよ。そりゃあ、練習してれば成長しますけど、プロレスを毎日よく考えてるんじゃないかなって思う。プロレス力が成長してるんじゃないかと思います」
     実際、試合後のリングでハルクラを燃えさせたのは、Leonよりも大畠からの挑発だった。「オマエらを決勝で負かして、(タッグ)ナンバーワンの座から引きずりおろしてやるよ。それまでせいぜい、バリバリ最強ナンバーワンとかファイヤーとか言っとけ!」
     JWPのリングなら、ちょっとまえまでは考えられなかった大畠の挑発行為。リングではこのような行動をとりながらも、バックステージではハルクラの強さを冷静に分析もしている。
    「ハルクラの強みっていうのは、いつでもいっしょに練習できるってこと」と、大畠は言う。JWPへの登場をゲスト参戦にはしたくない。だからこそ、大畠は獅子の穴に加入した。獅子の穴とは、若い選手が切磋琢磨し、ともに成長することを目的としている。考えようによっては、ハルクラほど獅子の穴での成果を出しやすい相手もいないだろう。それだけに、今後のタッグ戦線を占う意味でも3・6キネマでの決勝戦は注目度大。ポイントはもちろん、大畠にある。

    (新井 宏)

    2011.2.6 大阪ミナミMove Onアリーナ  

     今大会で春山香代子&倉垣翼のハルクラが、「タッグリーグ・ザ・ベスト2011」レッドゾーンからの決勝進出を決めてみせた。ぶっちぎりの3連勝、まさにバリバリの1位通過である。
    ハルクラが森居知子&中森華子組を破って3・6キネマ、決勝戦へのチケットを手にすると、レッドゾーンのLeon&大畠美咲組がリングに上がってきた。「私たちがおまえたちに勝って、優勝する!」と挑発する“獅子の穴”に対し、ハルクラは「ブルーゾーンで足元をすくわれるなよ!」と言い返した。先日のキネマ大会でも、Leonたちはハルクラを挑発、全勝同士による決勝戦での激突を強烈に意識していた。が、獅子の穴のいるブルーゾーンでは、まだどのチームが決勝に駒を進めるかはまったくわからない混沌とした状況になっている。Leon&大畠組はここまで2勝0敗で、ほかのチームからアタマひとつ抜けているものの、次回2・20キネマ大会の結果次第では、ハルクラとの対戦は消滅してしまうかもしれないのだ。
    現在、ブルーゾーンでは3チームに決勝進出の可能性が残されており、公式戦の最終試合となる2・20キネマにおいては、ブルーゾーンの2試合が組まれている。Leon&大畠組vsコマンド・ボリショイ&矢神葵組、阿部幸江&KAZUKI組vsmasu‐me&藤本つかさ組。
    Leon組がボリショイ組を破れば、この時点で文句なしに獅子の穴が決勝へ進出する。逆に、ボリショイ組が勝てばLeon組と2勝1敗で並ぶことになる。さらに、ザ☆WANTED!?がmasu‐me組を順当に破れば、こちらも2勝1敗、3チームが同点となるのである。
    もしも3チームが並んだ場合は、タッグによる巴戦でブルーゾーンからの代表者を決定。2チームが並んだ場合は、当該チームによる決勝進出者決定戦をおこなうことになる。それだけに、ハルクラとの対戦を前提としている獅子の穴としては、なんとしてもボリショイ組にすんなり勝って、3・6キネマへと備えたいだろう。当然、狙いは矢神か…。
    「獅子の穴の2人は、向上心の塊ですね。3月21日板橋での獅子の穴主催興行も決まって、いまイチバン伸びてると思います」と言うのは、最後のリーグ戦で獅子の穴と対戦するボリショイだ。彼女たちの向上心を警戒するボリショイだが、自分たちももちろん、優勝を狙っている。今後恒例化していく「タッグリーグ・ザ・ベスト」。第1回の優勝者となれば、その栄誉は永遠に残ることになるだけに、なおさらだ。
    「獅子の穴はチームワークがいいんですけど、チームワークだったら私たちも負けていませんよ」と、ボリショイは豪語する。ボリショイのパートナーは聴覚障害を持つ矢神だが、ハンディがかえって、慎重なコミュニケーションを心がけさせ、いいようにまわせていると言うのだ。実際、2人のコンビネーションは想像以上にスムースだ。
    「矢神は板橋でもメインを張ったし、いつも以上の力を(リング上で)出せるタイプだと思うんです」(ボリショイ)
     それだけに、獅子の穴に油断は大敵。Leon&大畠組がすんなりとハルクラ戦に進むのか、それともボリショイ組が進出者決定戦に持ち込み、さらにはザ☆WANTED!?が三つ巴戦までもっていってしまうのか。ブルーゾーンの結果は、最後の最後までもつれる可能性がある。                           
     なお、JWPは来年、旗揚げ20周年を迎える。言ってみれば、今年は“プレ20周年”。来るべきビッグアニバーサリーに向けて、この日は春山が動いた。「JWPは大阪でもっともっと熱い闘いをやっていきたい。そのためにも、今年中にIMPホールでやりたいと思ってます!」IMPホールといえば、大阪プロレスがビッグマッチをおこなう会場としても知られている。かつてはJWPも試合をしたことがあるが、現体制になってからはご無沙汰になっている。ここは20周年に向けての景気づけの意味でも、ぜひ実現させてもらいたいところである。      

    (新井 宏)

    2011.1.16 東京キネマ倶楽部 総評 

     NEOの解散により、JWPは今後よりいっそう、老舗団体としての色合いが濃くなってくるのだろう。女子プロレスを守り、牽引していくのは自分たち。そんな決意の表れが、「タッグリーグ・ザ・ベスト」の継承から受けとれる。エントリーされたのは、既存のタッグや、まったく新しいチームなど、合計8チーム。あらゆる世代からチーム編成がなされており、さまざまな顔合わせが実現するように構成されている。
     それを証明するかのように、第1試合から興味深い対決が実現した。コマンド・ボリショイ&矢神葵組vsmasu‐me&藤本つかさ組。過去におけるタッグの祭典からは、考えられない組み合わせである。
     ボリショイ&矢神は、12・23後楽園からスタートしたタッグチームだ。矢神が聴覚障害者の団体、闘聾門JAPANからの選手で、ボリショイとは手話を通じて知り合った。プロレスにおいては、師弟関係。一方のmasu‐me&藤本つかさは、正真正銘の初コンビ。masu‐meは12・23後楽園でのKAZUKI戦がデビュー戦だから、この日がプロ入り2試合目。初めてのタッグマッチがいきなり他団体の選手で、しかもいきなりのリーグ戦エントリーとなった。masu‐meには大変なプレッシャーだろう。藤本にとってはボリショイからICE×60王座をアイスリボンに奪回したこともあり、両者の再会も興味深い。
     事実上のデビュー戦でアッと驚くキレのよさを見せた矢神の攻撃には、この日も見応えがあった。masu‐meには持って生まれた華があり、両者のコントラストがぶつかったシーンは、ある意味でこのリーグ戦を象徴するようだった。ボリショイと藤本が出てくると、スピードに乗せられるように空気がガラリと変わった。ボリショイはもちろんだが、藤本にもいつのまにか格の違いが見せつけられるようになっていたのにはビックリした。アイスリボン3冠王の肩書きは伊達ではない。しかも、あのボリショイからベルトを引っぺがしたのだから。
     ボリショイ&矢神組は、矢神の活躍しだいでは台風の目になる可能性を秘めている。全員が初対決という点では、もしかしたら矢神有利へと動くのかもしれない。藤本&masu‐me組は、初タッグだけにコンビネーションがどうなるか。藤本がうまくmasu‐meを引っ張れば、予想外の白星が舞い込んでくるかもしれない。いってみれば、藤本のリーダーシップが問われるチーム。つっかはすでに、こういうポジションまで来ているのだ。
     優勝候補となれば米山&ヘイリー組(レッドゾーン)、春山&倉垣組(レッドゾーン)、Leon&大畠組(ブルーゾーン)などに絞られてくるかもしれない。が、矢神、masu‐meをはじめ、森居&中森組との絡みなど、フレッシュな顔合わせが次々実現するのが、このリーグ戦最大の楽しみだと思う。いままでのJWPにおけるタッグリーグ(トーナメント)とは一味も二味も違う今回の組み合わせ。優勝の行方はもちろん、JWPにどんな風景をもたらすか、注目だ。

    (新井 宏)

    2010.12.23 後楽園ホール 総評 

     植松とKAZUKI、阿部とアジャの関係からコミカル路線に行きつつあったタッグ2冠王座を元の姿に戻すのが、復活ハルクラの役割だったのだろう。
    当初の目的である等身大フィギュアの獲得はもちろんだが、アジャはハルクラの挑戦により戦闘モードに突入した。ハルクラはJWPにおけるタッグの第一人者。そのハルクラがアジャに牙をむいたのだ。アジャとしても本気でベルトを守る必要が出てきたということだ。
    しかし、阿部とアジャのコンビネーションが巧くいったかといえば、決してそうはならなかった。阿部のカットはハルクラに遮断されまくり、王者組が分断された。最終的には阿部が倉垣にピンフォールされ、タッグ王座は移動。等身大フィギュアの話がウソだったことも発覚し、アジャは阿部に三行半を叩きつけた。
    が、アジャがこのままタッグ戦線から引き下がるわけではなさそうだ。試合後、アジャは「阿部とは2度と関わらない」と宣言すると同時に、「ちゃんとしたかたちで、この借りを返しに来るからな!」と、新たなるパートナーをつれての再チャレンジをアピールしたのである。
    タッグ奪回に成功したハルクラは、たとえ誰を連れてこようとも、アジャとの再戦には応じる構えを見せつけた。この日おこなわれたバトルロイヤルでは、ヘイリー・ヘイトレッドがタッグ王座への次期挑戦権を獲得。ヘイリーも日本のスタイルを吸収し、米山とは日米のタイトルをかけての3冠戦を経験している。それだけに、ハルクラにとっては厄介な相手となりそうだ。
    アジャ、ヘイリー。さらには、ザ☆WANTED!?も再結成を示唆しただけに、挑戦の可能性はある。ハルクラのベルトを追って、今後さまざまな選手が名乗りを上げてきそうである。
    そして再結成後、すぐにタッグ王座奪回に成功したハルクラにはシングルでもやるべきことがたくさんある。再結成を主張した倉垣には、対男子レスラーの新路線が継続中。石川修司(ユニオン)とのド迫力マッチをおこない、後楽園大会の翌日(12・24)にはSMASHに乗り込み、こんどは小路晃との一騎打ちを実現させる。他団体のリングだからこそ、倉垣のパワーを見せつけるには格好の舞台。そこからさらなる飛躍が期待できそうだ。
    無差別級王座奪回に目標を絞っていた春山については、ひたすらアピールするだけで王者・米山を振り向かせるのは難しいだろう。それだけに、タッグ王座奪回は無差別挑戦への第1歩と考えられる。いまはただ、実績を積み重ねて、挑戦の機会を狙っていくしかないかもしれない。そのためにも、米山と同じくらいのハイペースで挑戦者を募り、タイトルマッチをこなしていくのがいいのではないか。それには当然、王座陥落のリスクも伴う。米山革命に対抗するハルクラ革命。そういわれるくらいのインパクトが必要だろう。

    (新井 宏)

    2010.12.12 東京キネマ倶楽部 総評 

     コマンド・ボリショイが星ハム子を退け、ICE×60王座の防衛に成功した。19時女子プロレスの8・27でみなみ飛香を破っての奪取以来、飛香、都宮ちい、ハム子と防衛を重ねている。そして、次のタイトルマッチも藤本つかさを挑戦者に迎えることが決まった。“敵地”アイスリボンの後楽園(12・26)に乗り込んでの一戦である。
     では、ボリショイにとってアイスリボンが認定するベルトを保持することはなにを意味しているのか、訊いてみた。
    「キャリアを重ねた選手って、だいたい体重が60キロ以上あるんですよ。だから60キロ以下の選手ってほとんどが若手なんです。若さもあって、しかも体力もあるとき。そういったなかで闘っていくのってなかなか大変で。でも、若い選手ばかりだから私にとっては未知の選手が多い。これまでいろんな世代と試合をしてきましたけど、いろんな選手と当たれるいまが一番楽しいんですね」
    なるほど、ボリショイがこのベルトをかけて闘うのは若手が中心。しかも、いまのところアイスリボンという他団体の若手である。JWPの新人たちにはないタイプの選手が揃っているだけに、ボリショイには新鮮に映るのだろう。
    「アイスリボンの若手って、さくらの教えなのか必ず目立って帰るんですよ。今日、私にドロップキックを打ってきた藤本もそうですよね。だからこっちも負けちゃいけないと思う。(アイス12・26)後楽園では、私がおいしいところをとろうと思います」
     ボリショイにとって、ICE×60王座とは若返りのベルトでもあるのだろう。「まだまだ現役なんだぞってところを見せる」アイテムということか。さらには米山革命進行中のいまだからこそ、ICE×60王座は簡単に手放せない。倉垣が対男子レスラー、Leonが獅子の穴をテーマにするように、これがボリショイの突き進む新路線でもあるのだ。
    「私は、米山革命の太鼓持ちではないんですよ。米山をサポートするだけじゃない。米山が米山革命を進めるのなら、自分はもっともイキイキしている世代とバチバチやってやろうと。その気持ちがもっとも表現できるのがこのベルトをかける試合だと思ってます。だからこそ、次の藤本戦もおもしろいんじゃないですか。敵地に乗り込んで、ドロップキック一発で強烈な印象を与えてしまうしたたかさを持ってると思うんですよ。こっちも刺激をもらえますよね」
     若手の壁になればなるほど小さなボリショイの存在が大きくなる。それを乗り越えようとアイスリボンの選手が必死になる相乗効果。いったいどこまでボリショイがベルトを守るのだろう。このタイトルがボリショイの活力源にもなっているだけに今後どうなるのか、興味は尽きない。

    (新井 宏)

    2010.11.28 東京キネマ倶楽部 総評 

     倉垣が“ハルクラ復活”をアピールしたのをきっかけに、ハルクラのシングルマッチが実現した。しかしながら倉垣からのタッグ再結成の要求に対し、春山は態度を保留。一騎打ちで気持ちを確かめ合い、そこから決断を下すことにしたのである。
     米山革命がスタートしてから、JWPでは個人個人のプロデュースが盛んになっている。春山だけは以前と変わらずJWP認定無差別級王座の奪回を目標にしているが、ほかの選手が新しい取り組みをしているからこそ、かえって春山の頑固ぶりは際立ってみえる。これもひとつの個性と言っていいのだろう。ハルクラ復活を言い出した倉垣も、対男子レスラーという新路線を見いだした。実際にユニオンの石川修司とシングルマッチをおこない、彼女のよさが存分に引き出された。その後はスマッシュのリングに乗り込み、小路晃との対戦を希望。こちらも実現に至れば、男女の枠を超えた倉垣ならではの闘いが期待できそうだ。
     ともに個人の目標を設定しつつも、結果的に両者はタッグ再結成にゴーサインを出した。春山vs倉垣の試合は、ともに手の内をわかっているとあって、一進一退の攻防となりどちらが勝ってもおかしくない展開。最後はキーンハンマーを決めた春山のカバーを倉垣が反転し、3カウントを奪ってみせた。試合後には仁王立ちになっていたのが春山で、大の字でダウンしていたのが倉垣という珍しい状況が起きた。終盤の攻防から判断すれば、内容でわずかに春山が上回ったのかもしれない。が、最後はなんとしても春山と組みたい倉垣の執念が上回った。このとき、春山の気持ちは動いたのだ。それほどハルクラで闘いたいのなら、ふたたび組むのも悪くないと――。
     春山の気持ちを動かしたのは、倉垣の想いだけではなかった。この日のメインで、阿部&アジャ組がLeon&花月組を退けタッグ2冠王座の初防衛に成功した。とはいえ、ベルトこそ守ったものアジャの興味は「エヴァンゲリヲンの等身大フィギュア」にあった。そもそもアジャは、フィギュアのプレゼントという誘惑に負けて阿部と組むようになったのだ。KAZUKIとの決別からなんとしても強力なパートナーがほしかった阿部だが、アジャとのコンビではギクシャクしまくり。コンビネーションもいいとは言えず、絶えず阿部がおいしいところをもっていこうとする。そんな阿部にアジャはウンザリ。この日も、フィギュアは手に入らず、12月23日後楽園大会での2度目の防衛戦を強引に決められてしまった。
    「ベルトはフィギュアよりも下なのか?」
    阿部とアジャのやりとりに、春山と倉垣が疑問を持ったのは自然の成り行きだった。「だったら、バリバリ最強ナンバーワンのハルクラでいってやる」。そんな想いが春山にも倉垣にも湧き上がった。「ベルトが二の次に扱われて歯がゆい気持ちがある。それに、アジャ・コングは興味がある選手だから、ここはやっぱりハルクラでいこうと思った」と、春山は言う。倉垣も「タッグベルトの価値を上げるためにもハルクラでいきたい」と、あらためてベルト奪回を宣言。王者のアジャは、「ベルトよりフィギュアだけど、オマエらだったら話は別」と、ハルクラとの対決を真摯に迎えると気持ちを切り替えていた。
     春山の無差別級王座奪回、倉垣の対男子路線も、ベルトのあるなしではアピール度が違ってくる。だからこそ、タッグ王座を奪回したい。12・23後楽園ホールで、ハルクラはタッグ2冠王座の軌道修正を図る。

    (新井 宏)

    2010.11.5 板橋グリーンホール 総評 

     第15代王者の米山香織が、ユニオン11・3新木場でチェリーの挑戦を退け、JWP認定無差別級王座6度目の防衛に成功した。他団体での防衛を果たし米山革命を推進する米山は、当日の思いを以下のように振り返る。
    「男子の団体で、しかも5周年記念のメイン。外ではいつもセミ止まりだったのに、最高の舞台を用意してもらって光栄でした。完全なアウェーは初体験で、チェリー一色の雰囲気の中、立会人の日向(あずみ)さんの前で勝てて本当にうれしかったです。ヘイリー(ヘイトレッド)のときもそうでしたけど、ベルトでつながった縁を大事にしたいと思います」
     ヘイリーは継続参戦で米山とタッグを組む機会を得た。チェリーが今大会に参戦したのも、ユニオンでのタイトルマッチつながり。外へ出るだけではなく、外から何かを呼び込むのも、米山革命の一環と言っていい。
     今大会で華名が来場したのは、米山(&ボリショイ)からの呼びかけがきっかけだった。ただし華名の場合、JWPからすれば“招かれざる客”でもある。実際、華名がリングに上がったときの反応はとんでもなく鈍かった。歓迎の雰囲気が皆無なのは予想の範疇だったが、帰れコールも一部で発生しただけ。華名が来場したからとはいえ、これが直接JWPのリングに還元されるものとは考えにくいからだろうか。とはいえ、招かれざる客を招いたのも、米山革命の延長なのだ。
     米山は、フリーではなく、「スマッシュの華名」としての華名に来場を呼びかけた。スマッシュなら華名ではなく、朱里やほかの関係者でもよかったかもしれない。しかし、この件に関しては「スマッシュの華名」でなければならなかった。それは、スマッシュ9・27新宿での出来事に遡る。
    元はと言えば、「文句があるヤツはスマッシュの会場に来い」と、呼びかけていたのが華名だった。そこへやってきたのが、JWPのメンバーたちだった。ここで華名は大ブーイングを浴びる。本来なら外敵であるJWP軍に罵声が飛んでも仕方のないところだ。ところが、現実にはJWP勢が喝采を受けることになった。華名の発言に対し米山が「インテリジェンスってなんだよ?」と言い返したことがスマッシュファンへの高ポイントにつながったようだ。
     しかし、その後は何のアクションもないまま話は立ち消えになったようだった。華名は「闘いたい相手は自分で選ぶ」とし、完全な状態には程遠い野崎渚(NEO)を対戦相手に選んだ。これでは米山から「勝てそうな相手としか闘わない臆病者」と言われても仕方ないのではないか。過去、JWPではなんの実績も残していないだけに、やりにくさを感じていたのだろうか。
     そして迎えたこの日の板橋大会。華名はインフォメーションコーナーをさえぎりリングに上がった。そこで米山は、スマッシュ11・22JCBホールへの参戦を表明。さくらえみのパートナーとして朱里&華名組と対戦するとアピールしたのである。
     高橋奈苗の出場がかなわないことにより、いったんは消えかけたさくらの主張。しかし、朱里のほうから「(華名よりも)私はむしろさくらさんと闘いたい」との発言があった。そこで米山は、さくらのパートナーになることを思いついたのだ。さくらとは「米桜」と呼ばれるタッグチームでもあり、なんといっても髪切りマッチでのタイトル戦が記憶に新しい。物議を醸した遺恨なき髪切り対決だが、遺恨がないからこそ、髪切りの延長上に11・22JCBがあるのではないか。さらには「話題にならなければ意味がない!」と言い切り米山革命をぶち上げた米山にとって、ビッグマッチへの侵攻は格好の話題である。JWPと無差別級王座の存在を知らしめることにもつながる。
    「さくらさんのパートナーは私で大丈夫だと思いますよ。髪切りをやったのは、さくらさんが、米山革命が停滞してるから悔しい思いをさせて喝を入れようとしたのがきっかけでしたよね。こんどはそのさくらさんのパートナーを誰にしたらいいかと困ってる。だったら私が行くしかないでしょう。タッグマッチだけど大きな会場に(JWP認定無差別級王座の)ベルトをもっていくのが米山革命だと思うし、朱里とはリング上で当たるのが楽しみです。華名? “口だけ星人”の華名には興味はないですね。前回会場にいったらその後何のリアクションもなくてずっとアタマにきてたんで、せいぜい広告塔になってもらうくらいですね」(米山)
     さくらにも、米山との出陣に異論はないはず。朱里&華名組vsさくら&米山組の実現は高いとみた。正式発表を待ちたい。

    (新井 宏)

    2010.10.24 北千住シアター1010 総評 

     米山革命真っ只中のJWP。米山自身はもちろん、所属選手全員の意識革命を求められているのが、米山革命の本質である。
     米山を支持するコマンド・ボリショイは、アイスリボンのICE×60王座を保持することで他団体の若手に胸を貸す道を選んだ。Leonは女子プロレス界期待の若手たちと組んで“獅子の穴”なるグループを結成した。春山香代子が頑なにJWP認定無差別級王座に固執するのも、春山らしいやり方である。それぞれがそれぞれの特色を持ってこそ、プロレスラーとしてのカラーが生まれる。昨今のJWPからは選手それぞれの個性が薄くなりがちだった。だからこその米山革命。ならば、倉垣翼はどうなのか?
     この日、米山革命勃発以来はじめて、倉垣が倉垣の方向性を示してみせたといっていい。石川修司との一騎打ち。男子レスラーとのシングルマッチが、倉垣の選んだ米山革命への返答である。
     倉垣のパワーが男子のヘビー級レスラーにどこまで通じるのか。石川との対戦が決まったとき、「(アルゼンチンバックブリーカーで)担ぎたい」との気持ちが真っ先に飛び出した。石川との身長差は約30センチ、体重差は実に50キロもある。かなりまえに金村キンタロー、黒田哲広、MEN`Sテイオーらとシングルで闘った経験があるにせよ、石川は倉垣にとってもっとも体格差のある相手である。しかも先日、大日本のリングで壮絶なデスマッチをおこなったばかり。常識的には無謀な挑戦ながら、このところ大きな話題のなかった倉垣にはイメージを変える大チャンスでもあった。
     そして倉垣は、石川をアルゼンチンで担ぎ上げることに成功した。短時間ながらもしっかりと担ぎ上げたとき、倉垣には「やったぞ!」との思いがこみ上げてきた。しかし、結果的には石川のスプラッシュマウンテンに砕け散った。「メタルウイング、ウイングクラッチホールドにもっていけたらいけたんじゃないかと思うんですけど…」と倉垣。実際、そこまでもっていくことはかなわなかった。久しぶりにファイヤーバードの体勢に入ったものの、阻止されてしまった。とはいえ、倉垣が奥の手のファイヤーバードを“思い出した”ところにこの試合の価値はあったのではないか。これほど勝ちに貪欲になった倉垣は久しぶりに見たような気がする。これも、米山革命効果なのだ。
    「自分は前から男子とやりたいとは言ってたので、米山革命だからっていうのはないんですよ」と倉垣は言うものの、このムーブメントがあったからこそ団体が実現に向けて動いたのも事実。チェリーの無差別級王座挑戦表明がなければ、石川の参戦はなかったかもしれないからだ。この流れに乗り、倉垣は念願の一戦を実現させ、倉垣にしか出せない個性をようやく前面に押し出すチャンスをつかんだ。対男子路線は今後も継続していくつもり。対男子で実績を作ってからあらためて無差別級王座獲りに名乗りを上げるのも悪くない。むしろそこでそれ相当の実績を積み重ねなければ所属選手による挑戦復活はかなわないだろう。次の相手は誰になるのか。そして、倉垣がJWP所属選手からの無差別級王座挑戦を復活させるのか、注目である。

    (新井 宏)

    2010.10.10 東京キネマ倶楽部 総評 

     前回のキネマ大会でコマンド・ボリショイにピンフォールを奪われた春山香代子。ボリショイからは「シングルやりたいなら私のICE×60のベルトに挑戦してこいよ」と挑発された。
    ここはボリショイから雪辱し無差別級王座奪回への足がかりにしたいところだが、ICE×60王座には、体重60キロ以下という制限がある。もともとアイスリボンの若手中心のベルトとのイメージがあったこのタイトル。とはいえ、市来貴代子、さくらえみが巻いた場合には先輩越えのテーマが挑戦する若いレスラーには課せられた。そしてJWPのボリショイが、アイスリボンのみなみ飛香から奪取しリターンマッチも受けたことにより、ボリショイと飛香のストーリーを象徴するアイテムかと思われた。
    ところが、ボリショイのほうからまさかの春山指名。しかもこれは「体重を落としてこい」との減量命令でもあったのだ。米山革命の勃発により個々の変化も求められているJWP。とはいえ、春山からすれば減量に応じるつもりは微塵もない。そもそもICE×60王座には興味がないし、減量といわれても現在の体調こそ彼女にとってベストなものだと考えている。無理に体重を落とせばパワーも落ちるしスピードもどうなるかわからない。さらによくなる可能性もあるかもしれないが、そうなる保証などどこにもないのだ。たしかに、無差別挑戦への実績作りといわれれば、そうかもしれない。が、減量によって「プロレス人生が変わってしまうかもしれない」との恐怖感に襲われてもいた。
    「今日の試合、無差別級のタイトルマッチと同じくらい緊張しました」と、春山はいう。この日のメインは米山vsH・ヘイトレッドの三冠戦だった。セミのボリショイvs春山はダブルメインといっていいほど緊張感に溢れた闘いだった。それを現出させたのが、春山のこの試合にかける意気込みだった。春山は無差別級タイトルマッチと変わらぬモチベーションで、ボリショイへの雪辱を期していたのだ。
    「忘れていた感覚が蘇りました。毎回こういった闘いをしていかないと」と、試合後の春山。メイン後にはリング上で大の字になる米山に水をかけて無言のメッセージを送った。米山は現在もJWP所属選手の挑戦は受けないつもりでいる。しかしボリショイを倒したことで、春山は一歩前進と考えている。米山を振り向かせるために、あらゆる手段を駆使していかなければならない。減量ももしかしたら米山の視界に入る好材料かもしれない。が、他人から言われてするのでは意味がない。春山は春山の考えから、米山を追っかけていくつもりだ。

    (新井 宏)

    2010.9.26 東京キネマ倶楽部 総評 

     米山香織の保持するJWP認定無差別級王座の次期挑戦者候補に、ヘイリー・ヘイトレッドが急浮上した。ヘイリーは高い潜在能力を持ちながらも、日本ではなかなかその実力が十分には発揮できなかった選手。しかしながら今回は通常よりも長く日本に滞在する予定というから、彼女の実力が一気に開花する可能性が高い。ヘイリーがターゲットに絞ったのが、無差別級王者に君臨する米山。この日のメインでは激しくやりあい、試合後には舌戦を展開した。米山は無差別級王座をかけての闘いに覚悟を決めた。一方のヘイリーはAIW世界女子、TLW世界女子の2冠を保持しているため、現地サイドの認可がおりれば、一挙に三冠戦となる可能性もありそうだ。
     ヘイリーは今回のチャンス到来に自信満々。これまで何度も来日しているものの、具体的な王座挑戦の話が出てくることはなかった。しかしながら自分よりも小柄な米山がチャンピオンということもあり、「ヨネヤマには絶対にピンフォールをとられない」といまから言い切っている。実際、アメリカにいるときでも米山の闘いぶりはDVDでチェックしていたのだという。
    「ヨネヤマは闘うチャンピオン」とヘイリーは現無差別級王者を評価している。それは、米山革命を指してのコメントなのだろう。これまでにはない発想でJWPをアピールしていくのが王者・米山の役目。さくらえみとのカベジェラ戦や、1日2試合のタイトルマッチも敢行したばかりで、高橋奈苗から奪取以来、4度防衛のハイペースなのだ。大型外国人との防衛戦も最近ではなかったこと。外国人レスラーの無差別級王座挑戦は、日向あずみvsアメージング・コングまで遡らなければならない。
     外国人レスラーとの防衛戦は、同時に無差別級王座の海外流出というリスクも抱えている。米山自身も外国人との対戦が多いとはいえないため、一歩間違えば米山革命崩壊の危機にもなりかねない。それでも米山は、近年になかった外国人レスラーとの防衛戦をおこなうつもりでいる。すべては米山革命の遂行と、今年中にNEOの田村欣子との対戦を実現させるため。タムラ様もNEOの10・11後楽園ホールで栗原あゆみの挑戦を受ける2冠防衛戦をおこなう。米山としてはヘイリーを退け、両者ともベルトを持った状態で対戦したいところ。米山vs田村が実現し最高峰タイトルでの三冠戦となれば、米山革命最大の山場、かつ、今年の女子プロマットにおけるクライマックスか。
    (新井 宏)

    2010.9.19 新宿FACE 総評 

     遺恨こそないものの、髪の毛をかける意味はあった。米山香織vsさくらえみのJWP無差別級選手権試合。試合後に米山革命をぶち上げた高橋奈苗戦とは異なり、こんどはどちらが負けても丸坊主になる条件が付けられている。決着がついた時点で、米山かさくらの髪の毛が切られてしまうのだ。
     当初は、米山からの指名に乗り気ではなかったさくら。彼女がタイトルマッチに応じたのは、本来なら集中すべきアイスリボン9・23後楽園での里村明衣子戦にJWPのベルトを持ち込もう、女子プロレス界に大きなうねりを巻き起こそうとのアイデアが思い浮かんだからだ。さらには、米山革命に対する“ダメだし”も含まれている。「他団体で他団体選手の挑戦を受けるっていうのに、誰も名乗りをあげてこない。ほかに届いていないのが悲しい」と、さくら。実際、新人の帯広さやかがアピールしているだけで、他団体の大物レスラー相手に防衛戦がおこなわれる目途はたっていない。「米ちゃんを泣かせることで、もっと本気になってほしい。負けるところから、ホントの米山革命がはじまるんだよ!」
     そこから生まれた髪切りマッチの発想。遺恨はなくても、髪の毛をかけることによって米山革命は本当の意味で動き出したのかもしれない。この試合が米山、さくら、さらにはJWPやアイスリボンの選手たちになにをもたらすのか、女子プロ界に新たなうねりを巻き起こすのか。結果的に、この試合は大きな話題を呼び、JWP史上初めて、大会前の時点で指定席が完売となっていた。当日に立見席を増やす形で団体側は対応。おそらく、新宿FACEにおける女子プロレスの観客動員記録を打ち立てたのではなかろうか。
     最終的に試合を制したのは、王者・米山のほうだった。途中、フォールの体勢に入りながらも米山がさくらを起こすシーンがあった。このとき一瞬、さくらの髪の毛を切りたくないとの気持ちが米山に走った。しかし、どちらかが負けなければ闘いは終わらない。米山が3カウントを奪われれば、自分が丸坊主になるのはもちろん、米山革命の強制終了も考えられる。「米ちゃんが勝ったらその後何もないんだよ」と言われていたからこそ、見返すためにも米山は心を鬼にしなければならなかった。そして勝ちとった重すぎる3カウント。米山は自分の手でさくらの髪の毛にハサミを入れ、バリカンで剃りあげた。号泣する王者…。しかし、これによって米山はまたひとつ、王者として大きくなった。
    「最初は何で髪の毛をかけなきゃいけないんだろうって。こんなに試合をしたくないと思ったのははじめてでした。でもこの試合から、自分は生まれ変わったと思ってます。さくらさんの髪の毛といっしょに、自分の弱い心も切って捨てました。もう、髪の毛をかける試合はしません。髪をかけなきゃお客さんを呼べない試合や、底力の出ない米山はもういないので、かける必要はありません。でも、さくらさんがお膳立てしてくれたから超満員になった。試合には勝ったけど勝負では負けたと思ってます。そこで悔しい思いをしたので、これからは弱い自分の心とも別れていきたいと思います」
     米山革命とは、米山本人や賛同したボリショイだけのためのムーブメントではない。女子プロ勢力図の塗り替えが確実な来年以降、老舗のJWPが老舗の看板にあぐらをかいていられるわけもない。春山、倉垣、Leonをはじめとする所属選手たちの意識改革こそ求められているのである。さくらは「米山革命が停滞している」と言っていたが、まだ答えが出たわけではないだろう。SMASHへの殴りこみや、Leonが他団体の若手と組みだしたこと。さらには蹴射斗のJWP退団も、自分を変えたいという、ある意味で革命効果なのではなかろうか。徐々に成果は出ているのだと思う。問題は、それがどう結実し、広がりを見せていくかにある。
    さくらの坊主頭と米山の涙で、ほかの選手たちがなにを思ったか。今大会のエンディングでは、「さくらの気持ちをムダにするな!」という声があちこちから聞こえてきた。米山革命の遂行は、JWP全体の使命である。   

    (新井 宏)

    2010.8.29 東京キネマ倶楽部 総評 

     JWP今年の夏女は、コマンド・ボリショイとJWP認定無差別級王者の米山香織だった。今年はタッグトーナメントでおこなわれたのだが、シングルでの開催だった昨年も米山が優勝した。ということは2年連続で、米山が夏女の座を射止めたことになる。とくに今年の場合、米山は“米山革命”を実行中。それだけに、例年の夏女とは意味合いが違うのだ。
     革命を宣言した手前、米山は敗北が許されない状況に追い込まれた。何を主張しても、負けがつづくようなら説得力がゼロになるというもの。常識的に考えれば、相当なプレッシャーに襲われるだろう。トーナメント中で革命が立ち消えになる場合だってありえるのだ。しかし米山は、まずはしっかりと結果で答えを出した。単純に試合に勝つだけでタイトルには挑戦できないという問題をJWP所属選手に突きつけた格好だが、やはり優勝と敗退では大きく異なる。
     ではなぜ、米山はこのトーナメントで優勝できたのか。そこには、ボリショイの存在を忘れてはならない。“米山革命”のポイントとして、ボリショイは大きな役割を果たしている。米山一人での革命ならば、心もとないのも本当のところだ。しかし革命宣言と同時にボリショイという“同士”を得たのは大きい。ボリショイもJWPを変えなくてはといろいろ考えていた団体のまとめ役。そこへ訪れた革命宣言という絶好の機会。米山はサポート役に名乗りを上げたボリショイがいたからこそ、タッグトーナメントに平常心で臨めたのだろう。
    「(高橋奈苗から)ベルトを獲ったときにヘンな開き直りがあって、しかもボリショイさんがサポートしてくれるっていってくれて、またひとつヘンな開き直りができたんですね。だから、安心してトーナメントを闘えました。ふだんなら先輩に引っ張ってもらうところかもしれないけど、いまは自分がチャンピオンだし、ボリショイさんをリードしていけたらいいって気持ちでもいけました」(米山)
     ある意味でリラックスしたまま成し遂げた優勝だった。そのリング上で、米山は革命の第2弾実行を予告。アイスリボンのさくらえみを次の無差別級王座挑戦者に指名したのだ。
    他団体で、他団体選手との防衛活動を中心におこなっていこうとする現・無差別級チャンピオン。ではなぜ、米山はこの時期における米桜対決を望んだのだろうか。
    「日向さんに挑戦したときも春山さんに挑戦したときも、さくらさんはすごく自分を応援してくれたじゃないですか。そのときって、さくらさんは私がベルトを巻いたら一番先に挑戦するねって言ってくれてましたよね。そしていま、自分がこうして現実にチャンピオンになったんですよ。だからやっぱり、さくらさんとやりたいなって。今年の3月に米桜対決はやりましたけど、あのときはどちらもリーグ戦の消化試合で…。だけど今回はメインで。9月19日の新宿FACE大会で実現させたいです」
     しかしながら、さくらはその4日後にアイスリボンの後楽園大会を控えている。さくらは8・7板橋で仙女・里村明衣子とのシングルマッチを要求した。そちらに集中したいとの考えだけに、実現するかは微妙な段階だ。
     たとえ拒否されたとしても、米山はあきらめないつもりでいる。なぜなら米山は自称「史上もっともスリリングなチャンピオン」。いつどこでベルトを落とすかわからないだけに、なるべく早い段階で念願のさくら戦を実現させたいと思っているからだ。とはいうものの、状況が状況だけにどうなるか。米山革命を推進するためにも、さくら戦はなんとしても実現させなければならない。そしてもちろん、防衛も…。
    (新井 宏)