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    2012.4.8 東京キネマ倶楽部 総評 

    「タッグリーグ・ザ・ベスト2012」を制し、タッグ2冠王に輝いたのは、植松寿絵&輝優優の植松★輝だった。JWPのタッグ王者に返り咲いた2人は、今年引退。植松はWAVEの4・30後楽園でリングを下り、輝も12月での引退を発表している。
     植松★輝で活動するのも、あとわずか。ここへきてWAVE認定タッグ王座を守るとともに、JWPでのタッグリーグ戦も制してみせた。両者とも、体が悪くてプロレスをやめるわけではない。ともに最高の状態でリングを下りるというのが、共通の思いでもある。それがあるからこそ、プラスアルファの力が湧き出てくるのではなかろうか。
     タッグ王者としての勝ち逃げ。それが植松★輝の狙いでもある。最高のタッグチームを証明し、最強のタッグチームのまま、マット界から去ろうとしている植松★輝。2人の貢献度を考えれば、それはそれでありだろう。
     しかしながら、黙ってそのまま送り出していいものでは決してない。この日の試合後、LeonとRayのマスカラボラドーラスが挑戦に名乗りを上げた。確かにリーグ戦では決勝まで勝ち進むことはできなかったが、開幕時には優勝候補の一角とも考えられていたチーム。実際、2人のコンビネーションは悪くない。それどころか他団体でもマスカラボラドーラスでリングに上がり結束は固くなっている。アメリカにも遠征し、SHIMMERタッグ王座にも挑戦した(当時の王者は浜田文子&栗原あゆみ組)。となれば、スタート当初よりもチームとしてのクォリティーを上げているのは間違いない。実績を積み上げたこれからのほうが、むしろボラドーラスにはチャンスなのだ。
     タイトルマッチは4・22後楽園で開催。JWP20年の歴史の中で、他団体ながら植松★輝はタッグ部門にしっかりとその名前を刻んでみせた。ならば、こんどはその記念大会でマスカラボラドーラスがタッグのスペシャリストを引き継ぐ番。Leon&Rayがタッグ戦線の充実を継承するのか、それとも植松★輝が勝ち逃げで、またイチからやり直しか…。
    倉垣vs春山の無差別級王座をかけたJWP頂上対決、米山vsさくらの条件マッチには、米山のタイ移住とさくらのJWP入団がかけられている。さらにはJWPジュニア王座を今度こそ奪回すべく、成長著しいラビット美兎が下野佐和子の切り崩しに出陣。そして、今大会のエンディングで決まった、マスカラボラドーラスが植松★輝に最後の挑戦。またひとつ、4・22後楽園の楽しみが増えた。

    (新井 宏)

    2012.3.25 板橋グリーンホール 総評 

    「タッグリーグ・ザ・ベスト2012」の全公式戦が終了した。各チームの戦績は以下の通り。
    <レッドゾーン>
    “ハルクラ”春山香代子&倉垣翼組 3勝2敗=6点
    “ピコラビ”コマンド・ボリショイ&ラビット美兎組 1勝3敗=2点
    “植松★輝”植松寿絵&輝優優組 4勝=8点
    “十文字姉妹”DASH・チサコ&仙台幸子組 2勝2敗=4点
    “月の上のぽょ”ムーン瑞月&勝愛実組 4敗=0点
    <ブルーゾーン>
    “思春期ーズ”阿部幸江&チェリー組 2勝2敗=4点
    “マスカラボラドーラス” Leon&Ray組 2勝1敗1分=5点
    “ラブドライト”中森華子&大畠美咲組 3勝1敗=6点
    “もっちー7”川佐ナナ&宮城もち組 4敗=0点
     この結果により、4・8キネマ倶楽部での決勝戦が、植松&輝組vs中森&大畠組に決定した。植松★輝は、ハルクラとの対決も制してぶっちぎりの全勝で勝ち上がってきた。植松がWAVE4・30後楽園で引退するが、この日にはさらに輝が、今年12月での引退をOZアカデミーのリング上から発表した。タッグのスペシャリストである植松★輝は、現在WAVE認定タッグ王者。植松の引退までに獲れるタイトルはすべてものにするつもりであるだけに、輝の引退発表も重なり、かなりのモチベーションで向かってくることは確実である。植松が引退すれば、輝がほかのコンビでタッグ王座を獲りにくることは考えにくいだけに、このチームこそJWP認定タッグ&デイリースポーツ認定女子タッグの2冠にもっとも近いと言っていいのだろう。
     それでも、中森&大畠組にとっては、なんとしても思い出づくりのタッグリーグ戦制覇を阻止しなければならない。彼女たちには、現在と近未来のJWPを活性化させなければならない使命があるのだ。植松★輝がベルトを巻けば、王者のまま返上する可能性が高いのではないか。植松引退までの1ヵ月未満でタッグタイトルマッチがおこなわれる回数は決して多くはないはずだ。だからこそ、ここでラブドライトが敗れれば、タッグ2冠は植松★輝の返上によりまたもや仕切り直しとなってしまうだろう。確かに、引退の理由がケガや病気ではないだけに、植松★輝は現在もナンバーワンタッグの地位をキープしている。たとえ最強ではなくても、トップで居続けるしたたかさがこのチームを支えてきた。ラブドライトは闘いを通じて、植松★輝から何かを盗むことができるのか。それが実現できれば、ベルトと同時に植松★輝の後継者的ポジションまでゲットできるかもしれない。4・8キネマは、タッグのカテゴリーの未来をかけた大勝負となりそうだ。

    (新井 宏)

    2012.2.12 東京キネマ倶楽部 総評 

    「JWPタッグリーグ・ザ・ベスト2012」が佳境を迎えた。メインのレッドゾーン公式戦、“ハルクラ”春山香代子&倉垣翼組vs“植松☆輝”植松寿絵&輝優優組は、決勝進出を占う大一番だった。この試合で勝ったほうが、優勝&タッグ2冠王に向けて大きく前進することは間違いないからだ。
     それをお互いが理解しているからだろうか、両軍ともに、慎重な試合運び。どちらも負けたくない、負けられないとの気持ちが伝わってくる闘いだった。それだけに、実力が拮抗していることもあって決め手に欠けていたのも事実。時間切れ引き分けが現実味を帯びていたちょうどそのとき、植松がソラリーナを決めて決着をつけた。倉垣を場外に送り出し分断した隙を突き、一気に春山から決めたのである。
     これにより、植松☆輝は無傷の3連勝。いっぽうのハルクラは1勝1敗の五分というまさかの結果になってしまった。植松組の公式戦は、あと1試合。しかもホームリング(3・6WAVE)での“月の上のぽょ”ムーン瑞月&勝愛実戦とあって、負けることは考えにくい。もし引き分けに持ち込まれても、首位での決勝進出が確定するのだ。そのうえ、植松☆輝は植松の引退までにタッグのベルトすべてを腰に巻くといきまいている。WAVEではWAVE認定タッグ王座を獲得し、こんどはJWPのタッグ2冠(JWP認定タッグ王座&デイリースポーツ女子タッグ王座)に照準を絞っている。モチベーションが高いだけに、取りこぼしの可能性は限りなく低そうだ。 
    崖っぷちに追い込まれたハルクラは、3・4キネマでの“ピコラビ”コマンド・ボリショイ&ラビット美兎組と、3・25板橋での瑞月&勝組が残っている。ボリショイ組に勝ったとしても、その2日後のWAVEで植松組が1点でもあげればハルクラには終戦となってしまう。ハルクラが決勝進出を果すには、植松組が6点どまりで、ハルクラが2戦2勝が最低条件。そこから同点決勝に持ち込むしか道は残されていないのだ。正直、ハルクラには奇跡を待つしか逆転の術はない。
     いっぽうのブルーゾーンは混戦の真っ只中。“思春期ーズ”阿部幸江&チェリー組、“マスカラ・ボラドーラス”Leon&Ray組、“ラブドライト”中森華子&大畠美咲組、“ザ☆WANTED!?”KAZUKI&モーリー組に決勝進出の可能性が残されている。また、3連敗で望みの消えた“もっちー7”も白星にはつながらなかったものの、印象深い試合内容で観客の視線を集めることに成功した。もちとタッグを組んだことが川佐に好影響を与えている。川佐はこの日の夜、WAVEのキネマ大会で下野佐和子の保持するジュニア2冠王座(JWP認定ジュニア王座&POP王座)への挑戦を表明した。WAVEでの実現が濃厚だが、長きにわたり流出しているJWPのベルトだけに、ぜひとも奪還してほしいところである。

    (新井 宏)

    2012.2.3 板橋グリーンホール 総評 

    「JWPタッグリーグ・ザ・ベスト2012」第2戦は、公式戦3試合がおこなわれた。
     大会のオープニングマッチともなった、“ピコラビ”コマンド・ボリショイ&ラビット美兎組vs“月の上のぽょ”ムーン瑞月&勝愛実組は、大ベテランのボリショイが新人たちに囲まれる図式にもなっていた。これまでのJWPなら考えられなかったことながら、ここのところ新人が続々とデビューしているだけに、ある意味で現在における団体のカラーを象徴するかのようなカードにもなっていた。さらにはこの試合で、ムーンvsラビットの姉妹対決が実現。いきなりの姉妹喧嘩からスタートし、最後は妹が姉をピンフォールしてみせるシーンが現出した。が、これはサプライズでもなんでもない。負傷欠場から復帰もいまひとつ自分のスタイルを確立できていないムーンに対し、ラビットは小柄な体を生かしたスピーディーなムーブで急上昇中。チームとしても1勝1敗の五分にしたことで、レッドゾーンからの決勝戦進出もまだまだ視野に入っている。すべてはラビットの活躍しだいか。この結果で勢いがついたとしたら、おもしろい存在になってくるだろう。
     反対に、レッドゾーンで崖っぷちに立たされたのが、仙女から参戦の“十文字姉妹”DASH・チサコ&仙台幸子組である。戦前は優勝候補とも目されていただけに、たとえこの日の相手がタッグのスペシャリスト、植松寿絵&輝優優組だったとしても、痛い黒星には変わりがない。まさかの2連敗で、もう1失点も許されない状況に追い込まれた。残りの公式戦は、ボリショイ&ラビット組と、ムーン&勝組。残り全勝が最低条件で、あとはほかのチームの様子を見ることになりそうだ。
     十文字姉妹とは対照的に、植松&輝は手堅く2連勝。こちらは春山香代子&倉垣翼との公式戦が天王山になってきそうな予感がする。十文字姉妹としては、星の潰しあいを期待しなければならない。
     ブルーゾーンでは、“ザ☆WANTED!?”KAZUKI&モーリー組が“マスカラボラドーラス”Leon&Ray組と対戦。こちらはメインにふさわしい好勝負となり、時間切れで引き分けた。これにより、どちらも3点でブルーゾーンの首位に並んだ。ザ☆WANTED!?は3試合での3点、ボラドーラスが2試合での3点で、試合数の違いもあるが、ドローでの1点は、両軍にとって1得点なのか、それとも1失点なのか。KAZUKIが言っていたように、「この1点がどう響くか楽しみ」である。
     それにしても、ザ☆WANTED!?の粘りは目を見張った。Leon&Rayはタッグチームの経験こそ浅いものの、ひとたび動けば優勝候補に挙げたい闘いぶりを見せつける。それだけに、ボラドーラス有利と思われていた公式戦。ところが、前半ではKAZUKIが耐え抜き、終盤ではモーリーが大奮闘。どちらかと言えば、ザ☆WANTED!?のほうが戦略的に上回っていたようでもある。だとすれば、ザ☆WANTED!?に1得点、ボラドーラスには1失点となるが…。そうなれば、ザ☆WANTED!?もまだまだ優勝圏内。大混戦となりそうなタッグリーグ・ザ・ベストである。

    (新井 宏)

    2012.1.22 ラゾーナ川崎プラザソル 総評 

     1・9キネマで開幕した「JWPタッグリーグ・ザ・ベスト2012」が2戦目を迎えた。今大会では公式リーグ戦3試合がおこなわれ、“マスカラ・ボラドーラス”Leon&Ray組、“植松輝”植松寿絵&輝優優組、“ラブドライト”中森華子&大畠美咲組が、“もっちー7”川佐ナナ&宮城もち組、“ピコラビ”コマンド・ボリショイ&ラビット美兎組、“ザ☆WANTED!?”KAZUKI&モーリー組をそれぞれ破り、勝ち点を上げた。まだ2大会とあってどのチームが飛び出すかは読めない状況ながら、ブルーゾーンでは5チーム中4チームが同点で並んでいる。ブルー、レッドの両ゾーンとも、かなりの混戦模様になるのではなかろうか。
     ブルーゾーンにおいて、“思春期ーズ”阿部幸江&チェリー組についでおもしろい存在になってきそうなのが、マスカラ・ボラドーラスである。Leon、Rayともパートナーを意識したおそろいのハーフマスクで登場。今シリーズがタッグの祭典であることをビジュアル的にも強調してくれそうだ。
    しかも、このチームは他団体でも自分たちをPRするつもりでいる。タッグリーグ・ザ・ベスト限定ではなく、継続してやっていく意思の表れなのだろう。たとえば、アイスリボンの1・25道場マッチに参戦し、藤本つかさ&帯広さやか組と対戦、さらにはセンダイガールズ2・5仙台にも出場し、このタッグリーグ戦にもエントリーしている“十文字姉妹”DASH・チサコ&仙台幸子組と対戦することになっている。この両チームは別ゾーンのため、両軍がJWPで対戦するにはともに決勝進出を果さなければならない。仙女での対戦がマスカラ・ボラドーラスvs十文字姉妹の決勝戦の予告編となるのか、こちらも興味深い。
     この日の試合では、Rayが川佐にムーンサルトプレスを放つと同時に、LeonがもちにLeonストーンを決めていた。チームワークも取れており、まだ初戦ながら優勝候補のひとつと考えていいかもしれない。
     セミでおこなわれたピコラビvs植松輝の公式戦は、ラビットと植松の遺恨(?)を引きずる闘いとなった。前回の対戦でラビットに引っ掻き回されカリカリしている植松。平静を取り戻そうとはするものの、この日もラビットにペースを乱され、なかなか自分の試合をさせてもらえない。そこを輝が立て直して最終的には植松輝が勝利。こういうところでしっかり白星を手にできるのがタッグチームとしての強さであり、植松が輝に全幅の信頼を寄せている証なのだろう。植松にとっては最後のタッグリーグ戦となるだけに、引退まえに植松輝として有終の美を飾りたいところだ。
     メインのザ☆WANTED!?vsラブドライトも、自主興行を巡る因縁の闘い。こちらはラブドライトが白星を手にし、両軍とも1勝1敗となった。そのいっぽうで、色紙の売り上げを競い合う“裏タッグリーグ戦”ではザ☆WANTED!?がラブドライトに辛勝。「お客様へのまごころなら自分たちが一番」と宣言し、自腹でのささやかなプレゼントまで用意しているのだという。こちらの結果がリング上の結果とどうリンクするのか。こちらも注目しておく必要がありそうだ。ちなみに、この日の色紙売り上げナンバーワンは、ボリショイ&ラビットのピコラビだった。(新井 宏)

    2012.1.9 東京キネマ倶楽部 総評 

     賛否両論の渦を巻き起こした米山香織の引退撤回騒動。そのすべてが解決したわけではないが、大晦日の年越しプロレス、1・8ブル中野引退興行への出場を経て、米山が本来なら上がるはずのなかったホームリングに帰ってきた。試合は、6人タッグマッチ。プロレスをやりたくてやりたくて、本当にやりたくて、最後の最後の瞬間に自分の気持ちに正直になった米山。もしかしたら引退を撤回したことで、もっとプロレスをやりたかったとの思いが急激に減退してしまうかもしれない。が、そうなってしまったとしたら主客転倒、引退したほうがよかったということになってしまう。これからの米山には、いままで以上にプロレスに対する思いをぶつけるファイトが望まれるのだ。
     それでも、二度とおなじことを起こさないため、ペナルティー的なことは受け入れる必要がある。ヘイリー・ヘイトレッドと保持していたタッグ三冠は返上。文字通りゼロからのスタートで、米山は2012年JWP開幕戦のリングに立った。さらにはタッグリーグ・ザ・ベストへの不参加もペナルティーのひとつなのかもしれない。Leonのパートナーが「X」となっていたため、そこに入るのではないかと予想した人もいるだろう。しかし現実には、米山がエントリーされることはなかった。タッグリーグ戦の期間中、米山は彼女自身で引退ロードから復活ロードへと切り替えていかなければならないのだ。
     試合では、Leonのキャプチュードバスターにフォール負けを喫した。試合中もどことなく元気全開までに見えなかったのは、心のどこかにまだ迷いが生じているからなのか。プロレスをやるやらないの迷いではなく、問題を起こしてしまったことへの謝罪の気持ちから、そうなってしまったのだろう。それでも米山は試合後、「リングに上がりつづける以上は、みなさんに元気を与えられるような、米山香織らしい試合をやっていきたいと思ってます。これからもリングの上での私を見てください、よろしくお願いします!」と高らかに宣言。すべてをプラスに変えていくパワーが、彼女にはあると信じている。「あのとき撤回してよかったんだ」。米山のがんばりとJWPのサポートしだいで、そう思える日は必ずやってくる。
     さて、今大会では前述したリーグ戦「タッグリーグ・ザ・ベスト2012」がスタート。10チームが2ブロックに分かれて公式戦をおこない、各ブロックの最高得点チームが4・8東京キネマ倶楽部にて優勝決定戦をおこなう。勝者は自動的に、米山組が返上したJWP認定タッグ&デイリースポーツ女子タッグ王座を獲得できるとあって、熾烈な闘いが展開されそうである。
     開幕戦では3試合がおこなわれ、KAZUKI&モーリー組(ザ☆WANTED!?)が川佐ナナ&宮城もち組(モッチー7)、阿部幸江&チェリー組(思春期ーズ)が中森華子&大畠美咲組(ラブドライト)、倉垣翼&春山香代子(ハルクラ)がDASH・チサコ&仙台幸子組(十文字姉妹)をそれぞれ破り幸先いいスタートを切った。実績からしてハルクラがもっとも優勝に近いと思われるが、この日に関しては意外にも(?)、阿部とチェリーの思春期-ズに大きな勢いが感じられた。これでもかというくらいのヤングな昭和ネタで、相手を脱力させ、若さで圧倒しなければならないラブドライトのほうが後手にまわってしまったのだ。ザ☆WANTED!?をちょっぴり離れた阿部が水を得た魚のようにいい味を出していたのは大きな収穫。「更年期障害疑惑」があるためリーグ戦が進むにつれての失速という展開もあるかもしれないが、さいわい、タッグリーグ・ザ・ベストは過密日程とはなっていない。ブルーゾーンには本命チームがいないだけに、もしかしたら、もしかするかもしれないのだ。        

    (新井 宏)

    2011.12.23 後楽園ホール 総評 

     引退セレモニーの最中に引退撤回とは、おそらく世界初の出来事だろう。今年の7・10キネマ大会で突然かつ不可解な引退発表をおこなった米山香織が、こんども突然、しかも土壇場での引退撤回&現役続行を宣言した。
     レスラーが引退する場合、大きく分けて2つのパターンがある。ひとつはケガや病気など、つづけたくても肉体的につづけられないケース。もうひとつは、体の動く元気なうちに第2の人生に歩みだそうというもの。米山の場合、後者だった。しかしながら、第2の人生においての目標が具体的に決まっているわけでもない。「ゴールを決めて、それに向けて全力で駆け抜ける」というのが、彼女のやり方、ポリシーだった。だからかつては10周年を区切りとするつもりでいた。しかし当時はJWP認定無差別級王座に届かなかったこともあり、最高峰のベルト奪取が続行のモチベーションにもなっていた。王者としてベルトを巻いてからは米山革命を提唱しながらも、次のゴールを30歳に設定した。そこで彼女が決めたのが、2011年いっぱいという期限だったのだ。
     そのゴールは、あくまでも米山のこだわりで定められたもの。だから、他人が口出しできるものではない。発表当初こそ引退に向けて一直線だった米山。ところが、しだいに心境の変化がやってくる。ボリショイの欠場により急きょ決まった初のアメリカ遠征と、澤宗紀の引退に触発された「やりすぎくらいな引退ロード」が、そのきっかけになった。
     やればやるほど、プロレスは楽しい! 猛烈な引退ロードで、米山は完全燃焼どころかますますプロレス熱が上昇した。立ち姿やマイクアピール、もちろん試合における動きまで、すべてが見事だった。「やめるなんてもったいない」。そんな意見が、引退ロードを目撃した人たちの最大公約数だったと思う。
     と言うことは、米山は引退撤回により多くの人たちの期待に応えたことになる。と同時に、もちろん、批判もあるだろう。いずれにしても米山は、自分の意志で、最後の最後で現役続行を決めた。
    来年のJWPを見渡してみれば、伸び盛りを迎えようとする若い選手が多いことに気づく。その中に米山が入るとすれば、どんな形であれ興味深い。カベになるのもいいし、指導者的立場になるのもひとつの案だ。米山革命の思想を継承しながら、新しいJWPを作っていく。“新生”米山香織の新たなる使命だろう。

    (新井 宏)

    2011.12.16 板橋グリーンホール 総評 

     12・16板橋大会のメインは、“米山香織引退試合の前哨戦”だった。米山と、その米山を送り出す春山香代子が、6人タッグマッチで激突したのである。
    通常、引退試合となれば、現役生活最後の思い出、というセレモニー的ニュアンスが大きかったりするものだ。しかし、この試合に関しては記念マッチの上をいく闘いを期待してしまう。というのも、春山はJWP認定無差別級王座を2年間守り抜き、米山は在位期間こそ春山に劣るものの、防衛回数ではJWPでの新記録を打ち立てている。しかも、両者とも王者時代から決して力が落ちたわけではない。いつベルトを巻いてもおかしくない状態だ。だからこそ、タイトルマッチ級の激闘を見せてもらいたいと思うのだ。
    さいわい、現在の米山は絶好調。ここへきて、「やりすぎ娘」なる新キャラを発見し、引退ロードを猛スピードで駆け抜けている。そして迎える春山とのラストマッチ。そういうこともあって、一見何の変哲もない6人タッグが、“引退試合の前哨戦”になったのだろう。
    実際、無差別級王座を争うヘイリー・ヘイトレッドと倉垣翼の前哨戦同様、米山と春山の直接対決も何度か実現した。エルボー合戦では春山が「やめなきゃいいじゃん!」とメッセージを込めながら打っていく。米山も打ち返すが、そこには春山への返答はない。春山は「米山がなぜ引退するのか、やめる理由が見つからない」と現在でも疑問を抱いている。引退ロードの内容が凄まじいだけに、ますます「不思議な感覚」に陥ってしまうのだ。
    「やりすぎるくらいにやりたいのなら、どっちかが立てなくなるまでやり合いたい」と、春山は言う。同時に、引退してほしくないとの気持ちも強い。が、米山がラストマッチを宣言した以上、たとえ引退を撤回するほどの気持ちになっていたとしても、彼女の最後の相手となる責任が春山にはある。「ありがとうの気持ちよりも、試合後には物足りないと思わせない、後悔させないような試合にしたい」(春山)
    もうこれ以上できない。米山にそう思わせることこそ、デビュー戦や10周年記念試合の相手を務めてきた者の愛情表現なのだろう。米山を心置きなく引退させることが、春山香代子の“使命”となった。                      
    なお、板橋大会の結果から、ブルースターカップ決勝戦のカードが勝愛美vsラビット美兎に決定した。勝は前大会まで全勝できていたのだが、この日は後半で星を伸ばした川佐ナナに敗れ、連勝がストップ。いっぽう、決勝進出の望みをもっていたmasu-meは矢神知樹に初勝利を献上し、自動的にラビットが逃げ切りに成功した。そのラビットはこの日、メインに登場し、先輩レスラーに囲まれながらも大奮闘。結果的には春山の横須賀カッターを食らって3カウントを奪われたのだが、そこには米山から勝負を託されるという師弟関係が垣間見えた。“付き人”のラビットがJWP新人王となり、米山の引退に華を添えるのか。どちらの試合も12・23後楽園が、その舞台だ。

    (新井 宏)

    2011.12.12&13 埼玉・イサミレッスル武闘館 総評 

     米山香織が、自身の引退ロードを前代未聞の猛スピードで駆け抜けている。
     スタートは、12月9日(金)の19時女子プロレスだった。10日(土)にはレイナに参戦し、11日(日)には獅子の穴主催興行からJWPでのダブルヘッダーで、計3試合。さらにはWAVEへ移動し、シングルとバトルロイヤルをこなしている。よねやマニア1&2でそれぞれ2試合ずつをおこない、14日(水)にはアイスリボンで松本浩代と一騎打ち。15日(木)になると、よねやマニア最終日として、仙女の花月とシングルマッチで対峙した。この日までの1週間で、なんと13試合。しかも連戦は終わらず、16日(金)JWP、17日(土)アイスリボン、18日(日)JWP道場マッチまでつづいていく。そして、中4日おいての12・23後楽園で、ついに最後のリングへと向かうことになるのだ。
     では、なにがここまで米山を全速力の引退ロードに駆り立てているのか。
    「私が引退に向かっているときに、それって知られているのかな? 人知れずやめていくのはイヤだなと思ったんです。そんなときに澤宗紀選手がすごい日程で試合に出まくって引退していきましたよね。そこで感動が生まれたし、すごいなって感じたんです。だから、澤選手に影響されたのが、(超ハードスケジュールの)きっかけですね。やりすぎくらいがちょうどいい? 自分は、やりすぎてないなあ。じゃあ、やればいいんだ。やろう! そんな思いつきからアイスリボンの道場をお借りしまして、“よねやマニア”を急きょ開催することになりました」
     “よねやマニア”では、所属団体のJWPとはカラーを変えて、ふだんではできないようなマッチメークにすることを心がけた。しかも、3大会ともまったく異なるテーマをもとうとしたところも斬新だった。そのアイデアは、米山革命の成果でもあるのだろう。
     初日は、米山&高橋奈苗組vs夏樹☆たいよう&世?虎組。現時点ではスターダム勢の他団体参戦は、通常ではありえない。が、米山と奈苗、夏樹の関係を考えれば、最後に肌を合わせておきたいと思うのは自然の感情である。奈苗から無差別級のベルトをJWPに奪い返し、米山革命がスタートを切った。夏樹とはハイスピード王座をかけて空中戦を駆け抜けた仲でもある。さらには、世?虎との最初で最後の遭遇も刺激的だった。「最後に(奈苗と)シングルまでできてよかったです」と、米山。彼女の考える“ザ・女子プロレス”が、そこにはあったのだ。
     2日目には一転して、男子レスラーとの絡みになった。「米山香織が上がっていけたのは蛇界のおかげ」と言うだけに、10年ぶりの復活が待ち遠しくてしかたがなかった。米山蛇織のあとは、マサ高梨とのアイアンマンマッチを敢行。いやでも30分間闘い抜けなければならないルールで、米山はなんとか完走した。
     そして最終日には、「未来を感じたいから」との理由で仙女の花月が抜擢された。一見すれば花月のチャレンジマッチと取れなくもないが、彼女はFlashトーナメントでも実証したように、事実上の仙女ナンバーツーである。「いつでも全力で闘う花月との闘いが大好き。そんな花月に真っ向から挑みたかった。だから花月ではなく、私のチャレンジマッチだったんだよ」と、米山はこの試合を組んだ理由をこう話した。だからこそ、“よねやマニア”のメインに選んだのだ。実際、花月の力強さは驚嘆ものだった。そのうえで勝ったのだから、試合後の喜びようはものすごかった。まるでベルトでも奪ったかのような、ある意味それ以上の弾けっぷりだったのではないか。
    「私とあんたは全然違うけど、言わせてもらうぞ。花月に勝ったぞ! やった、やった! 花月に勝った! リングの上は先輩も後輩もない。それを後輩が言ったら言わされてるっぽいけど、先輩が言ったらそれっぽくないだろ。負けて悔しいっていうのが残るかもしれないけど、その悔いをバネに、がんばってちょ!!」
     最後の「がんばってちょ!!」が、ものすごい決め台詞に聞こえたのは気のせいか。それほど米山が乗りに乗っている証拠でもあるのだろう。引退ロードも終盤に差し掛かり、まさしくやりすぎくらいの猛スピードである。
    「かつてない連戦で、やりすぎ感が出てきたんじゃないですか。これって、快感かな? 心地よい疲労ですね。まだまだできます。なんか、引退の実感がないですね。う~ん、やめたくない。プロレスが大好きなんだって、あらためてこの連戦で感じています」
     現在の米山は、とにかく絶好調。体の不調でリングを下りるわけではないだけに、いまから引退撤回しても、きっと、誰も怒らない。考え直してもらいたいと真剣に思っているのは、決して私だけではないはずだ。

    (新井 宏)
             

    2011.12.11 北千住シアター1010ミニシアター 夜の部 総評 

     倉垣翼の熱望により、米山香織との最後のシングルマッチが実現した。米山はラビット美兎との師弟対決が決定していたが、倉垣からすればこの日しか1対1で闘えるチャンスはない。2試合を課すことになるとはいえ、米山にとっても異存はなかった。
     盟友・米山とのラストシングルであると同時に、倉垣はこの試合を仮想ヘイリー・ヘイトレッドとして臨んでいたようでもあった。もちろん、体格は雲泥の差である。それでも、ヘイリーから無差別級王座を奪わんとする倉垣に米山は、うってつけの相手だったのだ。
     というのも、倉垣は米山革命から大型男子レスラーとの一騎打ちという新機軸を打ち出した。現在では鳴りを潜めているものの、対ヘイリーは、“米山革命の成果”を見せつけるカードにもなっている。実際、前回の対戦では敗れはしたものの、相当に王者へイリーを追い詰めた。現段階で、ヘイリーから無差別級王座を取り戻せるのは倉垣しか考えられない。米山革命があったから、倉垣は対大型レスラー対策をより具体的に練り上げることができるのだ。
     フィニッシュに選んだのは、ファルコンアローだった。この技は、打倒ヘイリーの秘密兵器でもある。公開した時点でもはや秘密ではなくなってしまったものの、米山革命に同調するヘイリーからの勝利を狙っているからこそ、この試合で出してみる意味はあった。 
    ファルコンアローといえば、ハヤブサの得意技。ハヤブサとは6年前、無差別級王座初戴冠を狙う倉垣がファイヤーバードスプラッシュを伝授された関係がある。その甲斐あって、日向あずみから念願の無差別級王座奪取を達成した倉垣。今回もハヤブサから直々に教えを受けるという(12月14日)。米山とは違う大型のヘイリーをしっかりと持ち上げるため、倉垣はファルコンアローの精度を上げようと、あらためてハヤブサから教えを請うのである。
     メインで勝利した倉垣は試合後、米山に向かい2つの約束を交わした。ひとつは、JWP認定無差別級王座をJWPに奪回すること。そしてもうひとつは、タイトルマッチの場であり、米山が引退する12・23後楽園を満員で迎えようということだ。
     さて、引退間近の米山は、現在連戦の真っ只中。12・9の19時女子プロレスからはじまり、10日レイナ、11日には獅子の穴主催興行、JWP北千住大会のあと、新木場に移動しWAVEで2試合をおこなった。つまりこの日は、1日5試合の強行軍。さらに12日からは「よねやマニア」がスタート。少なくとも18日までは連日試合が組まれている。追加がなければ9日間で13試合。文字通り、引退までのラストスパートである。
     12・23後楽園でマットを去る米山に代わるように、この大会では次代を担う選手たちによる闘いがひとつの頂点を迎える。ブルースターカップの決勝戦がおこなわれるのである。12・11北千住大会終了時点で、優勝の可能性が残されているのは、masu-me、勝愛美、ラビット美兎の3人となった。勝はすでに決勝進出を決めており、残る枠はただひとつ。ラビットが8点でリーグ戦を追え、masu-meが6点であと1試合を残している。アイスリボンの長野ドラミにも望みがあったが、川佐ナナに敗れてmasu-meが生き残った。masu-meは12・16板橋で矢神知樹と最後のリーグ戦。ここで負ければラビットがそのまま決勝戦に進出し、masu-meが勝てばラビットとの決勝進出者決定戦にもつれ込む。ラビットが逃げ切り勝に飛びつくか、それともmasu-meがラビットに追いついて追い越すのか。ポスト米山の座をめぐる、新人王決定戦の行方も見逃せない。

    (新井 宏)

    2011.12.11 北千住シアター1010ミニシアター 獅子の穴 興行 

     今年の3・21板橋以来、「獅子の穴」が2回目の主催興行を開催した。「獅子の穴」とは、Leonを中心に、若手の底上げを目的とした活動体である。ユニットではないため、ふだんの大会では実態が見えにくいのだが、そこをカバーするためか、Leon、中森華子、大畠美咲の3人はラブドライトというチームでの活動をはじめている。この3人は若手の一歩先を行く存在だけに、「獅子の穴」におけるリーダー的役割を担うことになる。
    むしろ、本来の目的が目に見えたのは、試合前の光景だった。Leonをコーチに、新人とプロレス教室に通う生徒たちが、リング上で練習をおこなっていたのだ。開場前から見られた練習は、ファンが場内に入ってからもつづいていた。受身などの基本的動きはもちろん、しだいにいくつかのパートに分かれるようになっていく。Leonが直々に指導する傍らで、できる選手たちは自分たちのペースでバンプを取っていく。選手や生徒たちには日常的なものながら、こちらにはやたらと新鮮に映ったのもたしかである。
    メインに選ばれたのは、中森華子と浜田文子のシングルマッチだった。WAVEのリングにおける対戦要求から実現した、伊藤道場時代の師弟対決。中森はブラックダリアではなく素の浜田文子との対戦を望んだ。文子は中森の成長を確かめるため、望まれたとおりにイスや凶器を使わない浜田文子で中森の前に立っていた。あとの評価は、すべて中森の闘い方しだいである。
    中盤までは、中森が引いてしまうようなシーンも実際あった。何気ない一瞬の表情から、気後れしているのがわかってしまったのだ。それでも中森は、精一杯のファイトで文子に食らいついていった。中盤以降は、大善戦といっていいだろう。文子が試合後に認めたように、中森の成長具合はたしかに伝わったのだ。それでも、まだまだすべてを出し切ったとは言いがたい。まったくおなじ攻撃パターンを繰り返したのは反省材料だろう。そこを文子に見切られてしまったようでもある。フィニッシュはスピンキック。そのまえの雪崩式浜ちゃんカッターで事実上の勝負は決まっていた。が、スピンキックでのフォール負けは今後の中森を考えればマイナス点になりかねない。文子に肉薄するのなら、たとえ負けても極上のフィニッシュ技を出させるべきだった。
    米山香織の引退以降、中森にかかる期待はいやがうえにも高まるはず。それだけに、さらなる成長は必須条件。JWP入団の選択は間違いではなかった。だからこそ、獅子の穴をもっともっと有効利用して、トップを脅かす存在になってほしいと思う。

    (新井 宏)

    2011.11.13 東京キネマ倶楽部 総評 

     米山香織&ヘイリー・ヘイトレッド組がタッグのスペシャリスト、ハルクラを破り、タッグ3冠の統一に成功した。この結果により、ヘイリーはなんと6冠王に。タッグ3冠と、JWP無差別級王座を含めたシングル3冠。ダブルのトリプルクラウンチャンピオンは、全世界を見渡してもおそらくプロレス史上初の快挙だろう。
     気がついたら6本のベルトを巻いていた、というのがヘイリーの実感だ。この試合で勝てば6冠王との意識はほとんどなく、実際のところ前日まで知らなかった。その前日にはアイスリボンの道場マッチに初参戦、6人タッグマッチで大暴れし、志田光とは「シングルを近いうちに見てみたい」と思わせるド迫力のシーンを現出させた。その勢いでタッグタイトル戦線では苦汁を飲まされ続けてきたハルクラを撃破。この2人にはシングルでも勝っているし、ヘイリーにはもはや敵なしといった状況だ。
    そのヘイリーは、はやくも12・23後楽園におけるJWP無差別級王座の防衛戦を宣言した。そのまえにも同王座のタイトルマッチがおこなわれる可能性もあるが、ヘイリーは米山が引退するその場で防衛戦をおこなうつもりでいる。タッグ王座は米山の引退までキープし続け、シングルに関してはその後も防衛していくというのが、彼女の描く米山引退ロード&その後、である。
    「無差別のベルトがなくなってから引退を発表して、負けることも多くて、いまいち乗り切れてなかった部分もあるけど、ヘイリーとこうしてまたチャンピオンになったことで、米山革命を突き進んでいくぞっていうつもりになりました」とは、試合後の米山のコメント。正直、引退発表後の「米山革命最終章」は、停滞気味の印象しかない。なにをもって革命なのか、第1章が成果を上げていただけに、もどかしくて仕方がなかった。ヘイリー、木村響子という同志を得たものの、肝心の米山に覇気がいまひとつ感じられなかったのだ。
    そんな状況で獲得したタッグ3冠王の座。それだけに、米山革命には有終の美を飾ってもらいたい。「ただの引退ロードでは終わらせない」との言葉を実証するためにも、常識ではありえない、または未来に向けて影響を与えるような革新的な引退を期待してみたいのだ。
    しかしながら、この日の試合後、米山は揺れる心境を吐露した。引退まであと1カ月と少し。そろそろ引退試合の相手、カードを発表してもいい時期である。
    「個人の思いを優先するか、JWPの未来を優先するのか…引退試合の相手は、まだ決められません。どうしたらいいのか、わからないんです」
    最後の相手としてやりたい相手、やりたい試合が米山にはある。そのいっぽうで、話題をつくり集客を優先させたいカードもある。米山革命では、団体外にもベルトの存在を知らしめるため所属選手の挑戦を拒否し、団体内の意識改革を促進してみせた。現在も、当時からの思いに変化はない。米山革命の思想を継続してもらうため、米山革命に則ったカードをおこなうべきとの考えもある。と同時に、引退試合はレスラー生活最後の思い出。自分のわがままを通すことも、ここでは許される。かといってありふれた引退ロードは、ここまでの米山自身が否定してきたことだ。
    そしてここで問題なのが、2つの思いにある選手が別人であるという事実である。もしもおなじレスラーなら、悩む必要はどこにもない。それが誰であるのか米山は明かさないが、この話題となると勝者とは思えないほど表情が曇ってしまう。違うから、問題なのだ。
    果たして、米山が考える最後の相手、カードとはなんなのか。そして、最終的な結論はどちらにするのか。いずれにしても、最高のパートナーであるヘイリーは、米山の意思を尊重するとしているのだが…。

    (新井 宏)

    2011.10.2 新木場1stRING 総評 

     結成10周年を迎えようとする“ザ☆WANTED!?”が、12月の自主興行開催を9・23新宿でアナウンスした。森居知子がモーリーに改名したことからも、いいタイミングではなかろうか。
    ところがその後、結成から1年となる“獅子の穴”も自主興行の開催を発表した。なにかの間違いかと思ったが、ここから話はややこしくなる。どちらかが時期を間違えたわけではない。どちらも12月の開催をにらんで発表をおこなったのだ。
    しかしながら、同時期に2つの自主興行となるとJWP全体の興行予定にも影響を及ぼすだろう。とは言うものの、どちらもこの時期の開催を譲らない。そんなことから今回、勝ったほうが自主興行開催という特殊な条件のついた試合が組まれたのである。
    ザ☆WANTED!?が阿部幸江&KAZUKI&モーリーのフルメンバーを当ててきたのに対し、獅子の穴は不安だらけだった。主宰者のLeonはもちろん入っているが、大畠美咲の欠場により大畠推薦の勇気彩が助っ人としてやってきた。また、中森華子は「獅子の穴、つまんない!」とLeonに反旗を翻している。それだけに、結束力では当然、ザ☆WANTED!?が上回る。もうすでに結果は見えているのではないだろうか。そう考えざるを得ないメインイベントだった。
    ところが、ザ☆WANTED!?の計算どおりにはいかないのが、この試合だった。ザ☆WANTED!?は中森と勇気をおびき出し、ステージ上に用意したイスにロープでぐるぐる巻きに括りつけた。リング上はハンディキャップマッチ状態。ザ☆WANTED!?の自主興行開催が目のまえに見えていた。
    それでも、中森と勇気はロープを解いて脱出に成功。孤立無援だったLeonを救出し、ペースを獅子の穴に戻していく。そしてザ☆WANTED!?の用意したロープが勝利の行方を決めてしまう。花道からリングに戻ろうとするザ☆WANTED!?に対し、リング下から獅子の穴がロープを引いたのだ。これにより、ザ☆WANTED!?は転倒。ここからLeonが試合を決め、獅子の穴に勝利をもたらした。12月の自主興行は、獅子の穴が主役となるのだ。
    ところが、獅子の穴には現在、不協和音が流れている。中森の脱退を示唆する発言がきっかけだ。
     獅子の穴とは若い選手がともに練習して切磋琢磨していこうという集まりである。トレーニングありきのグループだけに、もしかしたらリング上では見えにくい部分もあるのかもしれない。そこに不満を漏らしたのが中森だった。中森は獅子の穴に加入以来、多くのチャンスを与えられている。以前の彼女にくらべれば格段の違いである。それでも、中森は与えられたチャンスをすべてものにしているわけではない。そこに苛立ちを感じていることもあるのだろう。だから主宰者のLeonに噛みついたのだ。練習してもリング上で披露して結果につながらなければ意味がない、ということか。
     Leonの要求から、自主興行の前に10月10日東京キネマ倶楽部でLeonと中森の“同門対決”が組まれることになった。しかしながら、試合当日には同門対決になっていない可能性もある。たとえ獅子の穴同士のシングルマッチになったとしても、そこには「切磋琢磨」という言葉は見いだせないのではないか。中森がユニットから脱退するのか、それともLeonが引き戻すのか。そういった意味も含めて、10月10日のシングルは“獅子の穴発表会”ではなくなった。やはりプロレスは闘いの場。お互いの主張をおもいっきりぶつけ合ってほしいと思う。

    (新井 宏)

    2011.9.23 新宿FACE 総評 

     もはや手をつけられない。そんな状況にまでなっているのではないか。ヘイリー・ヘイトレッドがますます強くなっているのである。
     ヘイリーの挑戦者は、倉垣翼だった。いまのヘイリーを止めるのにうってつけの相手と言っていいのだろう。実際、倉垣は4・3後楽園でのタッグ2冠戦で直接ピンフォールを奪っている。日本ではまだシングルで負けたことがないヘイリーにとって、倉垣は唯一かつ最高の脅威なのだ。
     無差別級王者になったことで、ヘイリーは加速度的に大きくなっている。この日の倉垣には、過去何年も見せなかったような爆発力があった。にもかかわらず、結果的にはベルトに届かなかった。ヘイリーのほうがより進化しているのだろう。ものすごい闘いを制したことで、無差別級王座の海外流出が決まってしまった。ヘイリーは間もなくアメリカに帰国。現地で防衛戦を実現させるつもりだという。
    「SHIMMER(シマー)やAIWでの防衛戦を考えています。ちゃんとJWPの許可をとってやりますよ。可能であれば、SHIMMERチャンピオンのマディソン・イーグルス(オーストラリア)と闘いたい」
     ヘイリーによれば、1カ月ほどでふたたび日本に戻ってくるつもりだという。それでも、ほんとうに帰ってくるかはそのときになってみなければわからない。日本が大好きな彼女だけに、ベルトを持ったままいなくなることは考えにくいが、もしもどこかでベルトを失えば、取り返しのつかないことになってしまう。無差別級王座がはじめて海を渡る。そこにはやはり、リスクが生じるのだ。
     それにしても、JWPからヘイリーを止める選手は現れるのか、疑問が残る。スピーディーな丸め込みで3カウントを取れる可能性のあった米山も、パワーで対抗できる倉垣もやられてしまった。ならば、いったい誰が太刀打ちできるのか。王者不在の間に、挑戦者決定トーナメントやリーグ戦をやればいいというものでもないだろう。あの強さを見せ付けられては、外国人政権は歓迎できる。それでもJWP所属選手が何か具体的な対策を考えなければ、いつまでたってもベルトは所属外に渡ったままだ。
     1年間継続した日本修行の成果が、日本の老舗団体で最高峰に位置する無差別級のベルトだった。日本の女子プロレス史上においても、ヘイリーは最強トップガイジンの座を狙える位置までやってきた。この日の観客のリアクションからも、外国人王者が日本人の心をつかみかけている。あの強さを見せられては、誰もが納得せざるを得ないだろう。

    (新井 宏)

    2011.9.11 東京キネマ倶楽部 総評 

    9・11キネマ倶楽部大会は、9・23新宿FACEへとつづく道でもある。
     第1試合では若手による6人タッグマッチがおこなわれ、勝愛美がラビット美兎にリバーススプラッシュでフォール勝ち、「ブルースターカップ」の優勝候補に躍り出た。「ブルースターカップ」とは、JWPを中心としたキャリア2年未満の選手によるシングルの総当りリーグ戦。9・23新宿で開幕するこのリーグ戦に出場するのは、勝愛美、masu-me、ラビット美兎、川佐ナナ、矢神知樹。さらには米山香織推薦でアイスリボンの長野ドラミ、Leon推薦でレイナに参戦しているメキシコ人のアフロディータがエントリーされ、総勢7名でナンバーワンを決める。イメージとしては、「2011新人王決定戦」。開幕の9・23新宿では、公式戦2試合が組まれる予定である。
     9・23新宿で5周年記念を迎える森居知子は、キネマで植松寿絵と一騎打ちをおこなった。ザ☆WANTED!?と植松輝の代理戦争かと思いきや、森居は植松を呼び捨てにしながらも感謝の意思表示を見せていた。ステップアップのための重大発表とは、9・23新宿からの新リングネーム使用。この発表をきっかけに、新宿でのカードが森居(現時点でのリングネーム)&植松組vs阿部幸江&KAZUKI組となった。改名するからといってザ☆WANTED!?を脱退するわけではなく、あくまでもさらなるステップアップを狙ってのこと。そのリングネームによってどんな未来像を描いているのかが見えてくるのかもしれない。果たして新リングネームは、ザ☆WANTED!?の行方にも影響を及ぼすのか、それともまったく関係がないのか。そのあたりも注目したい。
     ヘイリー・ヘイトレッドの保持するJWP認定無差別級王座への次期挑戦者を決める3WAYマッチは、裏夏女のコマンド・ボリショイでもなく、6人タッグで仙女の里村明衣子をフォールした春山香代子でもなく、夏女決定トーナメントを制した倉垣翼がそのまま挑戦権を勝ちとった。試合後、倉垣は「ヘイリーを倒したら海外で防衛戦をやってもいい」と発言した。タイトルマッチは、無差別級王座のほか、TLW世界女子、ハイブリッドファイティング王座もかかる3冠戦となる。TLWとハイブリッドの両王座がアメリカのタイトルだけに、ヘイリーに代わりアメリカで防衛戦をおこなうのもありえない話ではないだろう。
     メインでは、ヘイリー&米山組が中森華子&大畠美咲組の獅子の穴を退け、TLW世界女子タッグ王座を防衛した。試合後には次期挑戦者となった倉垣がヘイリーを挑発するも、王者はあえて深追いはせず、静かにその場から去っていった。これは、嵐の前の静けさと考えたほうがいい。ヘイリーと倉垣の体格からしても激闘は必至。ヘイリーが米山革命に共鳴しているだけに、米山の引退ロードにも影響を及ぼす大一番となりそうだ。
     さらに、この試合で敗れた獅子の穴にも9・23新宿ではリベンジの機会が待っている。Leon&中森&大畠組が仙女選抜選手と6人タッグで対戦するのだ。これは、仙女10・27後楽園で開催される団体対抗トーナメントの前哨戦でもある。現時点で仙女から誰が出てくるかわからないが、団体の看板を背負っての壮絶な闘いが繰り広げられるのは間違いない。こちらもひじょうに楽しみなカードである。

    (新井 宏)

    2011.8.14 東京キネマ倶楽部 総評  

     2011年の“夏女”に輝いたのは、倉垣翼だった。これといった優勝賞品等があるわけではないのだが、このトーナメントで勝ち抜けば、過去の例からしてもなにかリクエストできる権利はあるだろう。倉垣が狙っているのは当然、JWP認定無差別級王座である。このところずっとシングルのベルトから遠ざかっているだけに、ここは堂々と主張できる願ってもないシチュエーションだ。
     ところが、倉垣のアピールに待ったをかける選手が現れた。しかも2人。コマンド・ボリショイと春山香代子である。ボリショイはバトルロイヤルで王者・ヘイリーをオーバー・ザ・トップロープで下し優勝。春山は8・7後楽園における6人タッグで仙女の里村明衣子をピンフォールした実績を盾に挑戦権を主張した。「夏女決定トーナメント」が挑戦者決定戦と銘打っておらず、どの選手の主張にも一理あるだけに、ひとり選ぶには難しい状況となった。
     そこで王者のヘイリーは、次回大会(9・11キネマ)における次期挑戦者決定3WAYマッチを提案した。JWPではあまりない形式だが、「3人がいっぺんに闘って決めればいい」とは、いかにもアメリカ人レスラーらしい発想である。3人とも素直にこの条件に応じたが、当日までにどのような戦略を練り、リング上で実行に移すか。この試合で勝ち抜くための発想力が、次期挑戦者を決めるような気がする。
     発想といえば、敗れはしたものの決勝まで勝ち進んだ中森華子に可能性が垣間見れた。試合を勝ち抜くごとにコスチュームを替えてリングに上がったのだ。これはちょっとした新鮮な風景だった。プロレスラーである以上、観客を楽しませることは重要である。見た目を変え、相手によってスタイルも微妙に変えていたように感じられた。
    Leonが保持していた無差別級王座への挑戦、8・7後楽園での栗原あゆみ戦を経て、中森にはこれからもチャンスが与えられていくだろうし、そうでなければならない。結果こそ出ていないけれど、自己プロデュース力が高まれば、自然と結果もついてくるのではないか。“夏女”の称号は手にできなかった中森ながら、今後への期待をもたせてくれるトーナメントだった。 

    (新井 宏)

    2011.8.7 後楽園ホール 総評 

     今大会で2人の新人がデビューを飾った。川佐ナナとラビット美兎。ともに15歳であり、おなじ中学校に通っていた同級生なのだという。しかも、ラビットのほうは現在欠場中のムーン瑞月の実妹。この日、姉妹レスラーがJWPで誕生したことにもなるのだ。
     ラビットは姉を追うように、JWPのプロレス教室に川佐とともにやってきた。聞くところによると、「姉をボコボコにしたいから」レスラーになりたいのだという。いったいどんな姉妹なのかよくわからないが、JWPからすればレスラー志望者がやってくるのはうれしい限りだし、姉妹でトップレスラーめざして成長してくれれば将来を託せる可能性も出てくるわけだ。2人が友人となれば、それだけで競争意識が芽生え、切磋琢磨してくれるのではないか。そんな期待も抱かせてくれる。
     新たに女子プロレス界最小となったラビットは、ボリショイによればカラダに似合わず勝ち気な性格とのこと。カラダだけみればあまりの小ささにかえってインパクト絶大なのだが、入門のきっかけがきっかけだけに、気の強さも理解できるというもの。対照的に、川佐のほうはのんびり屋さんらしい。友人同士ながら体格も性格も正反対というのがおもしろい。ともに特徴を長所にして成長していってもらいたい。
     ボリショイは言う。「2人ともJWPを背負っていける選手になっていってほしいですね。なかにはデビューそのものが目標で、思い出作りのためにレスラーになるような人もいるけど、思い出作りでやめないで、団体の顔になってもらいたいと思います」
     masu-me、勝愛美、所属外ながら矢神知樹と、若い選手がぞくぞくと増えてきたJWP。米山香織は年内で引退してしまうけれど、来年に旗揚げ20周年を迎える女子プロレスの老舗にとっては、若い力が増えるのはうれしいニュース。とにかく試合数をこなさなければプロレスラーは成長しない。川佐とラビットには全大会の出場を望みたい。そして、ムーン瑞月との姉妹タッグも、いや、両者の関係からしていきなり姉妹“因縁”対決というのも、外野の声からすればおもしろいかもしれない。

    (新井 宏)

    2011.7.18 板橋グリーンホール 総評 

     8・7後楽園でのJWP無差別級王座を含む三冠戦が決まっている、ヘイリー・ヘイトレッドと米山香織が、今大会で最後の前哨戦をおこなった。王者のヘイリーはもちろん絶好調、挑戦者の米山もケガによるブランクをまったく感じさせず、上り調子と言っていい。とにかくこの2人の攻防はスリリングなことこのうえなかった。米山は年内での引退を発表したこともあり、自分の発言に責任を感じている。少なくともこの日のタッグマッチからは、衝撃の引退発表をポジティブに捕らえ、精神的にも乗ってきたことがうかがえる内容があった。
    「今日は、ヘイリーをおちょくってみたりしてみました。ヘイリーは直球勝負でくるけど、私は変化球もあるんだよってところを見せたかったので。引退する選手なんかに負けないとヘイリーは思ってるでしょうけど、引退を発表したからこそ失速するんじゃなくて、ゴールがあるからこそそこに向けてラストスパートがかけられると思ってます。ベルトを獲って米山革命第2章をはじめなければ、引退できないんですよ。米山革命第2章なしに、引退ロードはスタートしないんです。(引退は)自分のなかではずっと考えていたわけで、表に出したことはありませんでした。でもこうして発表したことで、なぜこの時期に?とか、批判されることもあります。でも、米山って引退するんだ、だけで終わるんじゃなく、テメエなに考えてるんだよ?っていろんな反応出てきたのは、つらい気持ちもあるけど、喜ぶべきことでもあるのかなって思ってます。とにかく、ヘイリーには絶対勝って、ベルトを取り戻さなきゃいけないんです!」
     米山が負ければ米山は引退撤回? そう考える向きもあるだろう。しかし、王座奪回に失敗したからといって、引退を撤回するとも思えない。残りの5ヵ月が単なる引退ロードになるだけだ。だったら、米山がチャンピオンとなり、どんな革命を起こすのか見守りながら最後の日を迎えるほうがいいに決まっている。米山はラストランで、JWP、女子プロレス界に何かを残そうと考えている。米山革命第2章が、他団体を巻き込み団体内の活性化を促した第1章の継続なのか、それとも新しい方法論で改革を起こしていくのか。そちらを考えるほうがより楽しみというものだ。 
    引退発表効果もあり、8・7後楽園は、おそらく米山への応援一色に染まるだろ。だからこそ、ヘイリーにも意地の勝負を期待したい。史上初の外国人無差別級王者が防衛なしで王座を明け渡すのはあまりにももったいない。最近の充実振りからしても、そう思う。
    いずれにしても、8・7後楽園のメインは非常に重要な意味を持つ。ヘイリーか、米山か。運命のゴングまで、あとわずか――。

    (新井 宏)

    2011.7.10 東京キネマ倶楽部 総評 

     負傷欠場から6・26大阪で復帰した米山香織が突然の引退発表。リング上から今年12月での引退をアナウンスした。以下は、バックステージでの引退のコメントである。
    「引退ってのは突然考えたわけではなくて、私はもともと体も小さいし、いつかどこかでゴールを決めて、それに向かって全力で自分のスタイルをリングの上で表現するっていうことを考えていて。で、最初に考えたのが(デビュー)10周年、節目の年だったんですけど、やっぱり、無差別のベルトがまだ獲れなくて。やっぱりこのベルトを目標にやって、去年の夏にベルトを獲って、今年の4月にベルトを落として。で、そのあとにあごの骨を折ってしまって3ヵ月間欠場。その欠場の期間にも考えて。今後将来、大きなケガをしたらってことも考えて、欠場中に、ハイ、(引退を)決めました。米山革命も途中で終わってしまって、残された時間の中で米山革命をつづけたいし、私の思想をJWPに残していきたいので、後楽園ではヘイリーに勝って、米山革命を引退までつづけたいと思います。(革命の)継続と、あと新しい別のことも、ハイ。自分がリングの上で自分のスタイル全開でできるときにっていうのと、もとからいつかゴールを決めてそれに向かって全力でやろうということは考えていたことなので、それがいまなんじゃないかなと思って、(引退を)決めました」
     無差別級王座奪回をもくろみ、8・7後楽園での挑戦が決まっていただけに、寝耳に水の引退発表だった。「米山革命に関する重大発表がある」ということは聞いていたのだが、まさかリングを下りるとは…。現時点では多くを語らなかった米山。時間がたつに連れて、彼女のさまざまな思いが表に見えてくるのだろう。
     とはいえ、ヘイリーからベルトを奪回しなければ、引退ロードも米山の考えとは別のものになってしまいかねない。あくまでも米山は、米山革命の継続と拡大を同時進行しながら最後になにかを残そうとしている。そのためにも、なにがなんでもヘイリーを倒さなければ。しかしながら、この日のヘイリーを見る限り、その牙城はとてつもなく高くなった。果たして、米山は米山革命第2章をスタートさせることができるのか。その答えは、8・7後楽園で明らかになる。

    (新井 宏)

    2011.6.26 IMPホール 総評 

     約2ヵ月にわたり開催された「J-1グランプリ2011~JWPno.1トーナメント」が、6・26大阪大会で決着をみた。決勝のリングに上がったのは、倉垣翼、春山香代子、阿部幸江の純血メンバーを次々と下して勝ち上がってきたヘイリー・ヘイトレッドと、Ray、DASH・チサコ、中森華子との公式戦すべてにタイトルをかけてきたLeonだった。Leonは無差別級王座奪取時の公約として、米山革命を引き継ぐ革命を推進中。そのため決勝戦でも無差別級王座をかけることになったのだが、対するヘイリーも対抗し、保持する2本のベルトをかけてきた。ヘイリーは過去、米山香織への無差別級戦を3冠戦にしたものの決着つかずに両者防衛となっている。そのときの反省も踏まえての3冠宣言。こんどこその気持ちが、以前にも増して大きかったのだろう。
     ヘイリーにとっては、来日以来最大のチャンスだった。過去の来日では単発だったためどうしてもインパクトを残せずにいたヘイリーだが、今度の滞在は日本在住型である。もともと日本のプロレスが好きでプロレスラーになったヘイリーは、この国に腰を落ち着けることで日本スタイルを忘れることなく吸収していった。そして迎えたLeonとの決勝戦。革命の本格的幕開けを切り崩してみせたのが、ヘイリーだったのだ。
     この日の結果により、ヘイリーが外国人レスラーとしてはじめてJWP認定無差別級王座のベルトを巻くことになった。あのアメージング・コング(カルマ=現WWE)さえも達成できなかった快挙を、アメリカのどインディー出身のヘイリーがやってのけたのだ。
     そして試合後、ヘイリーに挑戦を迫るレスラーが現れた。欠場から復帰したばかりの米山である。
     前述したように、米山は無差別級王者時代にヘイリーと3冠をかけて闘っている。その試合以来、両者には友情が芽生えタッグを組むようになったのだが、米山の挑戦表明により、タッグは一時凍結となる模様。米山からの挑戦を受諾したことで、ヘイリーの希望通り、8・7後楽園でのタイトルマッチが6月30日に決定、発表された。しかも、米山とヘイリーのベルトをともにかける3冠選手権試合。どちらも今度こそ決着をつける覚悟でいるだろう。
     JWPの後楽園大会における日本人vs外国人の無差別級戦は、日向あずみvsアメージング・コング以来。その試合を客席から見ていたのが、当時中学2年生の勝愛美だった。ヘイリーvs米山にも、ファンに夢を与えるような激闘を期待したい。
     さて、決勝で敗れ無冠となったLeonは、ここからが革命本番というところでの王座転落。トーナメント全試合でタイトルを防衛し、ここから外に向けて発信しようとしていたところだっただけに、悔しさは計り知れない。しかも、次期挑戦者がLeonがベルトを引っぺがした米山である。しばらくは、米山とヘイリーがタイトル戦に向けて駆け引きを展開していくだろう。その中に割り込むくらいの気持ちがLeonにはほしい。このまま引き下がっては、革命宣言はなんだったのかということになってくる。周囲や外部を動かしてこそ、革命。Leonにも目が向けられるよう、何らかの仕掛けが必要だ。

    (新井 宏)